ニュースレター(2017年10月6日)1261.80ドル:良好な経済指標で下落後北朝鮮懸念で上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1261.80ドルと前週同価格から1.6%下げています。
週明け月曜日金相場は、ドルインデックスが上昇する中、6週間ぶりの低さへと下落することとなりました。
同日は発表された米ISM製造業景況指数が60.8と予想の58.8を上回り、13年ぶりの高い水準となったことなどから、ドルインデックスが7週間ぶりの高さへと上昇していました。
そのような中ラスベガスでの銃乱射事件での犠牲者数が58人、負傷者数が515人とも伝えられていましたが、テロの可能性は早い段階で否定されていたことから市場へ影響を与えることはありませんでした。
また、スペインのカタルーニャ自治州の独立を問う1日の住民投票は独立の賛成票が約90%に達しましたが、中央政府が「違法」とみなす住民投票を阻止しようとする警官隊と住民が衝突し住民800人以上が負傷したことが伝えられ、スペインの株価は下げ、ユーロも下げていました。
火曜日金相場は、ドルインデックスが11週間ぶりの高水準から下げる中、トロイオンスあたり1274ドルまで上昇することとなりました。ドルが強含んでいたのはトランプ政権の大規模な税制改革への期待、前日のISM景況指数が13年ぶりの高水準だったことから、FRBのタカ派的スタンス等からでした。
しかし、市場は今週発表の米雇用統計へと注目を移し、調整の動きも出ていたようです。
水曜日金相場は、ロンドン昼過ぎに米ADP全国雇用者数が発表される前にトロイオンスあたり1281ドルまで上昇後、その結果が予想を上回ったことから戻すこととなりました。また、その後発表されたISM非製造業景況指数が12年ぶりの高い水準となったことも金を押し下げることとなった模様です。
なお、市場ではトランプ政権による時期FRB議長への関心が高まっており、タカ派のウォーシュ元FRB理事、イエレンFRB議長に近いパウエル理事になるかの観測なども市場を動かしていたようでした。
木曜日金相場は、発表された米主要経済指標の新規失業保険申請件数、貿易収支、製造業受注指数等が軒並み良好であったことから、ドルが強含みトロイオンスあたり1267ドルまで8週間ぶりの低さまで下げることとなりました。またS&P500種は2013年以来の長期間上昇を続けており、金にとってはネガティブ要因となっていました。
なお、カタルーニャ地方独立関連は混迷を続けており、同日発表のECBの議事録で金融引締めもメンバー内で意見が統一されていないことも明らかとなり、ユーロが弱含みユーロ建て金相場は上昇することとなりました。
また、前日の英国保守党大会でのメイ首相の演説はハプニング続きで党の結束を見せることができなかったことからも党首交替の観測も出る中ポンドが弱含み、ポンド建て金相場も上昇することとなりました。
本日金曜日市場注目の米雇用者統計は、非農業部門雇用者数が-33,000人と予想9万人と前回156,000人(修正値169,000人)を大きく下回りました。ちなみにこの数字がマイナスになったのは、2010年10月以来となります。しかし、失業率は4.2%と前回と予想の4.4%を下回り、市場が注目していた平均時給も前年比2.9%と予想と前回の2.5%を上回ったことから、金相場はトロイオンスあたり1266ドルへと下げることとなりました。
非農業部門雇用者数が低い数字となることは、ハリケーンの影響で予想されていたことからも、他の数値に市場が反応した模様です。
その発表を受けて、ドルインデックスは11週間ぶりの高さへ上昇し、長期金利も12ヶ月ぶりの高さへ上げていました。
しかし、ロンドン時間午後4時頃に「週末に北朝鮮が長距離ミサイル試射をする可能性がある」とロシア議員が発言したとブルームバーグが伝えたことから、リスクオフの動きで金相場がトロイオンスあたり1274ドルまで急騰することとなりました。
その他の市場のニュース
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週末発表されたコメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週金価格が1.5%下げていた火曜日に2週連続で減少し636トンとなっていたこと。このショートポジションは過去7週間で最高水準へと増加しており、ロングポジションは5週間ぶりの低さへと減少していたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジション13%減と、2週連続で減少していたこと。しかしそのポジションは過去の平均を86%上回っていたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が今週木曜日までに13.5トン減少し851トンとなっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週はブリオンボールトが毎月まとめている金投資家インデックスが発表されたこともあり、多くのメディアでブリオンボールトが取り上げられていまいた。
