ニュースレター(6月10日)1275.50ドル 米FRBの早期利上げ観測が後退し金相場は3週間ぶりの高水準へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1275.50ドルと、前週同価格から2.7%上げています。
週明け月曜日、市場注目ののイエレンFRB議長の会見では、「5月雇用統計は期待に及ばず、気がかりだ」と述べ、利上げについては「より緩やかに」とし、「早期」から微修正されていることが伝えられたことからハト派的内容と解釈されて、上昇することとなりました。
しかし、発表直後は「条件合えば緩やかな利上げが適切になる可能性高い」とも述べたことも伝えられたことから、市場はハト派的かタカ派的内容であったかを決めかねて、神経質な動きをすることとなりました。
火曜日の金相場は、ユーロ圏の第1四半期のGDPが予想を上回り、ユーロ圏の株価が上昇すると共にロンドン時間に多少下げたものの、ほぼ前日の終わり値に戻すこととなりました。
水曜日金相場は、アジア時間に発表された中国の貿易収支が悪化していたことからも上昇を始め、テクニカル分析で一つの上値とされていたトロイオンスあたり1252ドルも超え、さらに大きく上昇することとなりました。
木曜日の金相場は前日の上昇基調を受け継ぎ、過去3週間の最高値まで上昇することとなりました。
これは、前日欧州中銀が社債の買い付けを開始したことで、ドイツと英国の国債利回りが過去最低の水準へと下げましたが、同日は欧州中銀のドラギ総裁が、ユーロ 圏の長期的な経済先行きに関して「緊急の警告(Urgent warning)」を出したと伝えられたことから、ユーロが下げ、英国のEU離脱の是非を問う国民投票も2週間後へも迫ったことから、BREXITへの懸念も高まる 中、安全資金への資金の逃避が起きていたことが要因の模様です。
本日金曜日もリスクオフ傾向が続き、日本国債10年物の利回りが過去最低を更新し一時マイナス0.145%になり、同様に安全資産と見なされるドイツ国債も過去最低の0.02%、米国債10年物が3年半ぶりに1.65と下げ、欧米株式も全般下げる中、金相場は5月18日以来の高水準のトロイオンスあたり1274ドルへと上昇を続けることとなりました。
また、銀相場も過去4週間で最高値のトロイオンスあたり17.36ドルへと上昇することとなりました。そして、銀ETFのiShare シルバートラストの残高は、過去最高となった2014年中盤の水準に1%で達する量に増加しています。
その他の市場ニュース
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LBMA金価格のオークションに14行目として、中国の交通銀行が中国の銀行としては4行目で参加することが伝えられたこと -
米著名投資家のジョージ・ソロス氏が投資活動の一線に復帰したことが伝えられ、3月末の同ファンドの開示資料では、米国株の保有額を約4割圧縮し、金への投資を増やし米株式相場全体の値下がりに備えたETFを保有していると伝えられたこと。 -
金ETFの最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高が9日に887.38トンと2013年10月15日以来の水準となったこと。
ブリオンボールトニュース
今週は、弊社が毎月まとめている金投資家インデックスが発表され、英国のEU離脱の懸念からも、過去3年で最も高い水準まで購入者数が伸びたことからも、下記のように多くの主要メディアで取り上げられました。
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日本語で金の情報を網羅するゴールドニュース「[金投資家インデックス]金・銀購入者数が過去3年間で最高水準へ」 -
米主要掲載サイトのMarket Watch「金購入欲が過去3年間で最も強いものとなる」 -
英主要日刊紙の経済サイトMoney Observer「金と銀の購入が過去3年で最も高い水準」 -
ロイター通信「英国のEU離脱(BREXIT)への懸念からロンドンの金地金と金貨へ購入が進む」
また、ブルームバーグの「NY金:続伸、ファンド通じた保有量増加で銀も高い」の記事でもエィドリアン・アッシュのコメント「銀市場に大量の資金が引き続き入ってきている」とし、「当社顧客からの資金流入は2011年初めに記録した過去最高水準と一致する」と指摘したことを取り上げています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り(BREXITウォッチ)
今週のBREXIT関係のニュースとしては、インターネットによる有権者登録手続きが本来は今週7日に締め切られるところ、直前にアクセスが殺到しサイトが使えない状態になり、未登録者が続出したことから、政府がその期間を10日の午前0時まで延長したことが伝えられていました。
今回の有権者登録手続きは、7日だけで52万5000人が申請したとのこと。同日は、キャメロン首相が登場したテレビ討論が行われていたために、討論の放送が終わった直後の午後10時には5万人以上がサイトにアクセスし、締め切り5分前は2万6000人、そして直後に2万人以上がアクセスしたとのこと。
残留を支持する若者が締め切り間際に登録した可能性が高いことからも、締め切りが延長されることが選挙結果にも影響をもたらす可能性もあり、離脱派団体の「EUを出よう」のアロン・バンクス代表が延長に反発し、締め切り延長の違法性を問い、法的措置も辞さない構えを示していましたが、本日は、この延長期間中に43万7000人が登録したことが伝えられ、この間登録した77%が45歳以下の若い世代であったことも明らかとなっています。
昨日で国民投票まで2週間を切りました。本日は、英国EU離脱への懸念の高まりからポンド安が進んでいます。
なお、インターネットによる世論調査の会社YouGovのサイトで発表されている、最新の世論調査の結果は下記のように拮抗していますが、離脱派が上回っています。
調査会社 |
残留 |
離脱 |
分からない |
YouGov |
41% |
45% |
15% |
ICM |
43% |
48% |
9% |
TNS |
41% |
43% |
16% |
それでは、国民投票の前にお届けするニュースレターは来週が最後となります。そこで、来週は直前のキャンペーンの模様をお伝えします。