ニュースレター(2017年8月18日)1295.80ドル:トランプ政権への懸念とハト派的FOMC議事録で1300ドルを試す
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1295.80ドルと前週同価格から1%上昇しています。
週明け月曜日と火曜日金相場は、米国と北朝鮮の緊張が多少ながら緩和し、ドルインデックスやリスク資産が上昇する中、下げることとなりました。
火曜日には、朝鮮中央通信が金正恩氏の「米国の行動をもう少し見守る」という発言を伝え、ブルームバーグもティラーソン国務長官の「米国は北朝鮮との対話の模索に関心」と伝えていることなどからも、ボラティリティインデックスが下げていました。
また、同日発表された米国小売売上高が市場予想を上回り、2016年12月以来の高い伸びとなり、ニューヨーク連銀製造業景気指数も予想を大きく上回ったことからも、FRBによる利上げ観測が広がりつつあることも金を押し下げることとなりました。
水曜日金相場は、市場注目のFOMCの議事録発表を前に狭いレンジでの取引となっていました。
その間、ユーロ圏の第2四半期GDPが前年比予想を上回ったものの、8月末のジャクソンホールでドラギECB総裁がスピーチを行わないと伝えられたことで、金融引締め関連のコメントが出ないことからもユーロが弱含むこととなりました。
なお、同日発表の米住宅着工件数は予想を下回っていましたが、前日の小売売上高が予想を大きく上回り、また北朝鮮問題の緊張緩和などもあり、ドルは強含んでいました。
その後発表された、FOMC議事録では、「想定よりも長期にわたって物価が2%未満にとどまる可能性がある」等の物価の下振れへの懸念を多くの参加者が持っていることが明らかとなったことから、年内の利上げ観測が後退し、金相場はトロイオンスあたり1280ドルを越えて、15ドルほど上げ幅を広げることとなりました。
木曜日金相場は、前日の上げ幅を保ち、S&P500種が今年2番目の大きな下げを見せるなど、株式市場が全般下げる中、トロイオンスあたり1290ドル目前まで上昇することとなりました。
同日の上げは、前日のFOMC議事録のハト派的内容からでしたが、それに加え、トランプ大統領の、シャーロッツビルでの極右集団と反対派の衝突した事件の対応で批判が高まり、トランプ大統領の諮問会議の委員の多くが辞任し、トランプ大統領がこの会議の解散を決めたことが伝えられ、政権運営への懸念が高まったことも要因となりました。
なお、バルセロナにおけるテロは、同日ロンドン時間夕方5時頃に伝えられましたが、この時点での市場への影響は限定的なものとなりましたが、ニューヨーク時間にリスクオフの動きを進めた要因でもあるようです。
本日金曜日金相場は、前日同様株式市場が下げリスクオフが進む中、日本円と金が安全資産として買われ、トロイオンスあたり1300ドルを試す上げを見せることとなりました。
また、バルセロナのテロは、その近郊のカンブリスでも車の暴走事件が発生するなど連続テロとなり、14人の死亡が伝えられていますが、地政学リスクが意識されている模様です。また、トランプ大統領のシャーロッツビルへの対応や諮問会議解散へ至る対応は、今後の税制改革、大型のインフラ投資、債務上限問題などへの政権運営能力の懸念を強めているようです。
しかし、金相場は水曜日以降大きく上昇していたことからも、本日1300ドルを試した後に、ロンドン時間午後5時の段階で10ドルほど下落しています。
その他の市場のニュース
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアは、今週8.5トン残高を増加させていたこと。
- インド政府が22カラット以上の金宝飾品の輸出を禁止したことが伝えられていたこと。
- 先週末に発表されたコメックス金先物・オプションの資産運用業者のネットロングポジションは、先週金価格が上昇を始める前の火曜日に12%増と4週連続で増加していたこと。またショートポジションは3週続けて前週比30%を越えて減少。
- コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、20%増と3週連続で増加し、6月半ばの水準まで増加。
- 米国と北朝鮮の緊張が高まる中、韓国での金購入が8月9日以来5倍に急増し、シェルターや保存食の需要も高まっていることが伝えられていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週月曜日に、金が4営業日ぶりに下落していることを解説する米主要経済サイトのMarketWatchで、ブリオンボールトのリサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エイドリアンは今後の見通しとして、「アジアの需要が夏以降戻ってくること、そして米国の債務上限問題の状況によっては、金価格はより上昇をする可能性がある。」、「(しかし)9月まではこれらの大規模な消費国の市場は静かだ。」と述べています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
本日は英国でも昨日からのバルセロナ連続テロ事件が大きく伝えられています。
今年は英国もマンチェスター、ロンドンウェストミンスター、ロンドンブリッジとテロ事件が続いていたことからも、バルセロナのテロは他人事ではありません。英国との二重国籍を持つ7歳の子供も現段階で行方不明になっているとのことで、メイ英国首相も全力で行方を探しているとコメントしています。
既に、バルセロナ空港のセキュリティーは、欧州の他の空港同様に追加で行われ、それにより搭乗時間に間に合わない等の混乱もニュースで伝えられていましたが、今回の事件の容疑者としてモロッコ人を含むスペイン人が逮捕されている模様です。
英国で発生した2005年のロンドン同時爆破テロ事件や今年のウェストミンスターで起きた犯人は必ずしも移民ではなく、英国で生まれ育った人達でした。
英国政府は、イスラム過激派の思想が広まらないように、イスラム教のリーダーの人々と共に解決策を模索しているようですが、移民や難民の教育や生活水準を高め、国内の異なる民族が孤立することなく融合する方法を見つける等、地道な活動が必要となることからも、長い道のりになるようです。
今回犠牲となった方々のご冥福を心からお祈りします。