ニュースレター(7月1日)1340ドル BREXITとBOE追加緩和示唆がポンド建て価格を3年ぶりの高値へ急騰させる
技術的な問題から、先週のニュースレターの掲載が遅れましたことをお詫びいたします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1340ドルと前週同価格から1.8%上げています。
今週も英国と世界の金融市場はBREXITの影響で揺れることとなりました。
週明け月曜日は、ジョージ・オズボーン財務相がロンドン早朝に記者会見を行い、週明け金融市場が開く前に状況の沈静化を図ろうとしましたが、ポンドは対ドル2%下げ、過去31年で最低水準へと下げ、英国株も銀行株を筆頭に大きく下げ、バークレイズ銀行とRBSは15%下げたことから、一時的に取引が中断されることとなりました。
そこで、ポンド建て金価格はトロイオンスあたり1000ポンドを越え、ユーロ建ても1200ユーロを越え2013年春以来の高値でとなりました。また、同日はS&Pが英国を「AAA」から「AA」へと格下げし、見通しは「ネガティブ」としていました。
そして、野党労働党は、コービン党首の引責辞任をもとめ、影の閣僚が14人辞任し、国民投票の結果を受け辞任したキャメロン首相率いる保守党同様に党首選挙の実施の可能性が高まることとなりました。
火曜日金相場は、BREXITによる混乱が多少落ち着きを見せる中緩やかに下げることとなりました。
同日は、英国野党労働党党首の不信任動議が大差で議決され、新たな英国首相の選出は、9月9日までと当初より1月早まったことが伝えられていました。
水曜日は為替市場のポンドと株式市場も上げる中、前日の下げを取り戻すこととなりました。
木曜日金相場は、BREXITのショックに対し、金融市場が引き続き落ち着きを見せ、株価が上げる中、ドル建てにおいては狭いレンジの取引となりました。しかし、ポンド建てにおいては、マーク・カーニーイングランド銀行総裁が、更なる金融緩和を示唆したことからポンドが下げ、トロイオンスあたり15ポンド程上昇することとなりました。
同日の英国の政局においては、締め切られた与党保守党の党首戦への立候補で、離脱派のリーダーだったジョンソン前ロンドン市長が出馬を見送り、ジョンソン氏を支援すると見られていた国民投票のキャンペーンでジョンソン氏とともに離脱派を率いたゴーブ司法相が出馬し、残留派だったものの離脱派の支持も受けている、最も内閣経験の豊富なテレサ・メイ内相と他3名が名乗りを上げることとなりました。
金曜日金市場はポンド建てにおいては、前日のカーニーイングランド銀行総裁の「2500億ポンドの追加緩和の用意がある」という言葉でポンドが対ドル下げたことからも上昇を続け、週の終値は2013年の4月5日以来、月間上昇率としては1982年8月以来の18.8%の上げとなりました。なお、ドル建てにおいては、2014年3月以来の高い終値となりました。
なお、銀相場はドル建てにおいてトロイオンスあたり19.47ドルと超え、過去2年間で最高値に近づくこととなりました。
同日発表の指標で注目するものとしては、中国のCaixin製造業購買部担当者指数がさらに悪化していたこと。米国のISM製造業景況指数が予想を上回る好調なものであったこと。
BREXIT関係では、英国ではなくオーストリア憲法裁判所が、開票手続きの不備で5月に行われた大統領選の結果を無効とする判断を下し大統領選をやり直すように命じたことです。これにより欧州統合に懐疑的な極右政党の候補者が票を伸ばすかによって、英国の欧州連合(EU)からの離脱交渉にも影響を与えることにもなりそうです。
ブリオンボールトニュース
今週も多くの主要メディアで、BREXIT関連のブリオンボールトのコメントとデータが取り上げられました。
英国主要日刊紙テレグラフの記事では、BREXITの懸念で金融市場が揺れる中、少なくとも一つの業界は恩恵受けているとして、安全資産としての金への需要が伸びていることをレポートし、ブリオンボールトでは、先週金曜日に3000万ポンド(約40.5億円)相当の金と銀の取引が行われたことが紹介されています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
• 主要経済指標(6月27日~7月1日)
ロンドン便り(BREXITウォッチ)
今週は日本に入っていますが、日本でもBREXITのニュースはトップストーリとして伝えられていることからも、いかに世界の興味が英国の今後に注がれていることも痛感することとなりました。
そこで、日本ではあまり伝えられていない、離脱派を率いたボリス・ジョンソンとマイケル・ゴーブの関係亀裂への経過とその裏話について、BBCやテレグラフが伝えていますので、その要約をお伝えしましょう。
BBCとテレグラフの時系列で追った二人の動きを見ると、二人の亀裂の始まりは、国民投票で離脱派が勝利した後のようです。テレグラフは、ジョンソン氏が週明け月曜日に同紙に寄稿した記事の中で、離脱の理由は移民ではなかったと断言し、今後もEUとの自由な人と資本の動きが行われるだろうと述べた内容が、必ずしも離脱派の意見を代弁していないと見なされたことも一つの要因とされていますが、結果的には党首選を戦うための準備を十分に行わなかったジョンソン氏が、首相としての器では無いことにゴーブ氏が改めて気がついたためとしています。
それに対し、BBCはテレグラフの記事がきっかけではないとしたものの、ゴーブ氏が、国民投票の結果後に、本来は次期内閣で要職を約束されることで、ジョンソン氏をサポートすることを約束していた、アンドレア・レッドソム・エネルギー閣外相へその合意書を書面で提示しなかったことから、レッドソム氏が立候補してしまうなど、後手後手に回ったジョンソン氏を見限ったという点では一致しています。
今回の党首選立候補の顛末がまるでドラマのようであることから、様々なメディアが、有名なドラマのシーンに二人の写真を挿入した見出しを下記のように出していました。
離脱派のジョンソン氏とゴーブ氏は、国民投票で勝利しながらも、彼ら自身も勝利するとは思っていなかったとBBCは伝えていますが、そのようなことから実際の離脱のロードマップがともに描けなかったのか、来週以降の党首選など今後の動きを見守ることにしましょう。