プラチナ・ゴールドスプレッドの動き
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、昨年からのゴールドとプラチナのスプレッドの動きとその背景を解説しています。
昨 年、正確に言うと2011年9月から2012年終わりまでずっとゴールドの方がプラチナよりも高い(プレミアム)の状態が続きましたが、2013年に 入ってからそれが逆転しています。僕は昨年、いろいろなセミナー等で、プラチナがゴールドよりも安いのはおかしいと散々言ってきました。僕の論理は本当に 単純なものです。
- 希少価値が違いすぎること。ゴールドの年間鉱山生産量は2800トンに対して、プラチナは200トンでわずか14分の1に過ぎない。
- プラチナの方がより、必要とされているメタルであること。プラチナの用途の7割が産業用需要で、プラチナがなくては困る需要。それに大してゴールドの需要の7割は逆に宝飾や投資用の需要であり、不要不急のものである。つまりなくても困らない需要。
以上の二点だけから考えても、ゴールドがプラチナよりも高い状態は納得がいきません。昨年僕が言ってのは、ゴールドを買うならプラチナでしょう、ということでした。単純に上記理由によりプラチナの割安感が大きかったからです。
そ れではなぜ、そんな「不条理」な状態になっていたのでしょうか。まず最初に断っておかなければならないことは、「ゴールドとプラチナの価格の関係に理論値 はない」ということです。だから全く関係なく動く二つの別物の価格だということをまず意識した上での話しです。 昨年ゴールドがプラチナよりも高い価格で取引されていた端的な理由は、ゴールドが買われて、プラチナが買われなかったということです。
- サブプライムからリーマンショックそしてユーロ危機と世界経済不安の中、発行体のリスクのないゴールドが投資対象として注目を浴びた。
- 経済危機脱出のため、世界各国は金融緩和へ動き、じゃぶじゃぶになったマネーは本来の目的である企業の設備投資や家計の消費に向かわずにゴールドに向かった。
- 2003年からGold ETFができて、大量の新規ゴールド投資の受け皿となった。
- プラチナの用途の7割が産業用であるため、世界経済不安の不景気の中での需要の減退。特にプラチナがメインに使われるディーゼル車の中心のマーケットである欧州危機が大きく響いた。
- マーケット規模がゴールドよりも小さいために、ファンドのマネーがゴールドほどは入ってきにくい。
- 南アのストライキ懸念 - AMCU(Association of Mineworkers and Construction)は賃金二倍を要求。NUM(National Union of Mineworkes)は60%あげを要求。
- 需給予想は若干の供給不足を予想。
- スクラップの減少。自動車触媒-9%、宝飾-19%.と落ち込んでいる。
- 南アコストの上昇。電気値上げ
- 南アでの新しいPt ETF New Waveが550,000toz(約17トン)の残高となりPt ETF全体でも24%を超える残高となっている。
- 南アプラチナ採掘コスト割れの懸念。(1400ドルライン)
・ゴールドの上昇の最大のエンジンであったQEの終了が検討されるようになり、過去10年にわたってゴールドの入ってきていた投資資金がゴールドから株式市場への流れが出来上がっている。
・昨年後半からGold ETFの売りがかさむ。2600トンあった残高が2000トンを割れるまで急減、その売りは6 00トンを越えた。
・コメックスの投資家ポジションは一時グロスショートが400トンを越えて史上最大のポジションにまで膨らんだ。
・南アプラチナ採掘コスト割れの懸念。(1400ドルライン)
以 上の現状のために現在プラチナは160ドルから180ドルのプレミアムに戻っている。原状のQE終了の動きによるゴールドの頭の重さとを考えると今後のス プレッドは拡大方向に動く可能性がまだ高いと思います。冒頭に書いた僕の「感覚」がとりあえず外れていなかったと思います。プラチナがゴールドよりも 安いときは迷わずゴールドよりもプラチナを買いましょう。
以上