ニュースレター(2018年10月12日)世界同時株安で金価格は11週間ぶりの高さへ急伸
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の価格は1219.40ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.3%上げて、今年8月1日以来の高さへと上昇しています。また銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり14.62ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同レベルとなっています。
今週は中国の預金率引き下げで始まり、米中の貿易摩擦の懸念の高まりやFRBの利上げペースの速まり観測による金利の上昇、そして株高の調整等から世界株式が大きく下げ、金が再び安全資産としての需要を伸ばすこととなりました。それでは、一週間の動きを曜日ごとに追ってみましょう。
月曜日金相場は、トロイオンスあたり1184ドルと先週終値から1.6%と2週間ぶりの低さへと大きく下げることとなりました。
これは、中国が週末預金準備率を1ポイント下げたことと、イタリアの財政懸念の再燃からドルが強含み、米長期金利も記録的水準へと上昇したことからでした。
中国の預金準備率の変更は、米国との貿易摩擦が悪化する中、景気を下支えすることが目的と推測されていますが、予想以上の中国の経済が悪化しているのではないかという憶測が広まり、人民元が7月半ば以来の一日の下げ(0.8%)を見せ、中国株価もCSI300指数が4.3%下げ、31ヶ月ぶりの一日の下げを見せていました。
イタリアの財政懸念は、イタリア政府が欧州委員会の懸念に対し頑なな姿勢を貫いていることからも、イタリア国債利回りが4年ぶりの高さへと再び上昇し、ドイツ国債とのスプレッドが300と2013年以来の大きさへ再び広がっていました。
同日は、北朝鮮の金正恩委員長との会談を終えて本日中国入りしたポンペイオ米国務長官がWang中国国務委員とミーティングを行ったものの、お互いに不信感を高めるコメントを交わしていました。
火曜日金相場は米長期金利が3.2%、ドルインデックスが95を超えて高止まりする中、トロイオンスあたり1183ドルまで一時下げて1189ドルで終えていました。
同日米長期金利は一時3.26%と2011年5月以来の高さとなり、ドルインデックスも一時96を超えていたことからも、金は頭を押さえらることとなりました。
しかし、前日全般下げていた世界株価は米国株式が同日反発し、前日のリスクオフの動きは多少落ち着いていることから、ロンドン午後に金相場も下げを緩やかに戻すこととなりました。
しかし、イタリア財政懸念は収まっておらず、イタリアの株式は下げ、国債利回りは上昇し、同日IMFが発表した世界景気予測を世界の貿易戦争の影響から2年ぶりに下方修正したことが伝えられていました。
水曜日金相場は、前日同様にドルと米長期金利が上昇ペースを一服させながらも高止まりする中、ロンドン時間はトロイオンスあたり1188ドル前後の狭いレンジで動いていました。
しかし、米中の貿易摩擦への懸念等から米株式のS&P500種、ダウジョーンズ、ナスダックが全般下げ、特にナスダックは7年ぶりの4%下げとなり、ニューヨーク時間に上昇し1194ドルで終えていました。
なお、イタリア情勢は、イタリア政府が予算案の撤回を拒否したことが伝えられ、10年債のドイツ債とのスプレッドは一時308ベーシスポイントへ広がるなど懸念は高まっていました。
また同日英国ポンドは対ドル上昇し、ポンド建て金相場はトロイオンスあたり901ポンドと2016年12月末以来の低い水準へと下げていました。これは、タイムズ紙が「野党労働党の議員30人が合意泣き離脱を回避するために最後にはメイ首相が示した離脱案を支持する用意がある」と伝えたことからでした。
木曜日金相場は、前日の米株式の下げ基調を受け継ぎ世界株式が下げる中、このところ記録的な高さへと増加していたコメックス金先物・オプションのショートポジションのカバーも入ったようで、トロイオンスあたり1223ドルと7月末以来の高さへと急上昇することとなりました。
日経平均株価は一日の下げ幅が一時1000円を超え、終値ベースでは3.89%下げで、香港のハンセン株化指数も3.54%下げ、上海総合指数は5.22%下げ、欧州株も全般下げてイタリアのFTSE MIBは1.76%下げとピークから20%減の弱気市場に入ったことが伝えられていました。
なお、同日発表された米消費者物価指数(コア)は前年比2.2%と予想の2.3%を下回り、新規失業保険申請件数も増加していました。
そのようなことからも、ドルインデックスは95.058と一週間ぶりの低さへ下げ、米長期金利も3.17%と1.58%下げていることも、金相場をさらに押上げることとなったようです。
本日金曜日は水曜日と木曜日の二日間下げ続けた世界株式が一転反発する中、金相場は一時トロイオンスあたり1223ドルまで上昇後、ロンドン時間夕方に1219ドルまで下げたものの堅固に推移することとなりました。
その他の市場のニュ―ス
