ニュースレター(2014年2月7日)1259.25ドル 米主要経済指標が価格を動かす
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1259.25ドルと前週同価格から0.7%の上げとなりました。
週明け月曜日は、ロンドン時間午後に発表されたISM製造業景況指数が、予想を大幅に下回るものであったことから、株が下げ金は急騰することとなりました。
翌火曜日は、前日の上げの反発から、上げ幅をジリジリと失うこととなりました。同日、株価は前日の下げを多少取り戻し、新興国通貨も前日の下げを対ドル戻すこととなりました。
水曜日は、今週金曜日に発表の米国雇用データの前哨戦である民間雇用データADP全国雇用者数が17.5万人と予想を下回り、前月数値も1万1千人下方修正されたことから、金価格は一時10ドルほど急騰することとなりました。しかし、この上げは持続されず、一時間ほどで押し戻されることとなりました。
木曜日は、翌日の雇用統計を待つ中、狭いレンジの取引となりました。
金曜日は、市場注目の米国雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は113,000人と予想の185,000人を下回りました。なお、失業率は、6.6%と、労働参加率は35年来の低水準から上げたものの、前回6.7%から改善し、過去5年で最も低い水準となりました。このニュースを受けて、金価格は10ドルほど急騰したものの30分ほどでその上げ幅を失うこととなりました。これは、雇用者数は予想を下回ったものの、失業率は改善するなど結果が相異なるものであったことからのようです。
来週はイエレン新FRB議長のスピーチが火曜日に予定されています。
他の市場のニュース
- 三菱UFJセキュリティーズ・インターナショナルがコモディティ業務から撤退することが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
ブリオンボールトがまとめている金投資家インデックスの1月数値について、ブルームバーグが「ブリオンボールト顧客の投資傾向を表す金投資家インデックスは、過去18ヶ月で最低水準となる」と、今週火曜日に取り上げています。この日本語での詳細は、ゴールド関係の情報を集めているゴールドニュースサイトでご覧いただけます。
また、同日ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、本日のBBCの主要ラジオ番組 「Today」で、昨年の28%の金価格の下げを経て、今後の金投資の意味についてインタビューを受けています。このインタビューは番組開始から16分45秒まで早送りいただくとお聞きいただけます。
同日、ブリオンボールト米国市場開発責任者ミゲル・ペレスーサンタイアもまた、米国主要経済サイトの「The Street」でこの金投資家インデックスについてインタビューを受け、この四半期に金価格がトロイオンスあたり1300ドルへと上昇する可能性があるとコメントしています。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
- ブリオンボールト・リサーチ主任エィドリアン・アッシュの「金価格が上げ、金投資家の興味は下がる」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週ロンドンでは、火曜日の夜から金曜日の朝まで地下鉄のストが行われていました。そして、来週も同様に48時間ストが予定されています。
今回のストライキは、地下鉄の駅の発券窓口の閉鎖に伴う人員削減計画をめぐる労使交渉が不調に終わったためとのこと。本日、来週のストを回避するために話し合いが再開されるようですが、労組と経営側の意見にはかなりの隔たりがあるようです。
ロンドンの地下鉄は、ロンドンを統括する大ロンドン庁(Greater London Authority)の管理下で、ロンドンの公共交通機関を取りまとめるロンドン交通局(Transport for London)の傘下に入っています。そのため、今週ロンドン市長であるボリス・ジョンソン氏が、労組の代表のボブ・クロウ氏に話し合いの場に戻ることを強く訴えていました。
この労使交渉の中心人物は、その生い立ちや主義において見事に対局に立っている人物と言えるかもしれません。英国で最も有名な私立校のイートンからオックスフォード大学へ進んだ、自由経済、保守主義を信じるボリス・ジョンソン氏に対し、ボブ・クロウ氏は16歳で義務教育を終えた後、ロンドン交通局で働き始め、労働組合の活動に関わるようになった、英国労働階級を代表する共産・社会主義者です。そのために、このように異なる主義を持つ2人が歩み寄るのは難しいようです。
ボブ・クロウ氏はストの直前にブラジルで休暇をとっているところをタブロイド紙に写真を取られて、ストで大変な思いをしたロンドン市民の顰蹙を買っていました。ただ、指導力のある彼が労組の代表になって、労働組合員数は倍増しているとのこと。労働組合員の権利をどのようなことがあっても守ることを宣言している叩き上げの労働委員長と、小さい政府が信条で、ロンドン庁の費用削減を目指すボリス・ジョンソン氏がどのようなところで妥協しあうのかは、興味が持てるところです。
ロンドン市内には、日本のスイカやパスモのようなオイスターカードがすでに十分普及しており、窓口で切符を購入するのは限られた人になりつつあります。また、スト直前に窓口業務の駅員が居眠りをしている写真がソーシャルメディアに出回るなど、地下鉄の労働組合員同様に、金融危機後厳しい雇用環境の中で働かざるを得ないストの影響を被ったロンドン市民にとって、労組の人員削減反対の言い分には同情しながらも、100%同意するのは難しいものもあるようです。
労働組合の力が強かった1970年代に比べれば、ストは日常茶飯事ではない英国ですが、労働争議の歴史を経て成熟した社会を作り上げてきたことを自負する英国人の寛容度には、感嘆するばかりです。