金市場ニュース

ニュースレター(2020年1月3日)ポートフォリオのリバランスが進む中で、中東情勢緊迫が高まり金は7年ぶりの高さへ

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、私は今週まで日本に入っていますので、年末年始の金市場の動きをまとめてお届けいたします。なお、今週のニュースレターは日本時間11日土曜日にお届けします。

週間市場ウォッチ

先週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1548.75ドルと、4ヶ月ぶりの高さで前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.5%上昇し、銀価格は、同日LBMA価格でトロイオンスあたり18.21ドルと2ヶ月ぶりの高さで、前週のLBMA価格(午後12時)から2.2%上げていました。また、プラチナも同日のLBMA価格のPM価格では983ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.9%上昇していました。

年末から金相場は株価が高止まりする中で上昇を続け、ドル建て金価格の年間の上げ幅が18.8%と2010年ぶりの大きなものとなっていました。そして今年に入り、3日に米国がイランの革命防衛隊の精鋭組織の司令官を殺害したことから、リスクオフが進む中で、ほぼ昨年の6年ぶりの高さへと上昇して終えていました。それでは、年末からの動きを追ってみましょう。

23日金相場は、欧米株価が全般上昇する中で、トロイオンスあたり1483ドルと先週終値から0.3%上昇していました。

この株価の上げは中国が同日全ての貿易相手国に対して来年1月から冷凍豚肉やオレンジジュースなどの輸入関税を引き下げると発表したことで、米中関係改善期待が要因となりました。

同日午前中の金の上昇は、テクニカル分析においてレジスタンスとなっていたトロイオンスあたり1480ドルを超えたことでさらなる上昇となっていましたが、週末中国は米国に対し、金曜日トランプ大統領が署名した2020年米国防衛予算の項目に香港におけるデモ参加者の支持および台湾との軍事協力が含まれていることから、強い抗議を示したことも要因となっていました。

そして、翌日から多くの市場参加者がクリスマス休暇に入る中で、株が高止まりしていることからも、ヘッジとしての金の役割もあり堅調に推移していました。

24日金相場は、株価がクリスマス休暇前の利益確定などで多少下げる中で、トロイオンスあたり1500ドルを超えた後、前日比1%高い1499ドルで終えていました。

同日の上げは、昨日の米耐久財受注が予想を大きく下げたことで、さらなる金融緩和観測が広まったことからのようですが、それに加え、北朝鮮が米国に対し、非核化交渉の打ち切りも辞さない強硬路線に転じる意向であるとの見方が浮上していることも要因になっていました。

27日金相場は、米株価が史上最高値を再び更新する勢いの中で、ドルが対主要通貨で下げており、トロイオンスあたり1511ドルとほぼ2ヶ月ぶりの高さへと上昇していました。

金相場は前日レジスタンス(上値抵抗ライン)の1500ドルを超えたことで、年末の薄商いの中で勢いがついて上昇していました。

また、この週に入り金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が6.4トン上昇し892トンと一月ぶりの高さへ上昇していたことからも、年末を前にポートフォリオのリバランスも起きていました。

また、ドル安は米中貿易合意第一弾の署名への期待から、リスク思考で米国債券に売りが出て米長期金利も下げていること、また欧州委員会のフォンデアライエン委員長がEUは英国との新たな通商交渉について、交渉期限の延長が必要になる可能性があるとの認識を示すなど、EU側が交渉に柔軟な姿勢を示したことが好感されてポンドとユーロに買いが強まり、ドルを相対的に下げていました。

31日金相場は、3週間ぶりの下げ幅を見せたS&P500種同様に世界株価が利益確定もあり下げる中で、トロイオンスあたり1515ドルへ上昇して終えていました。

同日はアジア時間に日本を含む多くの株式市場が閉めていることからも薄商いの中で、アジア株が下げる中で金はさらなる上昇を見せ、トロイオンスあたり1521ドルと3ヶ月ぶりの高さを推移していました。

なお、日本円建てではgあたり5315円とやはり3ヶ月ぶりの高さ、また、これは今年9月に付けた40年来の高さとなっていました。

2日金相場は昨年年初から18.8%上昇し、21世紀に入り7番目の高い上げ幅となりましたが、同日も米国株価が史上最高値を更新する中で、7年ぶりの高さのトロイオンスあたり1527ドルへと上昇していました。

この株価の上げは、年末にトランプ大統領が1月15日に米中貿易協議の部分合意の署名を行うと発表したこと、また前日中国中央銀行が預金準備率を引き下げると発表したこと等が好感されていました。

