金市場ニュース

ニュースレター(2019年3月29日)長短金利逆転からの景気後退懸念が一服する中でドル高が戻り金は下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1295.42ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.2% 下げています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.10ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から2.3%下げています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上で848.17ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.6%下げています。

今週金相場は3週間ぶりに週間の下げを記録することになりそうです。これは、米国長短金利の逆転で広がっていた景気後退への懸念が一服する中で、ドルが再び様々な要因で強まることによって押し下げられたことからでした。それでは、一週間の金市場の動きを日々追ってみましょう。

月曜日金相場は先週終値から0.5%上昇しトロイオンスあたり1321ドルで終えていました。これは、先週金曜日に米国10年物国債と3か月物国債の利回りが逆転し、この現象は景気後退の前兆とされていることから、株式市場が急落し安全資産への資金の逃避がみられていることからでした。

この背景は、先週FRBが経済の先行きに慎重な姿勢を見せ、金曜日に発表されたドイツの製造業PMIが3か月連続の経済縮小を示していたことからでしたが、先週金曜日には金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が0.4%増で、2週連続の週間の増加となっていました。

火曜日金相場は、市場の懸念が後退する中でドルと株価が上昇し、トロイオンスあたり1317ドルへ下げて終えていました。

これは、前日の株価市場の大幅な下げの調整で上昇していることから、金市場は売りが進んだことからでした。

水曜日金相場はドルが強含む中でトロイオンスあたり1310ドルへと下げていました。

ドルが強含んだのは同日発表の米貿易収支でその赤字幅が縮小したことで今年第一四半期のGDPを支えるという見方が広がったことから、そして、同日ドラギECB総裁が「必要であれば利上げをさらに遅らせること可能」とハト派的コメントを出したことが伝えられたことも、ユーロを弱含ませドルを押し上げることとなりました。

しかし、米長期金利は2.35%と1年3か月ぶりの水準まで下げており、警戒感もあり米株価は全般下げていました。

木曜日金相場は、ドルが強含む中でトロイオンスあたり1288ドルと今月8日以来の低値を付け、前日終値から1.7%、先月末の10週間ぶりの高さからは2.7%下げていました。

なお、先週史上最高値を付けたパラジウムはこの最高値から12%下げ、銀は先月末の昨年6月以来の高値からは8.5%下げのトロイオンスあたり15.05ドル、プラチナは先週の9か月ぶりの高さから4.3%下げてトロイオンスあたり839ドル前後を推移するなど、貴金属はそろって大きく下げることとなりました。

この貴金属の下げは、ドルが強含んだことが要因でしたが、その背景は米中貿易協議について、米国家経済会議のラリー・クドロー氏がトランプ政権は中国と何週間でも何か月でも交渉する準備があると述べたことが伝えられ懸念が広がったことから、また、同日発表のドイツ消費者物価指数が予想を下回ったことでユーロが下げたこともドルを押し上げたこと、そしてトルコやアルゼンチン等の新興国経済への懸念が再燃したことが要因ともされています。

なお、市場注目の米第4四半期GDPは2.2%と予想2.4%を下回ったものの、市場予想は下回るものであったことから、この市場への影響は限定的となりました。

本日金曜日、金相場は株価が全般上昇しドルも高止まりする中で、前日から多少上げてトロイオンスあたり1295ドル前後を推移しています。

株価は米S&P500種は2009年以来の最高の四半期を記録するなど、全般強さを見せていますが、これは、米中貿易協議への楽観的な見方が広がり、また本日発表のミシガン大学消費者信頼感指数や新築住宅販売件数等が予想を上回ったこと等からとのことです。

なお、本日注目の英国議会におけるメイ首相のEU離脱協定案を採決は、再び否決されました。その数は286対344と、この差は58と前回の75からは狭まっていますが、デットラインが迫っていることもあり、このニュースを受けてポンドが弱含み、ポンド建て金相場がトロイオンスあたり995ポンドまで上昇しており、ポンド建て金相場は週間では上昇して終えることになるようです。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに3.2トン増加し784トンと3週間連続で週間の増加となる様相を見せていること。

  • 先週火曜日のコメックス貴金属先物・オプションのネットロングポジションもパラジウムを除き増加していたこと。

  • トランプ大統領のロシア疑惑は共謀を「立証できなかった」ことが伝えられたこと。

  • 今月行われた日銀金融決定会合の主な意見が公表され、物価上昇のモメンタムが失われる懸念があれば「断固とした追加緩和を行うべき」とされていたこと。

  • メイ英首相はEU離脱案可決した場合辞任すると述べたこと。

  • トルコ大統領選を31日に控えてトルコリラが乱交化する中で、政府はリラの供給制限を行っていると伝えられていること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週の注目指標は金曜日に発表される米国雇用統計で、その先行指標とされている水曜日の米ADP全国雇用者数が最も重要となります。

