ニュースレター(2014年5月2日)1281.25ドル 良好な米雇用統計後小さく下げたものの1300ドルへ上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1281.25ドルと前週同価格から1.5%下げています。
今週は週半ばにFOMC、金曜日に米国雇用統計が控える中、週前半は上値が重い状況が続きました。
まず、週明け月曜日は、ウクライナ情勢は、米国が追加制裁を発表するなど緊張が高まったものの、その制裁内容は目新しいものではないことから、株式市場が上げる中、金価格は緩やかに下げることとなりました。
翌火曜日は、前日の流れで株が上げる中、金価格はトロイオンスあたり1290ドルを割ったもののその後反発し、1300ドル近くまで上げることとなりました。
水曜日は、FOMCの結果を待つ中発表された4月ADP全国雇用者数が、22万人と予想の21万人及び前回の20.9万人を上回り、前回数値も19.1万人から上方修正されたことから、金価格は現在トロイオンスあたり1288ドルへと6ドルほど下落しました。ところが、その10分後に発表された、米国第1四半期GDPが0.1%と前回2.6%及び予想の1.1%を大幅に下回ったために金価格が反発し、トロイオンスあたり1296ドルまで一時急騰しました。
その後、前日から行われていたFOMCは、市場予想通り債券買い入れ額を100億ドル削減し月額450億ドルにすることを全会一致で決定し、その発表後は金価格は緩やかに下落することとなりました。
木曜日は、前日のFOMC声明で「米経済についてこれまでよりも楽観的な見方を示した」ことを好感し株価が上げる中、金価格は下落することとなりました。また、本日発表の米国 3月個人支出 が 2009年8月以来の高い水準となったことも金価格の下げを進めることとなりました。
本日金曜日は、市場注目の米国4月非農業部門雇用者数と失業率が発表され、非農業部門雇用者数は、288,000人と予想の210,000人と前回203,000人を大幅に上回りました。また、前回数値も192,000人から上方修正され、失業率は、6.3%と前回6.7%と予想の6.6%を下回りました。
この結果を受けて、金価格はトロイオンスあたり5ドルほど下落した後、すぐに戻し神経質な動きをしたものの、1300ドルを超える上げを見せることとなりました。これは、失業率の大幅な下げはあったものの、今回労働人口が806,000人減少し、米労働参加率が63%弱と35年来の最低水準となったとのことが伝えられ、また、雇用統計後に下げ幅を広げなかったことも、この反発を誘った模様です。
また、ウクライナ情勢も新たな展開を見せていることも、価格上昇の要因の一つと考えられているようです。
他の市場ニュース
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ドイツ銀行が金の値決めから撤退することが伝えられたこと。中国のICBCがその英事業の一部を取得をすることで協議中のスタンダードバンクと進められていた参加権売却交渉は合意に至らなかったとのこと。
ブリオンボールトニュース
今週木曜日に、JETRO主催の「Invest in Japan: A Regional Roadmap(日本への投資:地方自治体からの提案)」というセミナーに出席してきました。
ここでは、神戸市長、福岡市長、三重県知事、広島県知事がそれぞれの地を紹介し、英国からの投資をどのように援助するかをプレゼンテーションされました。そして、今週欧州欧州6カ国訪問中の安部首相も会場に訪れ、日本への投資を歓迎するとのスピーチを行いました。それは、アベノミクス、2020年の東京オリンピックに触れ、今後規制緩和に努めることを約束し、英国企業の日本投資を促す力強いスピーチでした。
その際の写真をここに添付します。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールト・リサーチ部門の「工業用需要から、銀投資は「意味のあるもの」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国メディアは、北アイルランド出身で、アイルランド共和国の下院議員でシン・フェ・イン党首のジェリー・アダム氏が、1972年の殺人事件に関連して逮捕されたことが伝えています。
42年前に殺害されたジーン・マコンビルさんは、プロテスタントを信仰していましたが、マコンビル氏と結婚する際にカトリックに転会したとのこと。その後、10人の子供に恵まれ、北アイルランドの首都ベルファストの東に住んでいましたが、アイルランド共和軍(IRA)関連のいざこざでベルファストの西に居住地を移したのでした。
その後まもなく、1971年にマコンビル氏が亡くなり、その翌年12月にアイルランド共和軍(IRA)によってマコンビルさんは自宅から連れ去られ、2003年にその遺体が発見されたのでした。
マコンビルさんが誘拐された背景は、スパイであることを疑われた、もしくは、傷ついた英国兵を助けたためと言われているようです。
ちなみに、アイルランド共和軍(IRA)は、北アイルランドを英国から分離させ、アイルランドを統一することを目指す、アイルランド独立闘争(対英テロ闘争)を行ってきた武装組織であり、シン・フェイン党はその政治組織です。
長年にわたって、多くの犠牲者を出してきたアイルランド問題は、1997年に英国首相となったトニー・ブレア氏の和平の取り組みにより、1998年に和平合意が成立し、2005年にはアイルランド共和軍(IRA)の武装闘争終結宣言に続いて武装解除の確認がなさています。
しかし、和平合意が行われるまでに誘拐、殺害された人々は、IRAが認めたものだけでも、マコンビルさんを含む9人とのこと。そして、これらの事件は未だ全容が解明されていません。
80年代や90年代には、ロンドン市内でもテロ騒ぎで駅や商店街が封鎖されることが頻繁に行われていました。そのような騒ぎはすっかり無くなったものの、長い間の紛争の傷跡は未だ塞がれること無く残っていたことを、改めて考えさせるニュースでした。
南アフリカのアパルトヘイト廃止後の民族和解政策で行われたように、厳しい過去を背負った人々が真実を知ることで和解することができる日々が、近い将来に訪れることを祈るばかりです。