ニュースレター(10月21日)1266.05ドル ドル高が一服する中200日移動平均を上回り、金相場上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1266.05ドルと前週同価格から1.1%上昇しています。
週明け月曜日は薄商いの中、金相場は狭いレンジながら緩やかに上昇することとなりました。
火曜日金相場は、ロンドン午前中には緩やかに上昇していましたが、昼過ぎに発表された米消費者物価指数が、市場予想と同レベルではあるものの、前月比で4月以来、FRBが重視する前年比では2014年10月以来の高水準となったことから一時的に下げたものの、市場が注目するコア(食品やエネルギーを除いた)数値は、予想を下回ったことからもドル高が一服し、その後下げ幅を取り戻すこととなりました。
水曜日金相場は、ドルが弱含む中緩やかに上昇し、2週間ぶりの水準となりました。この要因としては、1264ドルに位置している200日移動平均線を上回ったことで、テクニカルの買いが入ったこと、米住宅着工件数が予想を下回るものとなったことがあげられています。
木曜日金相場は、ロンドン昼過ぎに欧州中央銀行が政策金利と量的緩和の現状維持を発表したものの、ドラギECB総裁が理事会後の会見で、量的緩和の縮小について協議しなかったと語ったことから、ユーロ売りが進みドル高となる中、下落することとなりました。
本日金曜日は、金市場は薄商いで狭いレンジでの取引となっていますが、金相場はほぼ全ての通貨建てで緩やかながらも上昇しています。なお、ポンド建て金相場は、トロイオンスあたり1035ポンドと、ポンド安が進む中2013年4月以来の高い水準を保っています。
その他の市場のニュース
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中国の工業情報化省が、中国の金の消費量が、2016年から2020年までで年間4%増と、2010年から2015年までの11.5%から下げると予想したことを今週発表したと伝えられたこと。これにより、昨年の年間消費量の986トンに対し、2020年には1200トンとなる予想であるとのことです。また、産出量も2015年の450トンから2020年の520トンへと増加することも予想したこと。 -
先週末発表のコメックク金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に前週比25%減と2週連続で減少し、重量においては、金利引き上げ観測で金相場が下げていた今年3月15日以来の低い水準となっていたこと。 -
それに対し金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは、先週残高を6.6トン増加させ、前週比0.7%増としていたこと。また、今週も昨日までで、4.8トン増加させていること。
ブリオンボールトニュース
火曜日まで開催されていたLBMA年次会議での参加者による1年後の価格予想が7%上げるものであることをレポートするブルームバーグの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられてました。
ここでエィドリアンは、「価格予想は若干強気でした。これは、市場全般の意見に沿ったものです。年次会議でのプレゼンテーションは、投資家が金投資へ今後向かうことほのめかすものでした。しかし、消費市場を見ると、インドの需要は低迷し、中国(経済のハードランディング)のリスクは明らかに存在しています。これは良い兆候ではないでしょう。」とコメントしています。
英国投資家が金相場の下落にもかかわらず金を購入しているという英国主要日刊紙のオンラインサイト「Mail Online」で、ブリオンボールトの取引データが取り上げられました。ここでは、10月4日にポンドが急落した際に、ブリオンボールトにおける取引高が、EU離脱の国民投票の結果が出た6月24日以来の高水準の920万ポンド(約12億1600万円)となったことを紹介しています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週の英国からのニュースは、元英国代表のサッカー選手ギャリー・リネカー氏が、英国に受け入れられた難民を擁護するコメントで、英国主要タブロイド紙と争うことになってしまったニュースをお届けしましょう。
これは、フランスのカレーの「ジャングル」と呼ばれている移民キャンプが年内で撤去されることが9月に発表され、ここで暮らしている18歳未満の難民のうち、英国に親戚がいる場合は受入れるとし、今週39人が英国に渡っていました。
しかし、このニュースで写っていた難民の年が18歳未満に見えないと、複数の英国タブロイド紙が取り上げ、保守党議員のDavid Davies氏も、ツィッターで同様のコメントを出していました。
それに対し、現在はBBCのスポーツ番組のプレゼンターを勤めるギャリー・リネカー氏が、これらのコメントは人種差別的だとツィッターでコメントし、この難民たちを擁護たことから、タブロイド紙がリネカー氏の降板をBBCに要請するなど、議論を引き起こしていました。
英国赤十字によると、2015年の英国への難民申請数は38,878件で、そのうち45%が認められたとのこと。それに対し、ドイツは43.1万人、スウェーデンは16.3万人など、高い水準の難民申請が行われ、多くを受け入れてきています。
このようなことが議論になるほど、難民受入れに関する一般の方の懸念が高いことが明らかになるとともに、英国の多くの人々は難民受入れ、特に未成年の難民が既に英国に受け入れられている難民の家族へ合流することを問題と感じていないこともリネカー氏へのサポートからも見られることとなりました。
このキャンプで暮らす多くの難民を含む移民は、英国を目指す理由について、手厚い福祉に加えてフランスなどに比べて「仕事が見つけやすい」と話しているとのこと。手厚い福祉を目的とした経済移民を受け入れることは避けなければならないながらも、それを見分ける困難さと、人道的立場に立った際に、ジャングルと呼ばれる過酷な移民キャンプで過ごす子どもたちを何とか助けることはできないものか、今後も英国政府は難しい判断を強いられることとなりそうです。