金市場ニュース

ニュースレター(2024年9月6日)9月のFOMCのより大幅な利下げ観測後退で金価格は2500ドルを割る

先週は休暇をいただいていましたので、遅くなりましたが前週のニュースレターをお届けします。

週間市場ウォッチ

前週金曜日のLBMAのPM金価格は、前々週金曜日のLBMAのPM金価格から0.3%安でトロイオンスあたり2506ドルと、3週連続の金曜日のLBMA価格として史上最高値から下げていました。この間同金曜日のLBMAの銀価格は、前々週金曜日のLBMA銀価格(午後12時)から2.1%安のトロイオンスあたり28.84ドルと3週ぶりの週間の下げとなっていました。また同金曜日のLBMAのPMプラチナ価格は、前々週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から0.6%安のトロイオンスあたり934ドルと2週連続の週間の下げとなっていました。また同日のLBMAのPMパラジウム価格は、前々週金曜日のLBMA価格のPMパラジウム価格(午後2時)から2.6%安でトロイオンスあたり955ドルと週間の上げとなっていました。

前週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

前週貴金属価格は、金が来週9月17日と18日に行われるFOMCでの政策金利の利下げ観測が0.25%と0.50%で動く中で反応をする中、銀、プラチナ、パラジウムは米国と中国の世界最大及び第2位の経済国の景気低迷懸念からも下げ幅を広げることとなりました。

前週金曜日の米雇用統計はまちまちであったことからも、0.50%の利下げ観測がひと月前の7割から2割へと後退して心理的な節目のトロイオンスあたり2500ドルを割っていましたが、2024年末の金利予想は引き続き1%を超える利下げとなっており、金にとってはサポート要因となっていました。

そこで、今回は前週金曜日に大きく変化した9月の利下げ幅予想のチャートをお届けしましょう。下記のチャートで、9月のFOMCでの利下げ幅が金曜日に0.5%が2割、0.25%8割弱まで増加し、前日や一週間やひと月前からも大きく変化していたことが、棒グラフの下の表で確認できます。

2024年9月のFRBの政策金利の市場予想 出典元 CME FedWatch ツール

 

前週の金相場の動きと背景について

9月2日金相場は、米国がレイバーデーの祝日で薄商いの中、トロイオンス2497ドルへ下げて終えていました。

これは、ドルと長期金利が若干強含んでいたことからですが、この背景は、同週の米雇用統計、そして9月17日と18日に行われるFOMCを前に、行き過ぎた利下げ観測への警戒感であった模様です。

ちなみに、ドルインデックスは先月FRBの利下げ観測から2.5%強下げて年初来の下げ幅を記録していましたが、ドル建て金価格は月末価格で3%を超える上げ幅を見せていました。

コメックスの金先物・オプションのネットロングポジションも前々週火曜日に2020年3月と4年強ぶりの水準へ増加していたことからも、この警戒感もあった模様です。

3日火曜日金相場は、米株価が8月初旬以来の下げを見せたことからも、現金化が進み、トロイオンスあたり2474ドルまで下げて、2493ドルまで戻して終えていました。

同日米株価がS&P500種株価指数とナスダック100種株価指数が、それぞれ2015年と2002年以来最悪の9月スタートとなる下げを見せたのは、米ISMの製造業景況指数は47.2と、予想の47.5と前回の46.8を下回る数値となり、好不況の節目の50を5カ月連続で下回り、また、製造業PMIも47.9と予想と前回の48.0を下回っていたことが背景となりました。

そこで、米経済への懸念からも、FRBの早期の大幅な利下げ観測は広がったものの、ボラティリティの高さからも8月初旬同様に金は現金化が進むこととなりました。

なお、前週発表された中国の経済指標も悪化し、世界経済の減速懸念からも原油価格は今年最低値を記録し、銀やプラチナもそれぞれ2週間強、4週間ぶりの低値をつけていました。

4日水曜日金相場は、前日の米株価急落を受け継いでアジア株と欧州株が下げる中で、トロイオンスあたり2472ドルまで下げたものの、2495ドルまで戻して終えていました。

同日は前日の米指標の悪化同様に、7月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が767万人に減少し、2021年1月以来の低水準となったことを受けて、FRBの大幅な利下げ観測が広がり、米長期金利も今年最低の水準の3.76%へと下げていました。

そこで、前日は株価の急落で現金化が進んでいた金が長期金利の下げで、上昇に転じることとなりました。

5日木曜日金相場は、発表された米雇用関係データが予想を下回るもので、FRBの早期の大幅な利下げ観測が広がり、ドルと米長期金利が下げる中で、心理的節目のトロイオンスあたり2500ドルを超えて2529ドルへ一時上げた後に2517ドルで終えていました。

発表されたADP全国雇用者数では、前月比9.9万人増と予想の14.5万人増を下回り、2021年初頭以来の低さとなっていました。また、米新規失業保険申請件数は予想と前回修正値を若干下回っていましたが、今週米国のISM製造業景況指数や製造業PMIが予想を大きく下回り、景気への懸念があったことからも、労働市場の減速が際立った模様です。

