金市場ニュース

ニュースレター(4月7日)1266.45ドル:米国のシリア攻撃と予想を大幅に下回る米雇用者数でトランプ大統領選出以来の水準へ上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1266.45ドルと前週同価格から1.7%上昇しています。

週明け月曜日の金相場は、米国ISM非製造業景況指数が予想を多少ながらも上回ったものの、欧米株価が下げる中、1256ドルまで上昇することとなりました。これは、同日ロシア地下鉄の車内での爆発で10人が死亡したことが伝えられ、その時点では影響は限定的でしたが、その後徐々に地政学リスクが認識された事も要因となった模様です。

しかし、今週は非農業部門雇用者数や中米首脳会談などと重要イベントが多いことからも、同日の値動きは限られたものともなりました。

火曜日金相場は一時トランプ大統領就任以来の5ヶ月ぶりの高さへ近づき1261ドルまで上昇することとなりました。

これは、ドルと円も上げていたことからも安全資産の需要でした。その理由は、株価がトランプ政権のインフラ投資への期待で上げ続けていることへの懸念、またフランス大統領選を前に世論調査で極右政党党首のルペン候補者がマクロン前経済・産業・デジタル相と同様に25%の支持を得ていることが伝えられたことなどでした。

水曜日は、米ADP全国雇用者数とFOMCの議事録で金相場が動くこととなりました。

同日はADPが26.3万人と18.7万人を大きく上回り2014年12月以来では最大の伸びとなったことから、株が上げ金が下げていましたが、NY時間後に発表されたFOMCの議事録で株高への懸念が議論されたことが明らかとなり、株が大きく下げる中金は同日の下げ幅を取り戻す上昇を見せることとなりました。

しかし、FOMC議事録では、大部分の当局者がバランスシート(4億5000億ドル)の縮小開始につながる政策変更の年内実施を支持していることが明らかになり、これはよりタカ派的政策でドルを強含ませるものであり、金にとってはネガティブな要素であることが翌木曜日の金相場へ影響し緩やかに下げることとなりました。

本日金曜日はアジア時間午前中にトランプ政権が化学兵器を使用したシリアのアサド政権への対抗措置として巡航ミサイルをアサド政権の主要軍事施設へ発射したことが伝えられて金相場がトランプ大統領選出後最高値の1269ドルを一時付け上昇することとなりました。

その後ロンドン昼過ぎに発表された市場注目の米雇用統計で、3月非農業部門雇用者数は9万8千人と予想の18万人と前回の23.5万人を大きく下回ることとなりました。また前回値は21.9万人へと下方修正されました。なお、失業率は前回と予想の4.7%か4.5%へと下げていました。

この発表を受けて金相場は再び1270ドルまで上げましたが、その後その上げ幅を多少失い1266ドルを推移しています。

なお、ロシアは米国のシリア攻撃を「でっち上げ情報に基づく主権国家への攻撃であり、国際法違反だ」と批判しており、日本と英国は支持していますが、今後の米ロ関係への懸念は高まっているようです。

また、本日も続けられているトランプ大統領と習近平国家主席と会談では、中国国営の新華社が、トランプ氏は習氏による年内の公式訪中の招請を受け入れ、両首脳は外交・安全保障や経済など4分野で高官級の対話メカニズムを新設し、両国関係を発展させることで一致したとも伝えるなど、シリア情勢に絡むネガティブな要因はロンドン時間終了時点では見られていません。

その他の市場のニュース


  • リッチモンド連銀ラッカー総裁が情報流出問題で4日に辞任したことが伝えられたこと。ちなみにラッカー総裁は利上げに積極的なタカ派で今年10月に退任予定でした。

  • コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週から50%増加し、一月ぶりの高い水準となっていたこと。なお、このコントラクト数は年間平均の81%弱。

  • これに対しコメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、年間平均の247%を超える高いもので、今年3番目の高さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は今週月曜日に4.4トン増加後全く増減がなかったこと。

ブリオンボールトニュース

今週はブリオンボールトの金投資家インデックスが発表されたこと、そして第1四半期の金の動向が明らかとなったことなどから、ブリオンボールトのリサーチ主任のコメントが多くの主要メディアで取り上げられています。

ここでブリオンボールトが毎月まとめる金投資家インデックスが紹介され、ブリオンボールトの顧客が8ヶ月連続で金保有量を増加させていることに言及し、リサーチ主任エィドリアン・アッシュの「Brexitやトランプ大統領が選出されたことによる政治リスクが継続し金の需要を高めている。そして、金融危機以来の高さとなっていた昨年夏の英国の新規顧客数は下げているものの、EU圏内の予定されている選挙からもEU圏内北部の国々の需要が高まっている。」というコメントを取り上げています。

