ニュースレター(9月2日)1324.70ドル 予想を下回る米雇用統計で利上げ観測が後退し金価格上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1324.70ドルと前週同価格から0.4%上げています。
週明け月曜日は、ロンドンが祝日の中、前週金曜日のイエレンFRB議長とフィッシャーFRB副議長の近い将来の利上げを示唆する発言後の大きな下げを多少取り戻し、上昇することとなりました。
火曜日金相場は、今週金曜日の米雇用統計を待つ中前日の上げ幅を失いながらもロンドン時間は狭いレンジでの取引となっていましたが、フィッシャーFRB副議長のブルームバーグTVのインタビューで、これまで通りFEDの利上げは経済指標次第としながらも、雇用はほぼ完全雇用に近い水準であるとし、GDPの成長も技術革新等からも何れ成長を始めると答えたこと等からドルが強含み、金は押し下げられることとなりました。
水曜日金相場は、今週金曜日の米雇用統計の先行指標と見られているADP全国雇用者数が予想の17.5万人を上回る17.7万人であることが発表され、トロイオンスあたり1304ドルと2ヶ月ぶりの低さへ一時下げることとなりました。
これより、8月は今年2度めの月間では下げたこととなり、7月末の終値からは2.1%下げたこととなります。しかし、2015年末からは23%の上げとなりました。
木曜日金相場は、ロンドン午後に発表された米ISM製造業景況指数が、景気の後退を示す50を割る49.2と予想の52.0と前回の52.6を下回ったこ とから、FRBの利上げ観測が後退しドルが弱含み、前日の水準からトロイオンスあたり10ドルほど上昇して終えることとなりました。
本日金曜日は、市場注目の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数が15.1万人と予想の18万人、前回の25.5万人を下回りました。また、前回の数値は27.5万人と上方修正されています。なお、失業率は4.9%と前回と変わりませんでした。
これを受けて金相場はトロイオンスあたり1323ドルへと大きく上げ、ドルインデックスは95.5と下げ、FedWatchの9月利上げ予想は、前日の24%から18%へと下げることとなりました。
その後ロンドン時間午後5時の段階では、金相場は上げ幅を多少削り1318ドルを推移しています。
その他の市場のニュース
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今週水曜日に金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアが、その残高を12トン減らし、943トンと2ヶ月ぶりの低い水準となったこと。
ブリオンボールトニュース
週明け月曜日に、金相場が多少ながら前週金曜日の下げを戻したことをまとめた、米主要経済サイトのMarketWatchの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられてました。
ここで、エィドリアンは、「8月貴金属市場は通常通り薄商いで狭いレンジでの取引であったが、今週から市場参加者が夏休みを終えて戻ってくることから、このような市場は終わるであろう」と述べています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(8月29日~9月2日) -
ブリオンボールトインフォグラフィックス:銀の驚くべき21種類の用途
ロンドン便り
今週の英国からのニュースとしては、英国の主要産業である金融業界で働くためには、茶色の靴を履いて面接に行くと職を得られないというニュースが伝えられていたことを紹介しましょう。
これは、Social Mobility Commission(政府が主導している英国内の社会移動を進める委員会)のリサーチによると、投資銀行等の金融機関は、トップ大学を卒業した銀行の行風に適する人しか雇用しないことが明らかになったとというニュースです。そのために、スーツに茶色の靴を履くような私立の学校を出ていない学生が、金融業界の職を得るのが難しいとしています。
英国経済の中の金融業界は、英国GDPの12%を創出する英国の代表的な産業であり、この業界に従事する人は2012年から13年に219万人と、英国人口の約3.4%ほどとなっています。
そして、2015年の金融業界に勤める取締役や部長級の平均的な年収は年間77,387ポンド(約1073万円)と、大企業のCEOやパイロットに次ぎ、弁護士や医師を上回る収入を得ている等、金融業界で働く人々の収入の高さもまた一般的に知られています。
このようなことからも、就職先として金融業界を目指す人々は多く、金融業界そしてこの業界が集まるロンドン金融街(City)には、スーツに茶色い靴を履くような人(私立の学校を出ていない学生)が雇ってもらえないなど、社会移動(Social Mobility)が進んでいないことがニュース性を持つこととなります。
このニュースに対し、金融街向け主要経済新聞のCityAMでは、金融街で勤めている私立の学校出身の人々の割合は37%と、実際には医者(51%)やジャーナリスト(57%)よりも少ないと反論していますが、私立の学校出身の人々の割合は16歳以上で英国全体の18%であることからも、その割合は未だ高いことは確かのようです。
社会移動を進める委員会が設置されていること、そしてこの委員会が満足できない現状を伝えていることは、この現状を改善するステップではあるはずですが、その道程はまだ長いものではあるようです。