ニュースレター(9月11日)1101.25ドル FOMCを翌週に控え、利上げ観測が金相場を押し下げる
今週も日本からニュースレターをお届けします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は、トロイオンスあたり1101.25ドルと、前週同価格から1.5%下げています。
週明け月曜日は、米国がレイバーデーで祝日の中、狭いレンジ取引となりました。
翌火曜日金相場は、中国の貿易黒字が予想を上回ったものの、輸出と輸入は共に下げ、中国経済への懸念が広がったことから、上海株は下げたものの、市場終了間際に上昇し、欧米株も上昇することとなりました。
これは、中国政府の景気対策期待からの上げであった模様ですが、これによりリスクオンのムードが広がり、銅の相場が上げる中、金も一時原油や他のコモディティ同様に引き上げられた後に、確定売りで下げることとなりました。
ちなみに、同日銀相場は、過去2週間で最も高い水準へ上昇しました。
水 曜日は前日の欧米市場の流れを受け継ぎ、日経平均株価が21年7ヶ月ぶりの大幅な上げとなりました。その後ロンドン時間昼過ぎに発表された米労働省の7月 の雇用動態調査(JOLTS)が記録を始めた2000年12月以来の最高の水準となったことから、来週のFOMCでの利上げ観測が広がり、金相場はトロイ オンスあたり20ドルを越え大きく下げることとなりました。
木曜日は、同日アジアと欧州株が下げる中、前日の下落の反発からも上昇することとなりました。また、同日発表された米輸入物価指数が前月比-1.8%、前年比-11.4%と2009年9月以来の大幅なものとなったことも、FOMCの利上げ観測を多少後退させた模様です。
金 曜日は、同日発表の中国の新規融資が、先月の記録的な高水準から大きく下げ、中国経済への懸念を高めることとなりました。また、金相場が上昇基調であった 際に無くなって いた金鉱会社のヘッジ(金を借りて現在の価格売ることで、更なる金相場の下げに備える方法)が50トンほど増えていることも伝えられ、今週の再低値のトロ イオンスあたり1099ドルまで下げた金相場は、多少反発して一週間を終えることとなりました。
その他の市場のニュース
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中国の人民銀行が8月に、金準備を16トン積み増して、1693トンとなったことが伝えられとこと。 -
インド政府が、インドの膨大な経常赤字を是正するために、金輸入量を減少させる目的で導入する金のマネタイゼーションとその債券スキームを今週ローンチしたこと。これによると、個人が年間で購入できる金の上限は500グラムで、その償還期間は5-7年間とのこと。 -
Intercontinental Exchange, Inc.(ICE)のシンガポールで現物の引き渡しが受けられる金のキロバーの先物のコントラクトが、当初の予定から遅れたものの、11月17日にローンチすることが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
来週の「FOMCで金利引き上げが行われるのかに市場の関心が集まる中、金相場に堅固なものが見られない」という米国経済サイト「Market Watch」の記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エイドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここでエィドリアンは、「先月のリスクオフ時に他の工業用のコモディティのように下げなかった金は、昨日のリスクオンの波には乗りきれなかった。」とコメントしています。
ロンドン便り
今週も日本へ出張中ですが、先週に続き、欧州の難民問題に関連した話題をお届けします。
先 週は、デビット・キャメロン英首相が、トルコの海岸に打ち上げられたシリア難民アラン・クルディ君の遺体の写真に心を動かされ、2万人の難民受入を発表しました が、ドイツのメルケル首相は、人道主義の立場を取って国内の反移民論に立ち向かい、今年最大80万人の難民申請者を受け入れると発表しています。
既に先週末だけで2万人を超える難民がドイツに入国したとのこと。英国主要メディアは、ドイツに到着する難民に食料を手渡す市民や、拍手で迎える映像と共にドイツの英断を伝えていました。
ハンガリーなどの旧東ヨーロッパの国々が難民受入に難色を示す中、ドイツの水準ではないものの難民受入を発表した英国やフランス等の国々、そして人道的立場に優先順位を置いたドイツの難民問題への対応の違いがより一層明確となりました。
そ のような中、ハンガリーの極右政党に近いインターネット放送の女性テレビ・カメラマンが、国境を越えてきた少女や親子を蹴っている映像が今週ニュースで伝 えられ、非難を浴びていました。この女性カメラマンは、所属放送局に解雇されたとのことですが、映像で届けられるドイツの人々とハンガリーの人々の難民へ の態度の違いには驚くものがあります。
経済力の差、ここに至るまでの歴史、そして教育や宗教なども関わってきているのでしょうが、欧州がこの問題に目をつむること無く、少なくとも動き始めたと信じたいです。