この番組でブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが金相場の先行きについてインタビューを受けました。

ここで、今年第1四半期の金の上昇は、中国とインドの需要増と政治リスクとし、第2四半期の見通しに関しては、原油価格が上がることでインフレが上昇していることに注目し、インフレが上昇を続ければ、アナリストは1300ドルへと金は上昇をすると見ているとコメントし、インドの需要に関しては、売上税が短期的には需要を抑えるものの、ルピーが上昇していることからも、金の需要を高め、更に世界的には第2四半期に欧米のヘッジファンドが購入すると予想しています。

ここでエィドリアンの「最も重要な金上昇の要因は、フランス大統領選、過去5年来最も高いインフレ率、そして米連銀への投資家の落胆等」というコメントが取り上げられています。

ここでエィドリアンは、2017年の金の上昇は、他の投資資産のボラティリティが高まったこと、預金や債券のマイナスリターンがインフレによって悪化したことが背景としています。

そして、過去10年間の第1四半期に8回金がドル建てで上昇したことに言及し、この背景として、政治リスクや中国の旧正月の需要が高まったこと、そしてインドの金購入が高まるディヴァリー(光の祭典)の需要のためと解説しています。

ここでエィドリアンはその背景として、他の投資資産のボラティリティが高まったことをあげると共に、米連銀が利上げをしたにもかかわらず、米国の実質金利は過去5年間で最も低い水準の-2.1%に下げていることに言及し、FOMCメンバーのタカ派的コメントはこのような状況では意味をなさないと述べ、銀が第1四半期に13.5%上げて、他の主要投資資産の中で金を唯一上回っているのは、米連銀が金利をインフレ上昇ペースに合わせられずにいることに対して、資産を保全するための比較的安く行える銀投資が行われているためとしています。

今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週私は日本の家族の関係で日本に入っておりますので、英国からのニュースは、先週金曜日にロンドンで行われ参加したウィスキーティスティングのエキジビションについてお届けしましょう。

以前もお伝えしましたが、ブリオンボールトはグループ会社の中にウィスキーのオンライン投資会社ウィスキー・インベストメント・ダィレクト(WID)を2015年に設立しました。

そこで先週金曜日と土曜日にロンドンで開催された世界のウィスキーが集まるWhisky Liveというエキジビションに会社から派遣されて行ってきました。

ウィスキー・インベストメント・ダィレクトでは現在スコッチウィスキーしか扱っていませんが、このエキジビションではスコットランドとアイルランドは勿論のこと、日本や台湾やインドも含む世界各国のウィスキーのティスティングができて、とても興味深いものでした。

日本からはニッカウィスキーが1社だけ出展していましたが、そのブースは人気が高く、日本のウィスキーの人気の高さを改めて見ることとなりました。

また、その他興味深かったことは、弊社ウィスキー・インベスト・ダィレクトでも投資用に出しているGlen Morayがとても高い品質のウィスキーをかなり手頃な値段で出していること。(Glen Moray Classicは22.50ポンド位)これは、一時品質の問題などで評判が落ちた時期があり、現在はその品質は素晴らしものへ改善されたにもかかわらず、手頃な値段で市場に積極的に再参入をしようとしているためとのこと。

また、台湾のメーカーのKavalanが近年賞を取り続けているだけあり、会場でも人気が高く、実際に素晴らしい品質であったこと。

さらに面白いと思ったのは、Kavalanが作られる台湾やインドのウィスキーは気候が暖かい場所で熟成されるために、熟成期間がスコットランドのような寒冷地よりかなり短くてすむとのことです。

ちなみに、弊社のウィスキーサイドのリサーチ部門が昨年のスコッチウィスキーの輸出先とその量をインターアクティブに表示したチャートを作成していますので、もしよろしければ下記のリンクでご覧ください。

https://www.whiskyinvestdirect.com/about-whisky/Scotch-whisky-exports-2016-201702151

ここでご覧になってもお分かりになるように、日本は世界でも10位(量)、13位(価値)のスコッチウィスキーを日本のウィスキーの原料として輸入している国で、昨年は量と価値において2002年以来の高い水準となっていました。

それでは、またここで、面白いウィスキーの話がありましたら時折ご紹介をさせていただきます。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