ニュースレター(2018年9月28日)FOMC後の良好な米経済指標がドルを強め金はレンジを抜けて下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1187.25ドルと、前週金曜日のLBMA金価格のPM価格(午後3時)から0.9%下げています。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.31ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.1%下げています。
今週は市場注目のFOMC翌日の米耐久財受注でレンジを超えて下げることとなりましたが、本日発表の経済指標は予想を下回るものであったことからも、月末四半期末を控え昨日の下げの調整もあり、下げ幅を戻しつつあります。まずは今週の動きを曜日ごとにお伝えしましょう。
週明け月曜日は、今週注目のFOMCを待つ中トロイオンスあたり1200ドルを挟み狭いレンジでの動きとなっていました。
その間、ポンド建て金相場は、前週英国のEU離脱への懸念によって急落していたポンドが、国民投票再実施論が議論される中で懸念が後退して戻す中、0.5%下落していました。
火曜日金相場は、同日から行われ翌日発表のFOMCを待つ中でやはりトロイオンスあたり1200ドル前後の狭いレンジでの取引となっていました。
この金のボラティリティは過去22日間にかなり低くなっており、LBMA価格では8月24日から2.1%の動きで、過去50年間の典型的な5.7%をかなり下回っていました。
水曜日金相場は、同日ロンドン時間午後7時に発表されるFOMC後の政策金利と7時半からのパウエル議長の記者会見を待つ中、トロイオンスあたり1200ドルを割って緩やかに下げていました。
その後発表された政策金利では予定通りFF金利誘導目標レンジは0.25%利上げの2.00から2.25%となり、年内もう一回の利上げも示唆されていました。そして、声明では「金融政策のスタンスは依然として緩和的」との記述を削除するなど、ほぼ想定内の内容となっていました。
また、パウエル議長の記者会見で、今後も緩やかな利上げが行われることが示唆されたこともあり、ドルが下げる中で金相場は発表後一時上昇するなどと影響は限定的となっていました。
木曜日の金相場はトロイオンスあたり1181ドルと6週間ぶりの水準まで一時下げることとなりました。
これは、同日発表の今年第2四半期のGDPは前期比年率4.2%増と予想通りではあるものの4年ぶりの高成長が確認され、8月の耐久財受注額も4.2と市場予想2.0を大幅に上回ったことから、ドルが2週間ぶりの高さへ強含む中金相場は下げ幅を広げることとなりました。
本日金曜日は、昨日のイタリア政府の経済財政計画で財政赤字幅が膨らんだことから債務懸念から欧州株が売られ、米国株にも波及する中で、金相場は昨日の下げから多少上昇していました。
その後発表された個人消費支出(PCE)コア価格指数、シカゴ購買部協会景気指数とミシガン大消費者信頼感指数が全て予想を下回る数値であったこともあり、週末、月末、四半期末の調整の動きもあるようでロンドン午後4時半にトロイオンスあたり1190ドルを超えて上昇しています。
なお、S&P500種は四半期毎では2013年以来の最大の上げ幅となる模様です。
その他の市場のニュ―ス
- 今月半ばに金銀比価が85と1993年9月以来の高い水準(金が割高、銀が割安)に達していたものの、今週金が横這い下落状態である中で銀は上昇し横這いであることからこの数値が83を割って下げていたこと。
- 金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が今週木曜日までで全く変動がなく、742トンと2016年2月16日以来の低い水準で、今年7月23日から引き続き全く増加していないこと。
- 先週末に発表されたコメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日に米中貿易戦争への懸念が後退しドルが弱含む中で、金を除きすべての貴金属でネットショートが減少(もしくはネットロングが増加)していたこと。
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金先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、10週連続でネットショートで、そのポジションは4.15%増の231トンと前々週の史上最高値の245トンへと近づいていたこと。
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コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日にやはり10週連続でネットショートだったものの、そのポジションは2.6%減少し7007トンとなっていたこと。しかし、この水準は未だ史上最高値に引き続き近い水準。
