ニュースレター(2026年11月6日)金・銀は米中間選挙後に反発、堅調な米雇用統計と株安にも底堅さ
週間市場ウォッチ
今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格を比較した一週間の変動率は以下の通りです。
*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は正午、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。時刻は全てロンドン時間。
**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。
- 金:ドル建て価格は、週間で2週連続の下落から反発。
- 銀:6週連続の下落から反発。
- プラチナ:7週連続の下落から反発。
- パラジウム:9週連続の下落から反発。
貴金属市場の動向(週間)
今週の金・銀相場は、前週末につけたほぼ1年ぶりの安値から反発しました。週前半は、米国とイランの和平協議への期待を背景に原油価格が下落し、インフレ懸念と米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げ観測が後退。前週の下落要因となったAI関連株も落ち着きを取り戻し、金・銀相場を支えていました。
週半ばには、米中間選挙で民主党が上下両院の過半数を獲得する見通しとなったことを受け、上昇が加速しました。トランプ政権の財政拡大策が制約されるとの観測や、AI関連産業への規制強化に伴う成長鈍化懸念から、米国債利回りとドルが低下。イラン情勢の改善期待による原油安も支援材料となり、木曜日には金が2週間ぶり、銀が1週間ぶりの高値をつけました。
しかし、木曜日午後には、トランプ大統領が大規模な軍事作戦の再開を命じたとの報道を受け、中東情勢への懸念が再燃。原油価格とドルが反発し、金・銀相場は上げ幅を縮小しました。さらに、米国株式市場でAI関連株を中心に売りが広がり、株式の損失を補うためとみられる換金売りが貴金属にも波及。この影響は金曜日のアジア時間にも続きました。
金曜日は株式市場の落ち着きとともに一時持ち直したものの、米雇用統計が労働市場の堅調さと賃金上昇圧力を示したことで、再び下落しました。追加利上げ観測を背景に米国債利回りが上昇し、ドルも強含んだことが重しとなりました。
10月半ばには、AI関連株の急落とともに金・銀相場も下落していました。しかし、今週はハイテク株が再び大きく下げる中でも、金・銀への換金売りの影響は限定的にとどまり、週前半からの上昇分を一部維持しています。こうした株価下落に対する反応の違いからは、貴金属への投資センチメントに改善の兆しがうかがえます。
今週の貴金属相場の動き(日次)
■ 月曜日
金・銀相場は反発し、ロンドン時間午後にそれぞれトロイオンスあたり3,970ドル、51.25ドルまで一時上昇した後、上げ幅を若干縮小しました。米・イラン和平協議の進展期待から原油価格が前営業日比6.5%下落したことや、AI関連株が落ち着きを取り戻したことが支援材料となりました。
■ 火曜日
金・銀相場は、ロンドン時間午前中に下落した後、昼過ぎにはそれぞれ3,969ドル、50.55ドルまで持ち直しましたが、その後は上げ幅を削りました。
英国時間午後3時発表の米雇用動態調査(JOLTS)で、9月の求人件数が752万3,000件と市場予想の710万件を上回り、米長期金利の上昇とドルの一時的な強含みが重しとなりました。また、米中間選挙の結果を見極める姿勢も広がっていました。
■ 水曜日
金は心理的節目の4,000ドルを突破して4,070ドル、銀も52ドルへと上昇しました。米中間選挙での民主党勝利の見通しを受けた米国債利回りとドルの低下に加え、原油安が相場を支えました。
10月の米ADP全国雇用者数は前月比8万6,000人増と、市場予想の6万9,000人増を上回りましたが、金・銀相場への影響は限定的でした。
■ 木曜日
ロンドン時間早朝に金は4,146ドル、銀は53.48ドルまで上昇し、それぞれ2週間ぶり、1週間ぶりの高値をつけました。
午後には、米軍事作戦再開の報道を受けて原油価格とドルが反発し、上げ幅を縮小。ナスダック100指数が一時5%急落したことも、金・銀への換金売りにつながった模様です。
■ 金曜日
アジア時間には株安に伴う換金売りとみられる動きが続いたものの、欧州株が落ち着くと持ち直し、ロンドン時間午前中に金は4,081ドル、銀は52.35ドルへと上昇しました。
しかし、昼過ぎの米雇用統計で、雇用者数の伸びと平均時給の上昇率が予想を上回り、失業率も予想以上に低下。米短期国債利回りの上昇とドル高を受けて上げ幅を削りました。その後はやや持ち直し、ロンドン時間午後3時すぎには金は4,052ドル、銀は51.95ドル前後で推移しています。

その他の市場ニュース
-
ブルームバーグによると、ポーランド中央銀行の金準備が目標としていた700トンに達したとのことです。これは10月に約27トンの金を追加購入した計算となります。
-
今週発表されたワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の需給報告では、今年1~9月の世界の金需要(店頭取引を含む)は3,881トンと前年同期の過去最高水準にほぼ並び、需要額は過去最高の5,660億ドルを記録していました。
-
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉報告によれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)の発表が行われる前日の10月27日までの1週間に、金・銀・プラチナの買い越しが減少し、パラジウムの売り越しが増加していました。
-
金のネットロングは前週比1.2%減の334.06トンと、9週連続で減少して6月9日の週以来の低い水準へ下げていました。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。
-
銀の先物・オプションのネットロングは22.5%減の451トンと5週連続で減少して2024年2月27日の週以来の低い水準へ減少していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。
