金市場ニュース

ニュースレター(2019年5月17日)米中貿易戦争泥沼化の中でドル高から金は大きく下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1281.03ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.5%下げています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.48ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から2.1%下げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上で820.06ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から4.3%下げています。

今週も米中貿易協議の行方が注目されていましたが、まず中国の報復関税が伝えられると、金は1300ドルを超えたものの、米中共に協議継続の意向が伝わりその上げ幅を失い、本日は中国のコメントや欧州や英国の動きもドル高を支えて更なる下げを見せています。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日は、ロンドンお昼過ぎに中国が報復関税として対米600億ドル分に最大25%を課することを発表し、EUも18日米国が自動車へ関税するかを決定することに対して報復の追加関税のリストを準備していることが伝えられたことで、金相場は大きく上昇を始め、トロイオンスあたり1300ドルを超える1か月ぶりの高さへ上昇していました。

同日は既に貿易戦争の悪化の懸念から、人民元が10か月ぶりの低値へと下げ、アジアと欧州株は共に全面安となっていました。

火曜日世界株価が前日の下げを多少ながら戻したことで、金相場はアジア時間にトロイオンスあたり1303ドルまで上昇した後に1296ドルへと下げて終えていました。

この下げは、トランプ大統領がツィートで米中協議への楽観的なコメントを出していたことや、中国が協議を続けると述べたことも伝わり、多少ながら投資家心理が和らいだことからでした。

また、ドイツの指標の悪化やイタリア財政問題などもユーロを弱めてドルを押し上げていました。

水曜日金相場は、ドルインデックスが3週間ぶりの高さへ上げ、ドルが対人民元で3か月ぶりの高さへ上昇する中、トロイオンスあたり1300ドルまで一時上昇しましたが、その後1296ドルで終えていました。

ドルと金が共に上昇していた背景は、同日発表の中国の小売売上高と鉱工業生産が共に予想を下回ったこと、そして米国の小売売上と鉱工業生産もまた、それぞれ予想の0.2%と0%を下回り-0.2%と-0.5%であったことから、米中貿易摩擦の悪影響への懸念から安全資産として買われたことからでした。

なお、やはり安全資産と見なされている日本円は対ドル15週ぶりの高さへと上昇し、米国債10年物も買われていたことから、その利回りは7週間ぶりの低さへ下げていました。

また、英与野党のブレグジットを巡る話し合いが平行線をたどっていること等からもポンドが対ドル3か月ぶりの低さへ下げ、ユーロもドイツ関連指標の悪化などもあり、2週間ぶりの水準へ弱含んでいたこともドルを押し上げていました。

木曜日金相場は、株価が全般上昇する中で、トロイオンスあたり1285ドルと週の始めの水準へと押し戻されていました。

同日の3日連続の米株価の上昇は、シスコシステムズとウォルマートが相次ぎ好決算を発表するなど、投資家心理が改善したことからですが、同日発表された住宅や雇用関連の米経済指標が市場予想を上回ったことも後押しすることとなりました。

ただ、米政府が中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)との取引を禁止する措置を発表したことから、米中貿易摩擦関連の懸念は残っており、金のサポートとはなっていました。

しかし、メイ英首相は同日、与党・保守党の議員委員会「1922年委員会」と会談し、6月上旬に辞任時期を表明することで合意したことが伝えられ、それを前に離脱派大物議員のボリス・ジョンソン元外務大臣が次期首相に立候補することが伝えられ、ハードブレグジットへの懸念からポンドが3ヶ月ぶりの低さへ対ドル下げていたことも、ドルを押し上げることとなりました。

本日金曜日は、ドルインデックスが21週ぶりの高さへと上昇していることからも、トロイオンスあたり1276ドルと2週間ぶりの低さへと下げています。

このドル高は、中国商務部の報道官が本日アジア時間に、貿易交渉での米国の姿勢を厳しく批判したと伝わったことから、米中関係の悪化を警戒し、安全資産のドルが買われていた模様です。

その後、トランプ米大統領が自動車への追加関税を巡る判断を最大180日先延ばしすると発表したことから、米国株は米中対立の深刻化で反落して始まっていましたが、一転上昇をしており、本日発表のロイターミシガン大消費者信頼感指数が15年ぶりの高さへと上昇していたこともドル高を支えている模様です。

また、イタリアのディマイオ副首相が本日、来週の欧州議会選挙後に主要機関の首脳の顔ぶれが変わるのは間違いないとの見解を示し、イタリアが欧州連合(EU)の財政規律違反で制裁を受けることを懸念していないと述べる等、欧州懐疑派台頭によるEUの今後への懸念からもユーロが下げていること、そして英国のブレグジットを巡る与野党協議は合意に至らず決裂したことが伝わり、英国ポンドが下げていることもドルを押し上げています。

                                                                      

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週月曜日に株価が急落する中で3.2トン増加したものの、水曜日にこの量減少し、木曜日の段階で733トンと先週末同様に昨年10月9日以来の低い水準となっていること。

  • 金銀レシオは、今週は87を超る高水準で推移し、火曜日は87.94と1993年4月5日以来(26年ぶり)の高さを再び更新していたこと。

  • 今週木曜日トランプ米政権がイラン産原油の全面禁輸に乗り出し、イランは核兵器開発につながるウラン濃縮の拡大に踏み切る可能性を示唆したこと。

  • 米国務省は今週水曜日にイラン情勢の緊張の高まりから、イラクの緊急性の低い業務の大使館職員の出国を命じたこと。

  • コメックス貴金属先物・オプションの資金運用のポジションは、先週火曜日は週末にトランプ大統領が中国製品への関税率を10%から25%へ引き上げることを発表した後でしたが、同日は金を除きすべての貴金属で弱気ポジションが増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日に2週連続で増加し、そのポジションも88.9%増の61トンと安全資産への逃避傾向が見られていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6週連続でネットショートで、そのポジションも4.5%と多少ながら増加し2316トンとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションはネットロングであったものの、そのポジションを3週間連続で減少させ、先週火曜日は16%減少の28.5トンとしていたこと。