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日本語で金の情報を網羅するゴールドニュース: 「2017年のパターンとは異なり金購入者数が増加」
ブリオンボールトの金投資家インデックスでは、9月の金投資家センチメントは、金価格が上昇する中でも高まっていたことが明らかになりました。これは、今年の金価格と金投資家のセンチメントが逆の動きをしていたパターンを破るものとなり興味深い動きとなりました。
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米国主要経済サイトMarketWatch: 「金が3日連続の下落」
この記事では、ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュの「トランプ大統領のFRB議長の選択肢が市場で高い関心を集める中、金は今ほぼドルの動向で動いている」というコメントを紹介し、ブリオンボールトがまとめた金とドルインデックスのデータを取り上げていました。
そして、「もしトランプ大統領が低金利を望むイエレン氏を利上げを望むウォーシュ氏ではなく選ぶのであれば、ドルが下げ金が再び上昇をするだろう。」また、「ドルとの負の相対関係は、S&Pが金利が長く低く続くことで上昇すれば崩れるだろう」というコメントを紹介しています。
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米経済サイトInvesting .com: 「イエレンFRB議長のスピーチを前にアジア地域は薄商いの中金が上昇」
この記事でもエィドリアンの「トランプ大統領のFRB議長の選択肢が市場で高い関心を集める中、金は今ほぼドルの動向に反応して動いている」というコメントが紹介されています。
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金業界のマーケティング団体であるワールドゴールドカウンシル: 「個人投資家がなぜ金投資を行うのか」
このビデオは、ドイツの個人投資家になぜ金投資を行うかをインタビューしをしたものですが、ここで個人投資家が利用しているスマートフォンアプリが、ブリオンボールトのものであることがご覧いただけます。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
昨日は英国でもカズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞のニュースが広く伝えられていました。BBCは、1983年に英国籍を所得しているイシグロ氏に、ノーベル賞受賞ニュース後即座にインタビューし、イシグロ氏の「フェイクニュースが多い中、ノーベル賞受賞はBBCから連絡があって初めて信じた」というコメントも紹介していました。
そのような中、英国ではポンド安も招いてしまった、与党保守党の党大会でのテリーザ・メイ首相の演説、そしてその後の反応についてトップニュースで伝えていますので、ご紹介しましょう。
ご存知のように、メイ首相は今年6月に総選挙を前倒しで行い、第一党の位置は守ったものの、選挙前の過半数を下回り、政権内での求心力を失っていました。
そこで、この党大会で政権の基盤を硬め、EUとの離脱交渉へ向かうことを目指し、4日水曜日の演説では6月の選挙について保守党員にまず謝罪するなど、普段は冷たいイメージが先行する彼女ですが、人々の心に訴えようとしていました。しかし、演説では驚くほどの幾つものハプニングが続いてしまい、これまで表面だって首相の退陣を求める保守党議員はいなかったのですが、昨日は元閣僚のエド・ベイジー議員、そして本日はシャップス元国際開発閣外相がメイ首相の退陣と党首選の実施を求めたことが伝えられています。
このハプニングとは、コメディアンにP48と呼ばれている「解雇通知」の書類を、演説中に次期首相候補とも言われている「ボリス(ジョンソン外相)から」と手渡されたこと、その後演説中に声が出なくなりハモンド財務相にのど飴を差し出されるほどとなってしまったこと、そして演説の最中にはメイ首相の後ろに表示されていた保守党のスローガン「Building a country that works for everyone (全ての人々にとって良い国を作る)」の幾つかの文字が落ちてしまうという始末でした。
総選挙以来、保守党サポーターの中でもメイ首相はいずれ退陣しなければならないが、次の首相となるべき人が出るまでは退陣すべきではないという意見が多かったようですが、今回のこのハプニングで党内の意見も変化しているようです。
行き詰まっているEUとの交渉を前にすすめるためにも、保守党はここで動かざるをえないのかもしれません。