ニュースレター(7月7日)1215.65ドル:金融政策引き締め観測が広がる中良好な米雇用統計で4ヶ月ぶりの低水準へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1215.65ドルと前週同価格から2.1% 下落していました。
週明け月曜日金相場は、5月11日以来の低い水準のトロイオンスあたり1219ドルへと下げることとなりました。
これは、同日発表されたISM製造業景況指数が予想を上回り、ドルが2週間ぶりの高さへ強含むことで金が押し下げられたことからでした。また、前週来のFOMCメンバーのタカ派的スタンスなどからも、良好な経済指標数値に敏感に反応したことからでした。
火曜日は米国の独立記念日で祝日の中、この日に合わせるように北朝鮮が「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射」を行い市場が動くこととなりました。
金相場はこのニュースとともにトロイオンスあたり5ドル(0.3%)、前日の2ヶ月ぶりの低値(1.9%の下げ)から上昇しました。また同時に、週末の都議会選挙結果を受けて前日0.9%下げていた日本円も安全資産として0.2%上昇しました。しかし、その後金相場は米市場が休場であることからも狭いレンジでの取引となりました。
水曜日金相場は、同日発表された6月14日・15日に開催されたFOMC議事録を待つ中、前日の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル発射実験後の安全資産需要の上げ幅を失っていました。その後発表された議事録では、資産縮小のタイミングのメンバー内の意見が異なっていたことが明らかとなり上昇することとなりました。
木曜日は同日発表のADP全国雇用者数が15.8万人と予想の18.5万人を下回り、米国株価が下げる中、金相場も下落することとなりました。
また、同日実施されたフランス国債の入札で30年物の需要後退が明らかとなったこと、そして、同日発表の6月のECB政策理事会の議事要旨で、「状況によりさらに緩和策を拡大する」という政策方針を止めることを合意したものの市場の反応を考慮して発表をしなかったことが明らかとなったことからも、国債利回りを押し上げ金相場を下げる要因となりました。
金曜日は、日本時間8時分頃にコメックスでの15000枚の大口取引が要因で銀価格が16.11ドルから15.02ドルに急落 しました。これは、先週月曜日の金相場の急落時のように誤操作であった模様です。
そのため、同日金相場はこのタイミングで下落し、その後米雇用統計が発表され、その数値が良好であったことからFRBの金融政策引締め観測がさらに広がり、4ヶ月ぶりの低値へと下落することとなりました。
同日の米雇用統計の詳細は、非農業部門雇用者数が 22.2万人と予想17.9万人と前回の13.8万人を大きく上回り、前回数値も15.2万人へと上方修正されていました。しかし、6月失業率は、4.4%と予想の4.3%と前回の4.3%を上回っていましたが、良好な数字が注目され、既に金融政策引き締め観測が前週より広まりつつあったことからも、売りがさらなる売りを誘い、大きく下げることとなりました。
その他の市場のニュース
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先週末に発表されたコメックス金先物オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、誤操作の疑いで金相場が急落した翌日に27%減少し、3週間連続の下げとなっていたこと。 -
コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションもまた先週火曜日に53%減少し、3週間連続で減少していたこと。そのネットポジションはトロイオンスあたり13.88ドルと2010年10月以来の低値を付けていた昨年1月12日以来の低い水準。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアはその残高を今週 17.2トン減らし、835トンと4月半ばの低い水準へと下げていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週はブリオンボールトが毎月まとめている、個人投資家の金投資へのセンチメントを表す金投資家インデックスが発表されたことから、次のように主要メディアで取り上げられました。
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英国主要経済紙CityAM「投資家が金保有を3ヶ月連続で減らし、金のセンチメントが6月に下がる」
この記事では、先月の金投資家インデックスが下落し、顧客が保有する金の総量も3ヶ月連続で減少していることを伝えていました。
そして、弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュの株価が史上最高値を付けていたこと、また方向性の無い値動きが個人投資家の金への興味を失わさせたというコメントも紹介していました。
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ファイナンシャル・タイムズ「強気な投資家によって金が売られる」
ここで、先月ブリオンボールトの顧客が3ヶ月連続で保有金資産を減少させていたこと、そして購入者数が前月比8.4%減少していたことを金相場の下落の背景として紹介していました。
そして、CNBCのマネーコントロールという経済番組で、弊社リサーチ・ダィレクターのエィドリアン・アッシュが金市場の動向に関してインタビューに答えました。
このインタビューでエィドリアンは、先週の金相場の下げは、主要中央銀行総裁のタカ派的コメントによる長期金利の上昇が要因と解説し、価格が下落した際に本来需要が増加する中国とインドにおいて、その気配が見られないことにも言及していました。そして、インドにおいては今月から導入された物品・サービス税によるものとしながらも、ブリオンボールトにおける需要は、金価格が下げていること、特にユーロが強含んでユーロ建て価格が年初来再低値へ下げていることなどからも高まっていると答えています。
また、今週の米雇用統計の結果によっては、金価格は更に下げることで更なる需要の高まりの可能性も予想していました。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
このニュースレターは日本からお届けしています。そこで今回はロンドン便りをお休みさせていただきます。