金市場ニュース

ニュースレター(2025年4月25日)史上最高値3500ドルをつけた後に2週間ぶりの週間の下げへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格と比較すると、0.8でトロイオンスあたり3280ドルと2週ぶりに下落し、前週の金曜日価格として2週連続で史上最高値を更新から下げています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格と比較して、3.19%高のトロイオンスあたり33.34ドルと上昇して3週ぶりの高さとなっています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のこの価格から1.4%高でトロイオンスあたり971ドルとなっています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のこの価格から0.6%安でトロイオンスあたり945ドルと4月14日以来の低さとなっています。

の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は金価格が、トランプ大統領のFRBへ利下げを求め、それに同意しないパウエルFRB議長を解任するといった発言からも、中央銀行の独立性が保たれないことへの懸念で、米資産が大きく売却されて、ほぼトロイオンスあたり3500ドルへと押し上げられてるという、大きな動きで始まっていました。

しかし、その後トランプ大統領がパウエル議長を解任するとは述べていないなどと、発言を撤回し、中国への姿勢も軟化させたことからも、行き過ぎたリスクオフ基調が緩み、株価が上昇に転じる中で、今週の上げ幅を失って、2週ぶりの週間の下げを記録する傾向となっています。

金は4月に入って最高値の3500ドルで12.4%の上げ幅であったことからも、調整が入っている模様です。

そのような中、年初来の動きを見ると、金は今週の下げ幅を考慮に入れても、年初来24.7%上昇しており、今週6%を超える上昇を見せている米株価指数のS&P500種は、年初来は未だ6.4%の下げとなっているなど、金のパフォーマンスの強さが際立っています。

そこで、今週は金(黄色)と銀(水色)とS&P500種(青)の年初来の価格のチャートをお届けしましょう。

年初からのドル建て金・銀価格とS&P500種の価格の動き 出典元 グーグルファイナンス

なお、工業用途需要の高い銀は、今週初めの安全資産の需要で金が急騰した際に横ばいとなり、金銀比価は2020年3月以来の高さの105と銀の割安が進んでいましたが、その後上昇に転じて週間では3%を超える上昇と、金銀比価も4月初旬の水準へ戻しています。しかし、未だ安全資産の需要を持つ金とのパフォーマンスの差が顕著となっています。

プラチナは今週火曜日に金との価格差を2400ドルと史上最大へ広げていましたが、金が下げる中でその差を狭めてはいますが、未だ史上最大の水準を推移しています。パラジウムに関しては、その需要の8割が工業用途でガソリン車で排ガス浄化触媒用であることからも、今後世界が電気自動車へと移行する中で需要減少は避けられないことからも、上げ幅は限られています。

今週の金相場について

英国が祝日であった月曜日金相場は、米国株の急落からもトロイオンスあたり3444ドルと史上最高値でロンドン時間を終えていました。

この背景は、トランプ大統領がFRBへ即時の利下げを要求し、パウエルFRB議長の解任も含めた攻撃も強め、米国中銀の独立性を脅かす言動に米国への信頼が揺らぎ、米国ドルが15ヶ月ぶりの低値、そして米株価が大きく下げてS&P 500種が一時3%を超える急落をしていたことからでした。

火曜日金相場は、アジア時間にトロイオンスあたり3499ドルと史上最高値をつけた後に、3336ドルまで戻して終えていました。

アジア時間の上げは、前日米国株価が2%を超えて下げて終えていたことからも、安全資産の需要が背景となりました。また、今月に入り中国の需要の急増は顕著となっていますが、今週に入って上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差はトロイオンスあたり40ドル前後と高い水準を維持しており、SGEの金の投資商品の取引量は同日前日比75%増で、2020年3月のコロナ危機以来の高さ、上海先物取引所も前日比125%と急増していたことも背景となっていました。

その後、米国株価指数の先物価格が上昇に転じ、欧米株価も上昇し、ドルも前日の2022年3月以来の低値から若干ながら上昇したことで、急激なリスクオフ基調が落ち着き、金価格も同日の上げ幅を削って3336ドルで終えていました。

なお、同日は米国ドル、英国ポンド(トロイオンスあたり2609ポンド)、ユーロ(トロイオンスあたり3035ユーロ)、日本円(gあたり15755円)等と、すべての主要通貨建てで金価格は史上最高値を更新していました。

水曜日金相場は、前日の下げ基調を受け継いで、トロイオンスあたり3261ドルと前週木曜日以来の低値、(しかし当時の最高値)へ一時下げて、3316ドルへ戻して終えていました。

この背景は、トランプ大統領が同日、パウエルFRB議長を「解任するつもりはない」と述べたこと、そして、対中関税に関しても、現状の145%から下がる(0%にはならないものの)という見解を示したことからでした。

そこで、リスクオフ基調が緩み、米株価、ドル、米国債価格が上昇したことで、金が押し戻されることとなりました。

木曜日金価格は、米株価が4営業日連続で上昇する中で、トロイオンスあたり3370ドルまで一時上昇していました。

同日は中国が米中の貿易交渉は行われていないと述べたことが伝わったことで、2国間協議を巡る不透明感が出ていたことで、金の安全資産の需要が出ていた模様です。

また、今週はアジア時間に金価格が上昇するパターンを繰り返していましたが、上海黄金交易所のプレミアムは同日トロイオンスあたり60ドルを超えて、昨年1月初旬以来の高さとなっており、中国の需要の堅固さを示していました。

本日金曜日金相場は、アジア時間にトロイオンスあたり3367ドルをつけた後に緩やかに下げて3265ドルと、前週水曜日の水準(その際の史上最高値)へと一時下げていましたが、ロンドン時間夕方に3286ドルへ戻して推移しています。

