ニュースレター(2013年8月30日)1394.75ドル シリア危機が金価格を過去3ヵ月の最高水準へと引き上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1394.75ドルと前週同価格から1.2%の上げとなっています。
英国祝日の週明け月曜日は、金価格はトロイオンスあたり1400ドルを超えることとなりました。こ れは、米国7月の耐久財受注が予想を下回ったこと、その後ケリー米国務長官がシリア政府を非難したことなどから、地政学的リスクの高まりが金価格を押し上 げることとなったためです。
翌火曜日は、前日の上げの勢いを引き継ぎ、金価格は更に上昇することとなりました。これは、シリアを巡る情勢が米国の軍事介入の可能性が高まることで一気 に流動化し、リスクオフが進んだためです。また、米国債務上限問題が再度浮上してきたことも価格を押し上げる要因となりました。
米国の債務上限問題では、2011年に与野党の対立で政府がデフォルト寸前に追い込まれたことがあり、金融市場に動揺が走り、当時金価格が高騰した経緯があ ります。今回の問題は、5月すでに上限に達した債務ですが、それ以来緊急措置でやりくりしていた資金が10月半ばに底をつくために、それまでに何らかの措 置をとり、デフォルトを免れなければならないためというものです。
水曜日は、ロンドン時間午前中に過去3ヵ月で最高水準のトロイオンスあたり1433ドルを付けたものの、その後価格の調整が入り緩やかに戻すこととなりました。
木曜日は、同日行なわれると見られていたシリアへの軍事行動が、国連調査団のシリアによる化学兵器使用有無の調査結果を待つ方向で英国政府が野党と同意したことなどか ら、少なくとも数日は伸びると見られ、シリア情勢の緊迫度が薄れる中、発表された米国経済指標が予想を上回ったことから、前日過去3ヵ月の最高水準まで上 げていた金価格は、押し下げられることとなりました。
この米国経済指標とは、第2四半期GDPが当初予想の1.7%から2.5%へと引き上げられたこと、そして、週間失業保険申請件数が、前週比下げたことなどからです。新築住宅販売件数などの米国経済指標が悪化したために、9月の緩和早期縮小観測が後退していましたが、再び浮上してきた模様です。
本日金曜日は、昨夜英議会が対シリア非難動議を否決し、米国の強い同盟国である英国のシリアへの軍事行動は断念せざるを得ない状況となり、シリア情勢の緊迫度が多少薄れる中、昨日の米国経済指標結果が予想を上回ったこと、そして、米国が来週月曜日レイバー・デー(労 働者の日)で祝日であることから、利益確定などのポジション整理も進み、金価格はトロイオンスあたり1400ドルを割り込むこととなりました。
他の市場ニュース
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国際通貨基金(IMF)によると、7月の中央銀行の金準備はトルコが22.5トン、ロシアが6.345トン、アゼルバイジャンが2.009トン増加したことが明らかとなったこと。 -
先月発表されたワールド・ゴールド・カウンシルの最新レポートが、日本語でも入手可能となったこと。ご希望であれば、ゴールド・デマンド・トレンド2013年第2四半期 (PDF 0.7 MB)をダウンロードをご利用ください。 -
インド中銀が、商業銀行が通貨支援策として一般市民からの金購入を検討していることが明らかとなったこと。
ブリオンボールトニュース
弊社市場分析ページのデザインが新しくなりました。以前のフォーマットに加え、「ビデオ」、「金の歴史関連記事」というカテゴリーなどが新たに加えられています。よろしければ、ご覧ください。
今週は価格上昇に伴い、弊社が多くのメディアで取り上げられることとなりました。
今週の金価格の上昇を解説するロイターの記事で、ブリオンボールトの米国市場開発責任者ミゲル・ペレス-サンタイアのコメントが取り上げられました。この記事では、月曜日発表の米国耐久財受注の指標が予想を下回ったことがきっかけとなって、金価格が過去11週間で最高水準に上昇した背景などを分析しています。
ブルームバーグの金トレーダーが3月以降で最も強気であることをレポートしている記事で、ブリオンボールトにおける新規顧客登録が8月27日に6月末以来最高となったことが言及されています。
CNBCが、今月の金価格の上げをレポートしている「金価格:まるで今年の夏(の急落)が無かったようだ」の記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが見出しで利用されると共に、次の分析が取り上げられています。
「1968年4月以来の過去の例を見る限り、ポンド建てで3ヶ月間に24%以上の下落をした15回の中、全てのケースでその後価格は平均20.7%上昇している。」
また、ブリオンボールトが米国顧客のニーズの高さから、金保管のためにトロント保管場所を追加したことが、本日ブルームバーグで取り上げられています。
今週市場分析ページには、下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトの米国市場開発責任者のミゲル・ペレスーサンタイアの「金鉱会社のヘッジストラテジーにおけるジレンマ」
また、今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、シリアへの軍事介入に関わるニュースが大きく報道されていました。ご存知のように、今回ダマスカスで撮影された映像から、サリンなど の猛毒ガスである化学兵器をシリア政府が使用した疑いが高いことから、「人道介入」を行なう必要があるとし、米国と英国の両国が限定的な空爆をする方向で 調整を進めていました。
しかし、昨日緊急招集された英国議会では、シリアに対する軍事行動案を否決したために、米国の同盟国として、米国と共にシリアへ軍事介入することを強く進めていたキャメロン首相は断念せざるを得なくなりました。
今回の議会での否決の背景は、2003年にトニー・ブレア元首相がイラク戦争に英国が参戦することを正当化するために、「イラクは45分間で大量破壊兵器 を発射できる」と議会報告をし、参戦の承認を得たものの、実際にはイラクで大量破壊兵器は発見されることは無く、多くの国民が反対したイラク戦争へ参戦の 是非は今でも議論されているという経緯があります。
そのため、今回のシリアへの軍事介入には労働党は反対に回り、一部の保守党議員も反対票を入れることとなりました。今後の首相としての政治力に国内外共に 影響が出ることとなるキャメロン首相ですが、やはり国民、そして議会の反対を無視することはできなかったということでしょう。金市場にも大きな影響を及ぼ しているシリア情勢には、来週以降もここ英国でも引き続き注目が集まることとなります。
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