その様な中の金の上げは、薄商いで価格変動が起こりやすい環境である中で、ポートフォリオのリバランス、テクニカル的な上げがあったようですが、それに加えて前日北朝鮮が核・大陸間弾道ミサイル実験の一時停止を撤回すると宣言し、党中央委員会総会での金氏の発言として「世界は遠からず、朝鮮民主主義人民共和国が保有することになる新しい戦略兵器を目撃することになるであろう」と述べたことや、年末にイラクバクダッドで、米国による親イラン派勢力空爆に抗議する人々が米大使館を襲撃したことを受けて、トランプ大統領が襲撃はイランが「画策した」と非難し、同国は「全面的な責任を負うことになる」と警告したことで、地政学リスクが意識されたことも要因となっていました。

3日金相場は、中東情勢への懸念からリスクオフ傾向が強まる中で、トロイオンスあたり1552ドルへ上げて4か月以来の高さで終えていました。

この中東情勢とは、米軍がイラクの首都バグダッドでイラン革命防衛隊の精鋭組織の司令官を殺害したことからですが、このために原油価格も上昇し、他の安全資産の日本円と米国債も買われていました。

また、同日発表された米国ISM製造業景況指数が10年半ぶりの低さへ下げていたことも、金を押し上げることとなりました。

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションのネットロングポジションは、先月24日に休暇前のポジションの調整が行われる中で、パラジウムを除き全て増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションのネットロングポジションは前週比11%増の756トンと、3ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比49%増の8487トンとやはり3ヶ月以上ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比6.78%増の65トンと2016年8月以来と、3年4ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比10.6%減の38トンと3ヶ月ぶりの低さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、先週2.1トン増加し895トンと一月ぶりの高さとなっていたこと。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高も、1.62トン増(0.45%)増で361トンと、2週間ぶりの高さとなっていたこと。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、先週0.32%減少して、引き続き11月6日から増加していないこと。

  • 金銀比価は先週84台で推移していたものの、金曜日には84.98へと上昇していたこと。

  • また、今週の上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差のプレミアムは、週間平均で4.81と前週の6.24から下げていたこと。

  • コメックスの取引量は先週金曜日に前日比65%増と11月末以来の高さへ上昇し、週間平均も前週比49%増と休暇明けの高い取引量へと戻っていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はすでに中東での地政学リスクで市場が大きく揺れていますので、今週もこの関連ニュースへ市場は注目することとなります。

その他主要経済指標では、金曜日に米雇用統計が発表され、水曜日にはその先行指標と見られているADP全国雇用者数が発表され注目されます。

また、本日のドイツ、ユーロ圏、英国、米国のMarkitサービス業PMI、またコメックスの貴金属先物オプションのデータは先週1日が祝日であったために、1営業日遅れ本日発表となります。火曜日はユーロ圏の消費者物価指数、米国貿易収支とISM非製造業景況指数、木曜日は中国の消費者物価指数、ドイツの鉱工業生産、ユーロ圏失業率、米国新規失業保険申請件数などとなります。

なお、今週木曜日にはFOMCメンバーの数人の講演も予定されていますので、今後の金融政策に関するコメントへも注目されます。

ブリオンボールトニュース

英国主要経済サイトのThis is Moneyサイトで年末年始に弊社リサーチ取締役のエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

専門家による2020年の金相場予想(1月4日付け)

このサイトでは弊社で年末に行った投資家へのアンケートの結果を取り上げています。

ここで、昨年ポンド建てで15%上昇し、4年連続の上げを見せた金相場と紹介した上で、さらなる上げが予想されているとして弊社のアンケートで、5人に4人が今年金価格は10%以上の上げを見せるとし、過去3年でもこの上げ幅を最も多くの人々が信じているとのこと。また、6分の1の人々が30%の上昇を見ているとも伝えています。

そして、弊社リサーチ取締役のエィドリアン・アッシュのコメント「昨年の上昇の背景は投資需要と中央銀行の購入があり、世界最大1位と2位の中国やインドの需要の下げを十分に軽減した」とし、「今年の背景は、高止まりしている株価の調整等の経済リスクや米国とイランの緊張の高まり等の地政学リスクへの『懸念』となるだろう」を取り上げています。

そして、米大統領線が金融リスクを高める可能性があり、米金融市場アナリストには米株価の暴落を予想して、トロイオンスあたり2000ドルから3000ドルという人々もいると伝えています。

金相場は2019年にポンド建てで史上最高値を記録、それでは2020年は?(12月27日付け)

昨年は9月にポンド建てでは金価格はトロイオンスあたり1282ポンドと史上最高値を付けていました。この2020年の行方について、米国とイランの緊張が高まる前に、この記事ではまとめています。

ここでエィドリアンは、金利の低下が金相場上昇の背景にあるとし、約17兆ドルを超える国債利回りが0以下であり、新たな金購入を進めて昨年9月の史上最高値へと押し上げたとしています。

そして、多くの富裕層は金を裏付けとしたETFのような金融商品ではなく、現物を貴金属専門保管場所で保有している。これは、金融システムへの懸念の高まりで、金を金融システムの保険としてポートフォーリオのリバランスで購入しているのではないかとしています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週も日本に入っていますのでお休みとさせていただきます。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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