  • そして、パラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットポジションもネットロングであるものの、6.64%減の28.9トンとなっていたこと。

  • 月曜日から始まったロンドンにプラチナ業界関係者が一堂に会するプラチナウィークを前に、ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシルが、プラチナの供給過多が、プラチナETFの需要増で3月に発表されたものから大幅に減少していることを伝えたこと。

  • プラチナ業界大手のJohnson Mattheyのレポートでは、工業用と投資需要の増加から、2019年は供給過多から供給不足となることを予想していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週も引き続き米中貿易協議関連ニュースに市場を注目することとなります。またそれに加え、欧州では23日から26日にかけて欧州議会選挙が行われ、欧州懐疑派の優勢が伝えられていることからも、市場は注目することとなります。

その他経済指標においては、月曜日は日本の第1四半期GDP、火曜日はパウエルFRB議長とカーニーBOE総裁発言、ユーロ圏の消費者信頼感、米国中古住宅販売件数、水曜日はドラギECB総裁発言、英国消費者物価指数、FOMC議事録要旨、木曜日はドイツの第1四半期GDP、ドイツとユーロ圏と米国の製造業PMI、米国新築住宅販売件数、金曜日は日本の消費者物価指数、英国の小売売上高、米国の耐久財受注等となります。

ブリオンボールトニュース     

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週は先でも触れていますが、ロンドンにプラチナとパラジウム業界の関係者が一堂に会するプラチナウィークが行われ、私も参加してきましたのでその様子をお伝えしましょう。

プラチナウィークは、年に一度5月の3週目に行われます。ここでは、ロンドン・プラチナ・パラジウム市場協会(LPPM)が主要イベントを行うとともに、業界大手がセミナーや夕食会などを行います。

私は、主要イベントであるLPPM主催のセミナー、カクテルパーティーとディナーに参加すると共に、今回はアングロ・アメリカン社がスポンサーのWemen in PGM’s「プラチナ・パラジウム業界の女性の会」の第一回目の会合と、主要貴金属コンサルタント会社のMetals Focus社のネットワーキングイベント、そしてTOCOMのブレックファーストミーティングに参加してきました。

今回のLPPMのセミナーでは、一部では上海黄金交易所の代表者Wang Zhenying氏がプラチナやパラジウム市場の将来について話されました。ここで、中国は世界のプラチナ需要の26%、パラジウム需要の23%強を占め、将来的には人口の増加と生活水準の上昇、環境問題の重要さ、そしてこれらの取引を行っている中国の銀行は未だ限られていることからも、中国市場は成長を見せると話されました。

また、今年はHeraeus社の医薬品材料に携わるFrederic Buhler氏がプラチナのがん治療の化学療法での使用と今後について話され、とても興味深かったです。

既に数種の抗がん剤としてプラチナは利用されており、その量は年間で2400キログラムと全体需要の1%に満たないですが、年間で5%の増加を見せているとのことです。

その後、プラチナの南アフリカにおける状況をImpara PlatinumのEmma Townshend氏が話され、南アフリカのプラチナとパラジウム市場は、これまでピクニック(安定した状況)とパニック(不安定な状況)を繰り返してきたものの、政情や労働環境が改善されるに従い、市場全体がPrudent(慎重な)ものへと向かう、もしくは向かうことを祈ると結んでいました。

最後に、今回が最後になるかもしれないTOCOMのブレックファーストミーティングについても簡単にご紹介しましょう。

今回はTOCOMの濱田社長がご都合でいらっしゃれなかったために、小野里光博執行役が代表でご挨拶をされ、その後LPPMの会長のJohn Metcalf氏、ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)のCEOのPaul Wilson氏が挨拶、そして業界の今後を話し、Metals FocusのNikos KavalisとStandard Chartered BankのSuki Cooper氏が今後の需給と価格の見通しについて語りました。

これを簡単にまとめると、NikosとSukiは共にプラチナの供給過多とパラジウムの供給不足は続くとし、2019年の平均価格予想をSukiはプラチナはトロイオンスあたり874ドルから925ドル、パラジウムは1408ドルとし、Nikosは米国の金利引き下げの可能性があることからも、プラチナは年後半に1000ドル、パラジウムは1600ドルを試すとしていました。

そして、最後にTOCOMの国際室長の関良一氏がTOCOMにおける取引状況を説明されました。その始めに、プレゼンテーションの表紙に桜を使った理由として、桜は日本人にとって4月が新学期や新年度であることから、新たなスタートも象徴していると話され、TOCOMとJPXの合併、令和の始まり、そしてTOCOMや日本の金業界を支えてきている、しかもTOCOMブレックファーストミーティングにとっては欠かせないICBCスタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏にとっても、ICBCスタンダードバンク東京支店が年末に閉鎖されることとなり、新たなスタートでもあるとお話をされていました。

日本の貴金属市場は一つの節目なのかもしれませんが、それを日本人の心に響く言葉でお話されたことからも、私にとっては心に残るスピーチとなりました。

プラチナウィークのLPPM主催のナショナルギャラリーで行われたディナーの写真を添付させていただきます。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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