ニュースレター(3月31日)1244.85ドル:トランプ政権への懸念で上昇後、良好な経済指標で下落したものの、第1四半期は7.4%上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1244.85ドルと前週同価格からは0.2%下げています。しかし、本日が第1四半期の最終日ですが、年初からは7.4%上昇しています。ちなみに、銀価格は年初からドル建てで11.2%上昇しています。
月曜日金相場は、前週金曜日にトランプ政権がオバマケアの代替案の採決を取り下げたことが今後の議会運営への懸念となり、市場開始とともに大きく上昇し、一時トロイオンスあたり1260ドルを付け、2月27日以来の高値を記録しました。
これは、リスクオフの動きで、安全資産として金が買われ、ドル安とともに株式市場が下げることとなりました。
火曜日金相場は、ドルと株価が前日の下げから反発し上昇する中、前日の高値トロイオンスあたり1260ドルからは下げたものの、一時は1258ドルまで上昇することとなりました。
同日は前日下げていたドルと株価が、発表された米主要経済指標が軒並み予想を上回り、特に消費者信頼感指数が2000年以来の高い数値となったことを好感し上昇することとなりました。
また、同日はトランプ政権の軸足が税制改革へ向かうという見方が広がったこともドルと株価を押し上げ、金を多少押し下げた要因となりました。
そのような中、金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は前日2.7トン増加し835トンと、FOMCの利上げ以来の最高水準となっていました。
水曜日金相場は、英国がEU離脱の通告を行う中、緩やかに上昇することとなりました。
また同日米株式市場は、原油在庫減少のデータが発表され原油価格が上昇する中、前日の0.7%の上昇分から更に0.1%上げ2週間ぶりの水準へと上昇しました。
また、ポンド建て金相場は同日英国のEU離脱の通告が行われたことが伝えられる中弱含み、トロイオンスあたり1010ポンドと3月上旬の水準へと一時上昇することとなりました。
木曜日金相場は、ロンドン午前中はトロイオンスあたり1250ドルあたりを推移していましたが、ロンドン昼過ぎから下落を始め米株式が上昇する中、1244ドルへと下げることとなりました。
下げの要因は、米国の第4四半期GDPが改定値から0.2ポイント上方修正されたこと、また個人消費は改訂値から0.5ポイントの上方修正となる等好調であったことと、また前日夜のローゼングレン・ボストン連銀総裁、ウィリアム・サンフランシスコ連銀総裁のタカ派的コメントが伝えられていたことからも、利上げ観測の広がりもあった模様です。
そのような中、ロンドン午後に、トランプ大統領が為替操作国にペナルティーを検討しているとの関係者の発言が伝わるとドルインデックスが下げ、一時金が戻しましたが、メスター・クリーブランド連銀総裁の「バランスシートの年内縮小開始を支持」、「さらなる利上げ必要」というコメントも伝えられ、再び金が押し下げられることとなりました。
本日金相場は、月末で第1四半期末ということで、調整の売買が行われているようで、前日比上昇しています。
なお、昨日上昇した株価は日本株は日経とTopixは共に下げ、欧州株は英国株を除き上昇し、米国株式はロンドン時間午後4時の段階でまちまちですが、第1四半期としてはS&P が5.8%、ダウが4.9%上昇しています。
その他の市場のニュース
- 先週末発表された先週火曜日のコメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週の前週比46%減という、2015年11月以来の早いペースの減少から一転し、前週比32%増となっていたこと。
- それに対し、コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、3週連続でそのネットロングポジションを減少させ、それはショートポジションがが、8週間来の高さに増加していたことから。
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は、月曜日に2.7トン増加したもののその後減少し、今週木曜日までで-0.3トン減少していたこと。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
また、金の基礎知識ページにブリオンボールトのリサーチ部門が昨年末までの40年間の米国と英国の主要投資資産の収益率の比較をまとめ、下記の記事が掲載されましたのでご覧ください。
ここで興味深いのは、昨年は政治リスクとなるイベントが多く、金相場は上昇し金の収益率は上昇していましたが、特に英国はEUからの離脱で大きく英国ポンドが下げたことからも、主要資産の収益率ではトップとなっていたことでした。
ロンドン便り
今週の英国の最大の話題はやはり英国のEU離脱通告が29日に行われたことですが、それに加え本日は、英国の海外領土であるイベリア半島の南東端のジブラルタルに絡み、スペインが英国のEU離脱のためのEUとの取り決めに拒否権を使う可能性があるというニュースを大きく伝えています。
ジブラルタルは、地中海の出入り口に位置することからも軍事上、海外交通上重要で、18世紀からイギリス領土でイギリス軍が駐屯しています。そして、この領有権を巡り300年以上英国とスペインは争っています。
ジブラルタルにおいては、イギリスがイギリス統治の可否を問う住民投票を1967年に行い、圧倒的大差でイギリスへの帰属を選択しており、2002年には英国とスペインの共同主権が検討され、住民投票が行われましたが、これも90%が反対の意志を示し否決されています。
しかし、英国のEU離脱の国民投票では、ジブラルタルでは96%が残留を希望していたことからも、スペインの外務大臣が再び共同主権を提案するなど、再び動きが見られていたのでした。
そして、本日は英国の離脱の話し合いのガイドラインのドラフトの中で、ジブラルタル問題が決着することも26の項目の一つであると明記されているとのこと。つまりは、ジブラルタルの領有権等も英国のEU離脱の話し合いの一つと考えられているとのこと。なお、このドラフトは全てのEUメンバーに同意される必要があります。
これは、当然英国政府にとっては受け入れがたいもので、そのためにトップニュースとして伝わっています。
未だEU離脱の話し合いは始まっていないにもかかわらず、既に新たな条件が含まれる可能性があることが伝えられるなど、BREXITの話し合いの幸先はあまり良いとは言えないかもしれません。