ニュースレター(10月7日)1258.75ドル BREXIT懸念の高まりからポンド安ドル高が進み、3ヶ月ぶりの安値へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1258.75ドルと、前週同価格から4.8%下げています。この規模の一週間の下げ幅は、2015年11月以来となります。
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週明け月曜日金相場は、緩やかに下落することとなりました。これは、同日も前週のドイツ銀行の懸念が一服する中、金相場は緩やかに下落していましたが、市場注目の米ISM製造業景況指数が51.5と、予想の50.3前回の49.4を上回り、2ヶ月ぶりに景気の判断基準となる50を回復したことからも、ドルが強含む中、下げ幅を狭いながらも広げる事となりました。
翌火曜日金相場は6月24日の英国がEUからの離脱を選択した国民投票の結果後以来の最も低い水準へ3%ほど急落することとなりました。
これは、前日英国メイ首相が来年の3月末までにEUからの離脱交渉を始める考えを明らかにしたことからポンドが大きく下げ、株高とドル高になる中で、直近のサポートラインの1300ドルを割ったことで、ストップロスが引き起こり、更なる下げを呼ぶ事になったことからでした。それに加え、ECBがQEテーパリングの必要性でコンセンサス形成近いとブルームバーグが伝え、メスター・クリーブランド連銀総裁に続き、シカゴ連銀総裁の利上げするなら12月の可能性が最も高いが11月もあり得るというコメントも伝えられたことも要因となりました。また、このところコメックスの金先物・オプションのネットロングが積み上げられていたこともポジション整理の売りを進める要因となりました。
水曜日金相場は、前日の下げから更に下げ、一時的に1262ドルをつけることとなりました。
これは、市場注目の金曜日の米雇用統計の先行指標とも見られている9月ADP雇用統計が発表され、15.4万人と予想16.5万人と前回 17.7万人を下回ったものの、9月米ISM非製造業景況指数が57.1と予想 の53.0と前回 51.4を上回ったことからも、米利上げ観測が広がり、押し下げられることとなったことからです。
木曜日金相場は、翌日の米雇用統計を待つ中、更に下げ幅を広げることとなりました。
それは、同日発表された新規失業保険申請件数24.9万件と予想25.6万件と前回25.4万件を下回り、失業保険継続受給者総数も2000年7月以来の低い水準となり、200日移動平均線の1256.42ドルを割ることでテクニカルの売りも出て、更に下落することとなりました。
本日金曜日は、まずロンドン早朝に2分間で6%ポンドが下落するという、ポンドの急落で始まりました。この要因は誤発注や前日のオランド仏大統領の強硬姿勢や流動性の低い市場であったことなどと推測されていますが、これによりポンド建て金価格は急騰し、今週の下げをほぼ取り戻す水準まで上昇することとなりました。
その後、ロンドン時間昼過ぎに発表された市場注目の9月米非農業部門雇用者は15.6万人と想 17.2万人を下回りましたが、前回 15.1万人を上回りました。また、前回数値は16.7万人へと上方修正されていました。失業率は5.0%と前回と予想の4.9%を上回ることとなりました。
この発表を受けて、ドル建て金相場は1265ドルまで10ドルを越えて上昇しましたが、その後その上げを失い、下げ幅を更に広げつつあります。
その他の市場のニュース
- コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に米大統領候補の第一回のTV討論後にクリントン氏の優勢が伝えられ、トランプリスクの後退から金相場が下げていた中、3週間ぶりに増加していたこと。
- 先週金曜日にロンドン貴金属市場協会(LBMA)が、貴金属のトレーディングプラットフォームに関して、金融業界のITスペシャリストであるAutilla社とBoat社と話を始めていることを関係者の話として、ブルームバーグが伝えていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週は弊社が毎月まとめている金投資家インデックスの最新データが火曜日に発表され、日本語で金の情報を網羅するゴールドニュースサイト「【金投資家インデックス】米大統領選への懸念が後退、金需要が減少」と取り上げられました。
また、日本のビジネスマン向け雑誌の「DIME」で金の新たな取引事情として、弊社の日本における独占正規独占媒介代理店ブリオンジャパンの平井CEOのコメントと共に、オンラインでそしてスマホで金の取引ができる弊社サービスが取り上げられています。
今週の金相場の急落で、ブリオンボールトでの取引量がBREXIT以来の高水準になったことが、多くの欧米主要メディアで取り上げられました。
ここでは、火曜日のポンドの暴落で、弊社における英国顧客が牽引し、金の購入が進みむことで、同日の取引量は1180万ドル(約12億1600万円)を超え、前週の平均取引量の6倍で、6月24日の英国のEU離脱が国民選挙で決まった日以来の取引量となったこと、そして購入者が売却者を7対1で上回っていたことが取り上げられています。また、リサーチ主任エィドリアン・アッシュの「投資家は価格が下がるのを待っていたことが明らかとなった」というコメントも紹介されています。
- CNBC「英国の消費者が金現物の購入に走る」
- 米経済サイトMoney Morning「金スポット価格:今が買い時」
- シカゴ・トリビューン「3年来の急落をした強気市場の金相場が安定」
また、米著名経済サイトのMarket Placeサイトで、中央銀行が金の購入を進めていることをレポートし、ブリオンボールトのリサーチ主任のコメントを紹介していました。
それは、「金は破綻することもなく、意図的に供給を増加させインフレを起こすこともできません。この特徴が市場に動きがある際に魅力となるのです。そして、金は他の資産が収益率を落としている際に上げますが、人々が中央銀行へ信頼を失った時に最も良いパフォーマンスを見せます。」というコメントでした。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週の英国からのニュースとしては、ここでも何度か取り上げた、英国のEUからの離脱を唱え、欧州懐疑主義を掲げる右翼政党の英国独立党(UKIP)が、今週何度かヘッドラインを飾っていましたので、そのことについてお伝えしましょう。
英国独立党は、今年6月の英国のEU離脱の是非を問う国民投票では、離脱派としてカリスマ的党首のナイジェル・ファラージ氏に率いられてキャンペーンを繰り広げていました。そして、離脱派が勝利したことから、ファラージ元党首は役目を終えたとして辞任し、9月16日に後任のダイアン・ジェームス氏が新党首として選出されていました。
しかし、今週4日に就任以来18日で、党員の十分な指示を得られていないことを理由に辞任をしたことが伝えられていました。そして、昨日は、新党首の有力候補と見られているスティーブン・ウルフ氏が、フランス・ストラスブールの欧州議会での会議で自党議員らと「口論」を交わした直後に倒れ、病院に搬送されたことが伝えられていました。
当初ニュースで伝えられた際は、その容態が「深刻」とされていましたが、本日の段階では「大事を取って」の入院であったとのことです。
そして、本日はウルフ氏が「口論」をしたとされる同党の欧州議会議員マイク・フッケム氏が、一部報道で伝えられていた「フッケム氏がウルフ氏を殴った」という事実はないという声明を発表しています。
今週メイ首相がEU離脱交渉を来年3月末までに始めるとしたことで、ポンドが暴落とも言える下げを見せ、本日更に下げていますが、EUに残留することを望んでいた人々にとっては、この大切な時に、離脱を推進していた党が混乱状況にあることに、ただただ呆れ笑うこともできないように感じているようです。