そこで、9月のFRBの利下げは0.5%が0.25%を下回っていたものの、4割を超える高い確率となり、年末の金利は同日4.27%と1%以上の利下げ観測となっていたことが、金を押し上げることとなりました。

6日金曜日金相場は、米雇用統計がまちまちである中、非農業部門雇用者数は予想を下回っていたことで、発表後急騰して一時トロイオンスあたり2529ドルまで上昇した語、その上げ幅を急速に失い、さらに下げ幅を拡大してトロイオンスあたり2497ドルへと下げて終えていました。

発表された非農業部門の雇用者数は前月比14.2万人増と、予想の16万人増を下回ったものの、7月の修正値の8.9万人を上回っていました。しかし、6月と7月はいずれも下方修正されて雇用拡大のペースが鈍化していることを示していました。

また、失業率は前月の4.3%から4.2%に低下して予想通りとなっていました。平均時給は前月比の上昇率が0.4%と、予想の0.3%と前回の0.2%を上回っていました。

この発表を受けて、9月のFOMCでの0.5%の利下げ予想が前日の40%から25%へと下げ、長期金利は若干下げていたものの、ドルが強含んでおり、行き過ぎた早期の大幅な利下げ観測に調整が入ることとなりました。しかし、年末の金利は前日よりも下げて4.26%と未だに1%以上の下げが予想されており、金のサポート要因となっていました。

なお、同日FRB高官がFOMC前のブラックアウト期間に入る前に、ニューヨーク連銀のウィリアム総裁とウェラーFRB理事が共に、9月利下げ容認のコメントを出していたものの、大幅な利下げはデータ次第と述べていたことも、0.25%の利下げの観測を広げたようでした。

過去1週間のドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前々週末に8月27日までの一週間データが発表され、英国祝日明けに前日の米経済指標が良好で金価格は下げていたものの、その下げ幅を取り戻していた際に、すべての貴金属でロングポジションが増加していたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、4%増で781トンと3週連続で増加して、コロナ危機下の2020年3月10日の週以来の高さに増加していたこと。価格は0.8%安でトロイオンスあたり2508ドルと前週のLBMA価格としては史上最高値から下げていたこと。建玉は3.8%減で2週ぶりに減少して前週の前回の史上最高値前日の7月16日の週以来の高さから減少していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、10%増で5487トンと2週連続で増加して7月16日の週以来の高さとなっていたこと。価格は前週比0.4%高で、トロイオンスあたり29.90ドルと、7月16日の週以来の高さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、8月6日から2週連続でネットショートであったものの、8月20日から2週連続でネットロングで4.8トンへ増加していたこと。価格は前週比0.1%安でトロイオンスあたり959ドルと若干下げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートであったものの、7.8%減で45.6トンと3週連続で減少して2006年6月以来の高さから下げていたこと。価格は2.6%安でトロイオンスあたり966ドルと3週連続で上昇して7月9日の週以来の高さとなっていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、前々週までに9週連続の週間の増加後に、前週週間としては全く変化がなく、862.74トンと1月16日の週以来の高さであったこと。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、前週週間で1.18トン(0.32%)増で367.98トンと3週連続の週間の増加傾向で8月14日以来の高さであること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、前週週間で6.76トン(0.05%)増で14,500.09トンで、3営業日ぶりの高さで、3週間連続の増加傾向であること。
  • 金銀比価は、前週87台半ばで始まり、火曜日に88台と8月半ば以来の高い水準へ上昇後に、その後87台へ戻しておえていたこと。2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、前週1580前後の記録が残っている1990年3月以来最大の水準前後を推移していたこと。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は前々週火曜日から再びディスカウントへ転換し、火曜日に49ドルと4月半ば以来の高さまで上昇後に12ドルで終えていたこと。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924のディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は8月19日からディスカウントとなり、前週の平均は5.20ドルと前週の5.36ドルから下げていたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週、前々週の平均比で、金は24%増で8月初旬の週以来の高さ、銀は3%減で7月12日の週以来の低さ、プラチナは68%増で6月14日の週以来の高さ、パラジウムは48%減で7月26日の週以来の低さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は6月27日から負の相関関係で-0.73と週間では負の関係を若干強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は6月10日から負の関係へ転換し、-0.81と前週から関係を若干弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は8月6日から正の関係で、前週から0.78と関係を弱めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

先週は米労働市場関係データでFRBの政策金利予想観測が変化して市場が動きましたが、今週は水曜日に米消費者物価指数、木曜日に米生産者物価指数、そして同日欧州中央銀行政策金利発表と、重要指標とイベントが続くこととなります。

詳細主要経済指標(2024年9月9日~13日)ご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

先週は休暇をいただいていましたので、お休みとさせていただきます。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