ニュースレター(2017年8月25日)1285.30ドル:トランプ大統領「政府機関閉鎖」コメント後注目のジャクソンホールではイエレン氏は金融政策に言及なし
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1285.30ドルと前週同価格から0.8%下げています。
週明け月曜日金相場は、今週木曜日から始まるジャクソンホールシンポジウムを待つ中、ドルが弱含む中で緩やかに上昇をすることとなりました。
ドルが弱含んだのは、先週のトランプ政権の混乱、米韓合同軍事演習への北朝鮮の反応などへの懸念、また軟調なインフレ指標等が金融引締め観測を後退させていることなどが要因となりました。
翌火曜日金相場は市場がリスクオンモードになる中、狭いレンジながら下落することとなりました。
これは、先週のトランプ政権の混乱が一先ず落ち着き、米韓合同演習への北朝鮮の反応も特に見られないこと、ティラーソン米国務長官の「北朝鮮と対話できることを望む」というコメントも伝わっていることなどからも、株価が上昇するなど、市場センチメントがリスク資産へと向かったことからでした。
水曜日金相場は、前夜のトランプ氏のコメントでドルや株式市場が弱含む中、一時1291ドルを付けるなど上昇することとなりました。
そのコメントは、「メキシコとの国境の壁の建設の予算獲得のために議会への圧力が必要であれば、米国政府機関を閉鎖に追い込むこともいとわない」というものでした。また、北米自由貿易協定(NAFTA)を終える可能性にも言及するなど、政権への懸念を高めることとなりました。
それに加え、米格付け会社のフィッチレーティング社が、議会が期限内に債務上限の引き上げで合意できず、その結果、政府のその他の支払い義務より債務返済が優先させられる事態になれば、「『AAA』格付けに整合的でなくなる可能性がある」との見解を表明していました。
また、同日はジャクソンホール前に行われたドラギECB総裁のスピーチで、金融政策に関して触れることがなかったことや、ドイツとユーロ圏の製造業PMI数値が好調であったことから、ユーロが強含んだ事もドルを押し下げることとなりました。
木曜日金相場は、ジャクソンホールへと市場注目が移る中、狭いレンジの取引となりました。
なお、今週の重要指標である同日発表された米中古住宅販売件数は予想を下回り2ヶ月連続で減少となり、前日発表の新築住宅販売件数も3ヶ月ぶりの減少となっていました。
本日金曜日は、イエレンFRB議長とドラギECBB総裁のスピーチを待つ中発表された米耐久財受注が、マイナス数値と3年ぶりの低い水準となりドルが弱含む中金が上昇をしていました。その後イエレンFRB議長のスピーチ前に1280ドルまで一旦下げた後に、スピーチで金融政策に全く触れることがなかったことからドルが弱含み、金相場は1290ドルへと戻しています。
なお、やはり注目のドラギECB総裁のスピーチは本日ロンドン時間午後8時(日本時間午前4時)に行われますので、市場への影響などは、別途お伝えいたします。
その他の市場のニュース
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ドイツ中央銀行が、ニューヨークとパリに保管していた674トン(2790億ドル相当)のドイツの金準備を自国へ輸送するオペレーションが前倒しで終了したことが伝えられていたこと。これにより、米国に次ぎ世界第2位の金準備3,374.1トンの50%以上がフランクフルトの独中銀に保管されたこととなり、36.6%がニューヨーク連銀、12.8%がイングランド銀行に引続き保管されることとなるとの事。 -
先週末に発表されたコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に30%近く増加し、558トンとなっていたこと。これは、米国大統領選挙前にトランプ氏の勝利が懸念されていた昨年10月4日以来の高い水準。これにより、ネットロングポジションは5週続けて増加。
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コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも先週火曜日に33%増加し、6月半ばの高い水準となっていたこと。
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは、先週12.3トン残高を増加させて799トンと今年7月25日の水準まで戻したこと。しかし、今週残高は全く変化がないこと。
ブリオンボールトニュース
ファイナンシャル・タイムズの「ポートフォリオに金を含むことの効果は?」という記事でブリオンボールトが取り上げられました。
この記事では金が株式や債券と相関関係が弱いことから、ポートフォリオの多様化目的で保有する意味があるとし、ブリオンボールトがまとめた金を含むポートフォーリオの効果が見られるインターアクティブのグラフと、金の保有方法を紹介しています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週のロンドン便りでは、昨日来主要メディアで取り上げられている、メイ首相の移民政策の誤りについてお伝えしましょう。
英国がEUからの離脱を選択した際、多くの人々が望み、政府が公約したのは移民の総数を管理することでした。それは、EU圏内では移動の自由が保証され、EUの中でも経済規模が大きく、雇用機会が高い英国への移民の数は増加を続け、2015年に33万人と過去最高を記録するなど、国内の雇用が脅かされ、社会保障費を圧迫しているという不満が強まっていたことからでした。
実際に、学費を必要としない公立学校では英国を母国語としない生徒の割合が急増し、国民保険で無料で受診できる病院の中でも産婦人科は東ヨーロッパの移民で溢れているとも伝えられていました。
メイ首相は、今年6月に行われた選挙のマニュフェストでは、移民の年間純増加数を10万人未満に抑えることを上げ、10万人に近い留学生が大学を卒業後も違法に滞在しているという統計を取り上げ、制限する移民の数に海外からの留学生も含めていたのでした。
英国は、米国に次ぎ多くの海外留学生が就学しています。そして、それによる英国への経済メリットの大きさ、また大学の水準も上がり、より優秀な人材が英国に就業する可能性も高まることから、メイ政権の閣僚を含む保守党内の議員の多くは、海外からの留学生を、移民総数に含み制限することに必ずしも同意していなかったようです。
ところが昨日のニュースで、この違法に滞在している留学生の数は4600人程で、97%の留学生が卒業後英国を離れているとのことが明らかとなり、野党はもちろんですが、主要メディアもメイ首相の誤りを厳しく追求しています。
違法に滞在している留学生が10万人と見積もっていた英国国家統計局は、留学生が年間に支払っている授業料が21億ポンド(約2940億円)となることも間違って低く見積もっていたことを認めているようです。
既に今年6月の選挙で過半数を失い求心力が弱まっているメイ首相にとってこのニュースは、頭の痛いものであることは確かでしょう。
お知らせ
ブリオンボールトの日本における正規独占媒介代理店のブリオンジャパンが、今月26日に開催される第6回世界の資産運用フェアに出展し、パネルディスカッションに登壇します。
パネルディスカッションでは、トランプ政権とアメリカ経済の行方から、不動産投資、賢い借り入れと節税方法など、金投資以外にも様々な議題が取り上げられるようです。
参加費は無料ですが、事前登録が必要とのことですので、よろしければ是非 こちら でご登録ください。
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