ニュースレター(2018年8月3日)1217.41ドル:主要中央銀行の政策金利発表発表後、予想を下回る米雇用統計でドル高が一服
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1217.41ドルと、前週金曜日のLBMAの金価格のPM価格(午後3時)から0.5%下げています。この水準は金曜日のLBMAのPM価格としては3週続けて今年最低を付けており、過去10週間で8回目の週単位での下げとなっています。なお銀価格においては本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり15.36ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同水準となっています。
月曜日金相場は、米株価が下げドルが弱含む中、トロイオンスあたり1225ドルへと一時上昇することとなりました。
米株価が下げていたのは、翌日のアップルの決算を待つ中、上昇をし続けているハイテク株に調整が出ていることからとのことでした。また、今週は主要中央銀行の金融政策発表と米雇用統計の他にも市場を動かす指標が多く発表されることからも、模様眺めの市場ではあったようです。
火曜日金相場はロンドン時間午後にトロイオンスあたり1228ドルまで一時上昇後、1224ドルで終えていました。
同日はまず日銀の金融政策発表で長期金利の変動を容認したものの「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」としたことで、日本国債の金利が昨年11月以来の水準へ下げ、円が下げることでドルが強含み金は下落で始まっていました。
その後、米国と中国が関税に関して非公式の話し合いがもたれ、交渉の必要があるという認識で一致していると伝えられ、中国売上高の高い銘柄の株が上昇する中、コモディティ全般が上げる中で金は上昇をすることとなりました。
水曜日金相場は、ほぼサプライズがないであろうと予想されているFOMCでの発表を待つ中、米長期金利が10週ぶりに3%へと上昇しドルも強含んでいたために、トロイオンスあたり1218ドルへと下げていました。
これは、前日日銀が長期金利の変動を容認する姿勢を示したことから、許容範囲を試す国債売りで利回りが上昇し、米国債にも売り圧力がかかったことからでした。また、金曜日の米雇用統計の先行指標と見られている同日発表されたADP全国雇用者数が予想を上回る数値であったことも、この流れを強めることとなり、さらにトランプ政権の減税や財政支出拡大からも、資金不足を埋める米国債増発懸念も金利上昇の要因となっていた模様です。
なお、前日米国と中国が関税に関して非公式の話し合いを行っていると伝えられ、米中貿易戦争への懸念が後退していましたが、同日米国が中国製品への関税を10%から25%へと引き上げる可能性があると伝えられたことから、米株式はアップルの好決算で上昇したナスダックを除き下げていました。
そして、連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が予想通り据え置かれたことが発表され、経済先行きには自信を示し、近い将来の利上げを示唆してたことから、この発表を受けて、一時金相場はトロイオンスあたり1221ドルへと上昇をしたものの、その後1217ドルまで下げて終えていました。
木曜日金相場は、ドルインデックスが95目前まで上昇する中、7月19日以来の低値の1213ドルまで下げることとなりました。
これは、発表されている米国企業の決算が良好であること、前日のFOMCの声明で米国経済は力強いとの見解が示されたこと等からのようですが、トランプ米政権による中国製品への関税引き上げが伝えられていることからも、米株価は下落で始まっていました。
なお、同日注目のイングランド銀行の政策金利発表は予想通り0.25%上げの0.75%で全会一致で決定される等タカ派的内容の声明でしたが、ポンドは一時上昇後に対ドル大きく下げることとなりました。
またトルコリラは前日米国が米国牧師がテロ組織を支援したとして長期拘束されていることから、トルコ閣僚に経済制裁を科し、NATO諸国へも要請したと伝えられたことから下落を続けていました。
そして、同日プラチナはトロイオンスあたり830ドルへと同日の低値から2.5%急上昇することとなりました。これは、南アフリカの鉱山会社のImparaが、費用削減のために減産と人員削減を発表したことがきっかけとなった模様です。
金曜日は、市場注目の米雇用統計が発表され、予想の19万人を下回る15.7万人であったことから、ドルが弱含み金相場はトロイオンスあたり15ドルほど上昇し、ロンドン時間午後3時に1218ドルまで上昇していました。