-
プラチナのネットロングは71.7%減の2.9トンと、2月10日の週以来の低い水準へと減少していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。
-
パラジウムは、2月3日の週以来のネットロングから3月17日の週にネットショートへ転じた後、27日までにネットショートが10.8%増の41.9トンと7週連続で増加し、2025年4月29日の週以来の高い水準へとなっていました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。
-
金ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに1.14トン(0.11%)減の1,040.513トンと週間で減少する見込みとなっています。
-
金ETF第2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.97トン(0.21%)減の461.05トンと、9月9日以来の低い水準で、2週連続で週間の減少の見込みとなっています。
-
銀ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに106.17トン(0.68%)増で15,751.90トンとなり、3月6日以来の高い水準で、5週連続の週間の増加の見込みです。
-
金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週77台後半で始まり、火曜日に79台後半まで上昇して昨年11月初旬以来の高さとなった後に、本日金曜日に78台前半まで下げて推移しています。2025年の平均は87.85、2024年は84.75、2023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど、金に対する銀の相対価格が低いことを示します。
-
上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、前週の6.35ドルのプレミアムから、7.83ドルのプレミアムへと拡大していました。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は、米中間選挙で民主党が予想を上回る勝利を収めたことに加え、イラン情勢の改善期待から原油価格が下落し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が後退する中、貴金属市場は大きく反発しました。その後は、金曜日に発表された米雇用統計にも影響を受けて推移しました。
来週も引き続きイラン及び中東情勢に市場の注目が集まります。また、火曜日には米消費者物価指数(CPI)、金曜日には米生産者物価指数(PPI)が発表されます。これらのインフレ指標は、今後のFRBの金融政策の見通しに影響を与えることから、重要な注目材料となります。
その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026年11月9日~13日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
金価格が約1年ぶりの安値に下落した背景と今後の見通しについて、日本経済新聞が詳しく解説している記事「金利低下でも沈むゴールド 一年ぶりの安値、米中間選挙後の原油高に警笛」で、分散投資や資産保全を目的とする長期投資家にとって、価格下落は金の保有を増やす機会になり得るという、私のコメントもご紹介いただきました。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
-
主要経済指標(2026年11月2日~6日)今週の結果をまとめています。
-
主要経済指標(2026年11月9日~13日)来週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。
ロンドン便り
今週英国では、米中間選挙とその結果が大きく伝えられていますが、英国内のニュースとしては、5日にイングランド銀行が3年以上ぶりに政策金利を引き上げたこと、英国政府の移民・永住権制度改革なども広く伝えられています。
本日は、この制度改革について簡単にまとめてみましょう。
英国政府は2日、移民の永住権取得に関する大幅な制度改革を発表しました。新制度では、原則として永住権の申請に必要な英国滞在期間を現行の5年から10年に延長する一方、年収約5万ポンド以上の高所得者や、医師、看護師、教師などの指定された公共サービス職は5年、年収約12万5,000ポンド以上の人は3年で申請できるようになります。また、年収2万5,000ポンド以上で一定の条件を満たす既存の介護職員についても、5年間での申請が認められます。
一方、不法な経路で入国した人については、永住権取得まで最大30年を要する場合もあります。新制度は2027年中に段階的に導入される予定です。
政府は、英国経済や社会への貢献度に応じて永住権取得の条件を変えることで、移民制度の公平性と持続可能性を高めることを目指しています。高所得者や医療・教育などの公共サービスを支える人材を優遇する一方、公的支援への依存を抑え、移民による財政負担を軽減する狙いがあります。また、不法入国した人々の永住権取得を大幅に難しくすることで、英国への不法入国を思いとどまらせることも目的としています。
今回の改革に対しては、与党労働党内からも強い反発があり、政府は当初予定していた介護職員の永住権取得までの期間を15年に延長する案を撤回しました。しかし、すでに英国に滞在している移民にも新制度を適用することについては、引き続き批判が出ています。自由民主党は既存の移民への遡及適用に反対し、緑の党は所得によって永住権取得の条件に差をつけることは低所得労働者への差別につながると批判しています。一方、保守党やReform UKは、政府が当初案を緩和したことを批判しており、移民政策をめぐる各党の立場の違いが浮き彫りとなっています。
巨額の財政赤字を抱え、その一因となっている社会保障費の抑制が急務となる中、英国政府は財政負担の軽減と人道的配慮、公平性の確保、さらには国民の理解を得られる政策との間で、難しいバランスの確保を迫られているようです。