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コメックスのプラチナの先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日24週連続でネットショートだったものの、そのポジションは、史上最高値から2週連続で減少して25%減の30トン。
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コメックスのパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングは先週火曜日に12.96%増の17.45トンだったこと。
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資産家ジョン・ポールソン氏が金下落への歯止めをかけるのが目的で15の機関投資家と共に同盟を結成したこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
最大の注目指標は金曜日発表の米雇用者統計(非農業部門雇用者数、失業率、平均時給等)とその先行指標と見られている水曜日発表のADP全国雇用者数となります。その他、月曜日のドイツとユーロ圏と英国と米国の製造業購買担当者景気指数(PMI)、米ISM製造業景況指数、火曜日のユーロ圏卸売物価指数、水曜日の米ISM非製造業景況指数、木曜日インド中銀政策金利等となります。
ブリオンボールトニュース
今週も主要メディアで弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュがインタビューに答えています。
BBCワールドニュース「バリック・ゴールドによるランドゴールド・リソーシズの買収合併について」
今週産金で世界最大手のカナダのバリック・ゴールドによるやはり産金大手のランドゴールド・リソーシズの買収が発表されましたが、この件について弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュがBBCワールドのインタビューに答えています。
ここで、2011年に金相場がピークを打って以来の最大の合併規模であること、金算出費用が新たな金鉱が見つかっていないなど、産金会社が抱える問題にも触れ、ランドゴールドがアフリカを中心に運営されていることからも、バリックのアフリカ進出へのコミットメントを表すものとしています。
このポッドキャストで22分40秒からお聞きください。
ブルームバーグ「7つのコモディティーで裏付けされる仮想通貨をTriberiusが提供」
この記事では弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュがインタビューを受け、「これまでも12を超える会社が金属を裏付けて仮想通貨を発行してきているが、どの仮想通貨も特に軌道に乗ってはいないようです。そして、これらの会社は特に問題となっていないことを解決しようとしているのです。そのために費用をかけて分散台帳技術を使う必要のないものなのです。」と答えています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週は英国北西部リバプールで行われていた英国最大野党の労働党大会でのことが英国メディアで広く伝えられていました。
ここでの最も注目されていたのは、党としてEU離脱に関する国民投票を再実施することを政府に求めるかどうかということでした。
労働党のEU離脱相のキア・スターマー議員はその可能性を示唆しましたが、労働党内にも堅固な離脱派いることから、またジェレミー・コービン党首自身も国民投票の再実施には否定的であったことから、結果的にはメイ首相がEUと合意する離脱案が条件を満たさない内容となったあ場合に同案に反対すること、国民投票の再実施を選択肢として維持することは盛り込まれるとしています。
そして、議会でEUとの合意が否定されるか、政府がいかなる合意も達成できなかった場合は、総選挙を求めると述べています。ちなみに、メイ政権がまとめEUとの合意を目指しているEUとの将来関係の白書(チェッカーズ案)には反対をすることを明言しています。
また、労働党大会では2050年までに国内の二酸化炭素排出をゼロにすること、無料保育の対象を4歳以上から2歳以上に拡大することも言及していますが、これを実施するための財源が明確でないことはメディがが伝えています。
今週日曜日からはバーミンガムで保守党の党大会が始まります。既に本日は前外相のボリス・ジョンソン氏がメイ政権のチェッカーズ案に対抗する案の概要を発表するなど、党大会が荒れる可能性も見えています。
来年3月末に迫る英国のEU離脱で合意の無い離脱を避けるためには、遅くとも11月にはEUと何らかの合意が必要とのこと。そのためには、少なくとも与党保守党内が結束すること、そして可能であれば労働党の協力も得ることが必要かと思いますが、労働党大会では党内をまとめることも難しい状態でそのような可能性は皆無でした。
そこで、まずは来週の保守党大会でEU離脱交渉にプラスとなる何らかの進展があることを願ってやみません。