ニュースレター(9月4日)1118.25ドル 中国懸念で上げ、ECBインフレ予想で下げ、米雇用統計で更に下げる
先週と今週は日本出張中であるため、先週のニュースレターが遅れましたが、先週一週間の金市場の簡単なまとめをお届けします。
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA金価格のPM価格は、トロイオンスあたり1118.25ドルと、前週同価格から1.4%下落していしました。
英国が祝日の先週月曜日は、原油の上げに引き上げられた金相場でしたが、火曜日は、中国の製造業PMIが経済の拡大と縮小の節目となる50を下回ったことから、中国経済への懸念が高まり、上海と日本に続き、欧米株価が下げる中、上昇することとなりました。
水曜日発表された、米ADP全国雇用者数は、19万人と予想の20.1万人を下回り、金相場は上昇しました。
木曜日は、ECBが今後のインフレ率見通しを下げたことから、ドルが対ユーロ強含み、ドル建てで1122ドルと、過去一週間で最低の水準まで下げることとなりました。
それに対しユーロ建ては、トロイオンスあたり10ユーロほど上昇することとなりました。
金曜日発表の米国非農業者部門雇用者数は、173,000人と予想の22万人を下回り、前回の215,000人も下回りました。しかし、6月と7月の数値が共に245,000人に、1万4千人と3万人上方修正されました。
また、失業率は5.1%と前回の5.3%と予想の5.2%も下回ったことから、発表直後は上昇した金相場も、その後下げ幅を広げることとなりました。
ちなみに、同日の米雇用データが発表されるまでに、9月の利上げ予想が、既に26%から34%へと上昇していました。
その他の市場のニュース
- 金相場は先週ドル建てで下げていましたが、中国経済の懸念が広がる中、工業用需要が高い銀が下げているのに対し、安全資産としての金への堅固な需要もあり、金と銀のレシオは20年来の水準へと上昇していました。
ブリオンボールトニュース
先週火曜日にブリオンボールトの金投資家インデックスの8月数値が発表されています。詳細は別途まとめますが、先月中国株式が15%下げ、欧米の株式も10%下げる中、金相場は数年来の低水準からドル建てで3.3%、ユーロ建てで2.1%、ポンド建てで5.3%上昇したことからも、売却が進み、前月の54.5%から52.8%まで下げています。
しかし、中国のブラックマンデー後の株式市場の混乱から、ブリオンボールトの金市場での新たな金購入の資金は、前年同月比45%増と急増しました。
ロンドン便り
今週は日本に出張中ですが、英国を含む欧州を揺るがした一つの写真についてお伝えしましょう。
それは、トルコの海岸に打ち上げられたクルド人のシリア難民アラン・クルディ君(3歳)の遺体の写真でした。
欧州では、この夏シリアなどの紛争地域からの難民が急増し、英国を含む欧州の国々がその対処に頭を痛めています。これら多くの難民は、地中海を船で渡ろうとして遭難したり、悪質な密航業者のあっせんで、すし詰め状態の船倉やトラックの荷台に押し込められ、窒息死したりするケースはあとを絶たず、今年はこれまでに死者が2700人に達していて、去年を上回るペースで増え続けています。
英国は、経済の豊かさから、このような難民や移民がユーロトンネルを徒歩で渡って入国しようとしたり、カレー港から英国へ渡るトラックの荷台に力尽くで入ろうとするなどの問題が頻発していました。しかし、難民が7月と8月で10万人を超えていたギリシャなどとは異なり、この問題を早急に解決しなければならないといった切迫したものはなかったように思います。
それは、難民を受け入れることで経済的な負担が多くなること、そしてヨーロッパ各国の足並みが揃っていなかったためでもありますが、トルコ海岸で遺体で発見されたアラン君の写真は、その流れを変えたようです。
これまで難民の受け入れに否定的な考えを示してきた英国のキャメロン首相は、この写真が発表された後に「1人の父親として深く心が動かされました」と方針を転換し、本日2万人の受け入れ枠拡大を表明しています。
難民がただ欧州諸国のお荷物となる人々では無く、運悪く紛争地域に生まれてきてしまった私達と同じ1人の人間であることをもう一度思い出させてくれたこの写真の力に感嘆し、これをきっかけに何らかの措置が講じられるようになることを心から望んでやみません。