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今週水曜日に米株式が全般下げてS&P500総合が2月8日以来の大幅安となっていた際に、今年4月末に871トンとピークを付けて下げ続けている金ETF最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高が58営業日ぶりに増加し、その量も8.8トンと今年5月19日以来の一日の上げ幅となっていたこと。このように長い期間残高が増加しなかったのは2004年11月以来。
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先週末に発表されたコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日にイタリア懸念で金相場が一週間半ぶりの高さへと上昇していた際に、全ての貴金属で先週火曜日にネットショートを減少(もしくはネットロングを増加)させていたこと。
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コメックス金先物・オプションのポジションは12週連続でネットショートで、5.4%減の227トンとなっていたこと。しかし、その水準は記録的レベルを維持し、ネットショートの期間はこのレポートがこのフォーマットで発表され始めた2006年6月以来の最長で、ショートポジションは過去平均の5倍で、ロングポジションは過去平均の30%減。
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コメックス銀先物・オプションのポジションも12週連続で先週火曜日にネットショートで、一月前の史上最高の水準から4週連続で下げで14.4%減の5.648トンとなっていたこと。銀のショートポジションも過去平均の5倍を超え、ロングポジションも過去平均の1.3倍となっていたこと。
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コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、先週火曜日に26週連続でネットショートであったものの、そのポジションは36%減の12トンで、このポジションも4週間前の史上最大規模から4週連続で減少していたこと。
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コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは、先週火曜日に貴金属で唯一引き続きネットロングで、そのポジションは14%増の27トンとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週の重要指標は水曜日のFOMC議事録と水曜日と木曜日に予定されている英国のEU離脱を議論するEUサミットなりますが、その他、月曜日の小売売上高、火曜日の中国消費者物価指数、米国の鉱工業生産、水曜日の英国消費者物価指数、米住宅着工件数、木曜日のフィラデルフィア連銀製造業景気指数、金曜日の中国の第3四半期GDP、小売売上高、鉱工業生産、米国の中古住宅販売件数等となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週もブレグジット関連ニュースが多く報道されていますが、本日は少し離れて本日行われていた、エリザベス女王の孫娘のユージェニー王女のロイヤルウェディングについてお伝えしましょう。
ユージェニー王女は、エリザベス女王の孫娘で、チャールズ皇太子の弟のアンドリュー王子の二女で、現段階では王位継承順位は9番目となっています。そして、このロイヤルウェディングは、ハリー王子とメーガン・マークル氏が5月に結婚式を挙げたウィンザー城で行われました。
今回の規模は継承順位が低いことからも、ハリー王子の際よりも小さいようですが、警備関係のみで2百万ポンドから4百万ポンド(約2億9655万円から5億9296万円)と見積もられていました。ちなみに、ハリー王子の際の警備費用は635万ポンド(約9億4133万円)であったとのこと。
この費用は税金で賄われるために、共和制を支持する団体を中心に今回のロイヤルウェディングに税金が使われることがないように4万人の署名と共に請願書を提出しているとのこと。その理由として、ユージェニー王女はロイヤルファミリーとしての公務をこなしていないことからも、ロイヤルウェディングを公費を使って行うべきではないというものです。
エリザベス女王が92歳の高齢でありながらも公務を着実に長年行ってきていることは、共和制を支持する人々も認め尊敬を集めており、それに加えてウィリアム王子とハリー王子の親しみやすい人柄からも、この数年英国王室への人気は高まっています。
今回のロイヤルウェディングの費用に関して一般の人々から理解を得られるのかどうかは確かではありませんが、メディアはここぞとばかりに華やかなロイヤルウェディングを報道し、ブレグジット関連で暗いニュースが続いていた中で、久しぶりに明るいニュースに包まれた1日となりました。