金市場ニュース

ニューヨーク連銀に保管されたゴールド

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、ニューヨーク連銀でドイツ中央銀行を含む各国中央銀行が保管している金がどのように保管されているのかを紹介しています。

今週はニューヨーク連銀に保管されているゴールドについて、FRBのサイトに詳しい説明があったのでそれを紹介しましょう。結構知らないことが多くて新鮮な驚きがありました。この連銀の倉庫の無料ツアーというのもあるようです。NYに行く機会があればぜひ参加したいとおもいました。

「ゴールドの保管業務」

NY連銀(Federal Reserve Bank of New York)では世界中の中央銀行や政府、そして公的国際機関からゴールドを預かっています。その金庫はマンハッタンの本店の地下にあります。1920年代前半にこのビルが建てられたときに一緒に作られ、口座保有者にゴールドを安全に保管できる場所を提供しています。

ここに保管されているゴールドはすべてNY連銀やFRBのものではなく、ここに口座を保有している人々からのゴールドを預かっているだけです。ここにゴールドを預けているのは、アメリカ政府、外国の政府、その他各国中央銀行そして公的国際機関などえ、個人や私企業はここにゴールドを預けることはできません。

  

 

ここに積み上げられているほとんどのゴールドが第二次世界大戦後にここに持ち込まれたものです。多くの国が「安全な場所」にそのゴールドを保管したかったのですね。この場所での保管は1973年にそのピークを迎えました。米国が外国政府のためにその米ドルとゴールドとの交換を中止した直後のことです。このピーク時には12,000トンのゴールドがここに保管されていました。しかしそれ以来、ゴールドの預け入れも引き出しもあまり行われなくなり、ゆっくりと徐々に預かっているゴールドの量は減少していきました。

「ゴールドの保管」

 

2012年には預かっているゴールドの残高は約53万本あり、重量の総計は約6,700トンあります。この重さに倉庫が耐えうるのは、マンハッタン島の地下24m、海面下15m の固い岩床の上に立てられているからです。

ゴールドのバーは地上からエレベーターで地下の倉庫まで運ばれ、そこからは特別な管理チームに任されます。3人のスタッフで成り立っており、2人はNY連銀の倉庫担当者で、1人はNY連銀の内部監査の人間です。この3人はゴールドが動かされるときや倉庫の鍵がはずされるときには必ず揃って立ち会う規則になっています。この仕組みは保管の健全性と最大の安全性を保証しています。

持ち込まれたすべてのバーは最大の注意を持って計量され、バーのブランドと品位の表示が預ける側との申告と正確に一致することを確かめてNY連銀に記録されます。この過程は、ゴールドを返すときに全く同じものを返却するためには欠かせないプロセスなのです。

確認が終わると122ある部屋の一つに運ばれます。この部屋は一つにつき1人のオーナーが対応しており、他人のゴールドが混じることは決してありません。ごくまれに「ライブラリー」と呼ばれるいくつかの口座保持者によって共有される部屋の棚に番号をつけてわけられたスペースに分けられて保管される場合がありますが、その場合もそれぞれの棚には2つの鍵と監査人のサインにより封がされています。各部屋は番号によって管理され、所有者情報を管理するために一切名前は使いません。

NY連銀は入出庫の手数料や所有権移転のためのゴールドの移動に関しては料金を課しますが、ゴールドの保管に関してはそれ以外の料金を課していません。

「ゴールドバー」

ゴールドバーはおおむね均一ですが、小さな違いによってどこでいつごろつかられたかというのが分かります。 

1986年以前に米国で作られたゴールドバーは四角い長方形のブロックでした。しかし現在では昔から国際社会でメインであった台形になりました。1986年以前の形が変わる前の米国で精錬されたゴールドバーはその形によってどこの精錬所で精錬されたものかわかります。たとえばDenverの精錬所のゴールドの形は側面を丸くしてあり、サンフランシスコの精錬所では四方の角をまるくしています。一方ニューヨークで作られたものは四方が直線で角張っています。バーの上の刻印はまたいろいろな情報をもたらせてくれます。バーナンバーはどの溶解炉からできたのかを示してくれます。他の刻印はゴールドの純度を示し、その精錬所の刻印はどこでゴールドが精錬されたかを示します。

ゴールドのバーは100%の純度はありません。もし100%のバーを作ったとするならば、あまりにやわらかすぎてその形を保持できないのです。そうなると保存したり動かすことが非常に大変になります。そのためすべてのバーは、銅やシルバーやプラチナのようなほかの金属は最低でも一つ少量含みます。バーの色合いによって合金に入っているほかのメタルがわかります。たとえばシルバーやプラチナが入っている場合は少し白っぽい色が出て、銅が入っていると少し赤味がかり、鉄が入ると緑っぽくなります。

ゴールドバーの市場価値はその重さ、ゴールドの純度、そしてそのときのゴールドの市場価格で決まります。しかしNY連銀はそのゴールドの価値を、日々動いているゴールドの価格ではなく、米国の公式なゴールドの簿価である1オンス42.2222ドルを使っています。

「安全対策」

金庫は何重もの安全対策が施されています。その代表的なのが90トンの鉄制のシリンダーです。これが金庫への唯一の入り口を守っています。2m74cmもあるこのシリンダーは140トンもの重さがある鉄とコンクリートのフレームの中にあり、これが閉じられると空気や水も通さないシールとなります。一度閉まると4つの鉄の棒が穴に差し込まれ、時間制の鍵が働き、次の営業日まで鍵がかかったままとなります。

倉庫を取り囲むコンクリート壁の上では24時間の監視カメラが働き、また倉庫が閉じたあとには人の動きを感知するモーションセンサーも動きだします。その上に倉庫管理グループの絶え間ざる監視活動もあります。

NY連銀ツアー

毎年数万人に及ぶ人々が世界中から無料でNY連銀ツアーに参加しています。このツアーに目的はFRBの働きとFederal Reserve System の仕組みを理解してもらうためのものです。その予約はインターネットですることができます。

 

以上

 

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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