金価格が今月に入り最高値まで12%を超えて上昇していたことからも、トランプ政権の関税を巡る混乱が悪化していない中で、調整の動きが起きている模様です。

なお経済指標では、ミシガン大学消費者態度指数は52.2と、前回と予想の50.8を上回っていましたが、長期インフレ期待が1991年以来の高水準となっていたことは、懸念材料とはなっている模様です。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に4月15日までのデータが発表され、トランプ大統領が中国の輸入品への関税をコンピューターやスマートフォン等に限り90日間延期をしたことで、米株価が3営業日連続で上昇し、金価格がトロイオンスあたり3251ドルと史上最高値をつけていた際に、金を除く全ての貴金属でネットロングポジションを増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、1.1%減で425.87トンと4週連続で減少し、2024年3月初旬来の低さへ下げていたこと。価格は6.8%高でトロイオンスあたり3219ドルと史上最高値をつけ、建玉は14.1%増であったこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、6.4%増で3626トンと3週ぶりに増加して前週の昨年12月末以来の低さから増加していたこと。価格は前週比6.6%高で、トロイオンスあたり32.31ドルと前週の1月末以来の低さから上昇していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングであったものの、4月8日からネットショートへ転換したものの、30%減少させて16.0トンと、前週の昨年の3月初旬以来の大きさからは減少していたこと。価格は前週比4.0%高でトロイオンスあたり960ドルと前週の昨年末以来の低さから上昇していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに3.3%減で40.39トンと減少して、前週の昨年8月末以来の高さからは下げていたこと。価格は5.1%高でトロイオンスあたり964ドルと、前週の昨年末以来の低さから上昇していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週木曜日までに3.7トン(0.40%)減少して948.56トンと4月9日以来の低さで、2週連続の週間の下落の傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、先週木曜日までに1.91トン(0.44%)増で435.24トンと2023年8月25日以来の高さで、4週連続の週間の上昇傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週木曜日までに159.84トン(1.13%)減で13,960.26トンと4月9日以来の低さで、2週ぶりの週間の減少傾向であること。
  • 金銀比価はLBMA価格ベースで、今週105台後半とコロナ危機下の2020年5月以来の高さで始まり、徐々に下げて98台後半と4月初旬の水準へと下げて終える傾向であること。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、先週2483ドルと史上最大で始まり、本日2336ドルと今月半ばの水準へ戻して終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週25ドルのプレミアムで始まり、その後木曜日に35ドルへと上昇後に24ドルへ戻して終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、週間平均で47.11ドルと中国主導で金価格が上昇していた2024年4月以来の高さで、前週の21.91ドルから大きく上昇していたこと。この間人民元建て金価格は4月10日から今週月曜日までの8営業日連続で史上最高値をつけていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は4月11日から正の相関関係へ転換し、0.50と関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は4月3日から負の相関関係へ転換し、ドルインデックスが2022年3月以来の低さから若干上昇する中で、-0.87と前週金曜日の昨年11月以来の高さを維持していたこと。S&P500種と金の相関関係は3月13日から負の相関関係で、木曜日までで-0.23と関係を弱めていたこと。

今週の主要イベント及び主要経済指標

今週も金相場は、トランプ大統領の関税関連政策とFRBに対するコメントに反応していましたが、来週もこの傾向は続き、追加主要経済指標として、米雇用関係データが発表され市場は注目することとなります。

それは、火曜日の米雇用動態調査(JOLT)求人件数、水曜日の米ADP雇用統計、金曜日の米雇用統計等となり、追加木曜日の日本銀行金融政策決定会合後の金利発表等が重要となります。

詳細は主要経済指標(2025年4月28日~5月2日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週も金価格が最高値を続ける中で、弊社のリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが、独ハイデルスブラット紙、英ロイター、英ディリーミラー紙、英ディリーエクスプレス紙等の多くのメディアで取り上げられています。

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、引き続きトランプ大統領の関税政策及びウクライナ戦争に関するニュースが伝えられる中で、リーブス英財務相が米国との関税協議に参加していること、そして先週末のフランシスコ教皇死去と明日行われる葬儀に関してが大きく取り上げられています。

そこで今週は、このローマ教皇死去を伝える英国の報道についてまとめてみましょう。

4月21日(月)のロンドン時間早朝に速報が伝えられると、ニュース番組はトップニュースとして一日中この話題を報じていました。

チャールズ国王とカミラ王妃は「深い悲しみ」を表し、キア・スターマー首相は「貧者と忘れられた人々のための教皇」と称え、英国国教会の代表としてヨーク大主教は、教皇との個人的な交流を振り返り、「彼の謙虚さと隣人愛は、キリストに従う者の姿そのものだった」と述べたことが伝えられていました。

明日の葬儀を前に、ニュースでは今週フランシスコ教皇の棺に最後のお別れをするために訪れる信徒達の様子も日々報道しています。

また、明日の葬儀にチャールズ国王の代理としてウィリアム王子が参列し、スターマー首相も英国の公式代表として参列します。英国国教会を代表して、ヨーク大主教やロンドン主教も出席することが伝えられています。

英国におけるカトリック教徒の割合2021年の段階で約7~9%で、国教である英国国教会の約12~15%と比較すると少ないですが、スコットランドや北アイルランドを中心に多く、近年では移民(特にポーランドからの移民)によってカトリック教徒の数が増加傾向ではあるようです。

16世紀にヘンリー8世がローマ教皇と決別して以来、英国とローマ教皇庁の関係は歴史的には複雑なものではありましたが、今回の英国での報道の大きさは、ローマ教皇が宗教上、また政治的にも世界へ与える影響を反映していると言えるでしょう。

明日の葬儀には、トランプ米大統領やゼリンスキーウクライナ大統領も参列するとのことですので、さらなる報道ラッシュとなりそうです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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