なお、失業率は予想通り3.9%で前回の4.0%から改善し、平均時給は前年比2.7%と予想と前回の同水準となっていました。
ところで、トランプ政権が1日に2000億ドル相当の中国製品に課す関税の税率を当初の10%から25%へ引き上げることを提案していましたが、同日中国政府は、報復措置として米国からの輸入品600億ドル相当に最高25%の関税を上乗せすることを発表していました。
その他の市場のニュ―ス
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木曜日米アップル社の時価総額が1兆ドルに達したことが速報で伝えられていたこと。 -
金ETFのの最大銘柄のSPDRごーゴールドシェアの残高は今週も水曜日に3.2トン減少し796トンへと減少していたこと。 -
先週末発表されたコメックス貴金属の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、中国人民銀行が前日金融機関に約743億6000万ドルを供給し、コモディティ価格が上昇していた火曜日に、前週に続きパラジウムを除くすべての貴金属でネットショートとなっていたこと。 -
コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日に前週に引き続きネットショートで、そのポジションを22%増加させ84トンと、このフォーマットでレポートが発表され始めた2006年6月以来の最大のものとなっていたこと。
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コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットポジションも先週火曜日に前週同様にネットショートとなっていたこと。そして、このネットショートポジションは44.1%増の1764トン。
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コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日に16週連続のネットショートだったものの、そのポジションは6.98%と少ないながら減少し、42トンとなっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週もロンドンは本日から30度を超える気温で、例年にない気温の高さ、降雨量の少なさ、それによる公共交通網に支障が出ていること、そして、庭に水をホースで上げることを禁止する節水の可能性などが、日々ニュースでも取り上げられています。
しかし、本日は欧州では人気のスポーツイベントのツールドフランスでイギリスのチームのスカイでアシスト選手(エース選手のサポート役)として走っていたウェールズ人のゲラント・トーマス氏が29日日曜日に総合優勝したことが今週大きく伝えられていますので、このニュースをお伝えしましょう。
今回スカイチームは、エースのクリス・フルーム氏で4年連続で5回目の総合優勝を目指していたのですが、彼が落車に巻き込まれたり、機材故障で遅れるなど不運が重なり、その間アシスト選手であった、トーマス氏に先行され、ダブルリーダ体制へと組み変え、結果的にトーマス氏が安定した走りで初の総合優勝となったのでした。
ご存知かとは思いますが、ツールドフランスは、1903年からフランスおよび周辺国を舞台に開催されてきており、7月に23日間の日程で行われています。走行距離は3300キロ前後で高低差は2000メートル以上のコースを21ステージとして走り抜きます。それぞれのチームは8人編成で、20を超えるチームが参加して競い合います。
日本でも世界最大の自転車レースとして認識されていますが、英国では2012年にブラッドリー・ウィギンズ氏、それ以降はクリス・フルーム氏が、2014年を除いて優勝してきているので、メディアでも広く取り上げられており自転車競技の人気が年々高まっています。
ちなみに、この優勝賞金は50万ユーロ(約6500万円)と、ウインブルドンが250万ドル(約2億8千万円)、全英オープンが180万ドル(約2億円)と比べる少ないようにも思えますが、ロードレースであることから観戦が無料で収入源にならず、コースが長いがゆえにその主催費用も掛かる等からのようです。
しかし、英国メディアの取り上げ方は、ウィンブルドンのレベルにも近づきつつあり、より多くの将来の自転車レース競技者を生み出すことになりそうです。
ちなみに、ウェールズでは来週トーマス氏のために凱旋パレードが予定されているとのこと。チームのエースをアシストして総合優勝に貢献してきた彼が初めてつかんだ彼自身の優勝を、心からお祝いしたいと思います。