また、本日英国離脱協定案は議会で否決されましたが、4月12日のデットラインが近づく中で、英国議会の動きにも市場は注目をし、今週中国で行われている米中貿易協議が来週ワシントンで継続開催されることからもこの動きにも注目が行くこととなります。

その他では、月曜日の中国、ユーロ圏、米国の製造業PMI、ユーロ圏の失業率、消費者物価指数、米国小売売上高とISM製造業景況指数、火曜日の米国耐久財受注、水曜日の中国のサービス部門PMI、ユーロ圏小売売上高、米国ISM非製造業景況指数、木曜日のECB理事会議事要旨等となります。

ブリオンボールトニュース

今週は金相場はドル高から押し下げられていますが、今週も弊社のリサーチデータおよびリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが主要メディアで取り上げられています。

日経Quickニュース「離脱混乱にも慌てない?英の投資家 金への投資細る、焦るEU勢は急増

いまだ先行き不透明な英国EU離脱の中、英国投資家が金投資を減らす中で、経済懸念が高まるEUからの金投資が急増しているというデータを紹介いただいています。

ファイナンシャルタイムズ「危機時に投資家は金へ向う

この記事では、弊社を利用するIT業界で働くクリス・ホール氏が、英国のEU離脱への懸念から金投資を始め、当初は金貨を購入していたものの、費用を考慮しブリオンボールトでの投資へ移行して、すでにホール氏の投資総額の3分の1を金へ分散したと取り上げています。

そして、弊社の顧客アンケートによると、投資家の20%が価格が上昇することを予想し、全体の3分の1がその背景が地政学リスクとし、5分の1が株価の動きが金の動向を決めると回答したことを紹介し、エィドリアンの「1970年から10年間の8年は、FTSE全株価指数がトータルリターンで下げた際に上昇している。」というコメントも、他のアナリストやファンドマネージャーの金をリスク分散目的で持つ金を保有するメリットを説明するコメントと共に取り上げています。

そして、金の投資方法の一つとして金のETFや金鉱株などと共に、現物投資として弊社を紹介しています。

ブルームバーグ「ロシア中銀が米国ドルから金へと(外貨準備の比率を)移行

この記事では、ロシア中銀が過去10年間い金準備を4倍に増加させ、2018年はその中でも著しい伸びを見せ、その傾向が今年2月に11月以来の多さの百万オンス増加させるなどと継続しているとし、これは米国ドル資産から移行しているためだと紹介しています。

そして昨年はマクロン大統領が欧州企業は米国通貨に依存し過ぎであると警告する中で、ユーロ圏の中央銀行も同様な動きを見せたことにも触れ、エィドリアンの「もしロシアの中銀が昨年金を購入し、価格を支えなければ、金市場は昨年10年来の最悪の年となったことだろう。しかし、この傾向は一般となっているために、よほど金購入を増加させない限りは金価格への影響は強く出ないだろう。」というコメントで結んでいます。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

ロンドン便り

今週も英国のメディアは、英国のEU離脱のデットラインが迫る中でブレグジット関連ニュース一色となっていますが、一つのニュースが心に留まりましたのでご紹介しましょう。

それは、第2次世界大戦の勝利達成まで英国を率いた元首相で、最も偉大な英国人とも英国の人々から尊敬されているウィンストン・チャーチルの遺品がごみ置き場で見つかり、高い価値があるものと評価されたというものです。

この遺品は、BBCの人気番組である「アンティーク・ロード・ショー」という、1979年から毎週日曜日に放映されている個人所有のアンティークを評価してもらうという番組に持ち込まれたものです。

先週日曜日は英国の東ロンドンのEltham Palaceという場所で行われ、デビット・ローズというごみ置き場で働く方が、チャーチルのシェフとして働いていた女性が保有していたと思われる、チャーチルのトップハットと葉巻とシェフの女性が息子さんに宛てた、チャーチルの生活ぶりが細かく書かれている200通の手紙、そして彼女に送られたチャーチルの署名入り写真を価値を評価してもらうために持ち込んだのでした。

これらはすべて彼の働くごみ置き場に置かれていたもので、彼は好きなものは持ち帰って良いといわれているとのこと。

そして専門家が精査したところ、確かにチャーチルの遺品であるとのことで、その評価額は1万ポンド(約144万円)とされていました。

彼が働くごみ置き場の場所は、番組でも明かされていなかったようですが、このニュースは他のメディアでも取り上げられる画期的なものであったようです。

先行きが全く見えないブレグジットのニュースに日々囲まれる中で、15年間このごみ置き場で働いていると朴訥と語る男性が見つけたチャーチルの遺品が、高い価値があることを聞いた時の男性のリアクションは、心温まるものでしたのでご紹介させていただきました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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