ニュースレター(1月29日)1111.80ドル FOMC、ロシア原油減産提案、日銀マイナス金利等で、金相場は上昇後戻す
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1111.80ドルと、前週同価格から0.5%上昇しています。
週明け月曜日は、原油安、欧米株安の中、上昇することとなりました。
翌火曜日金相場は、原油が前日の下げから反発し、好決算、翌日のFOMCのハト派的コメント観測などもあり、欧米株式が上昇する中、今年最高値で昨年11月初旬以来の水準のトロイオンスあたり1121ドルを付けることとなりました。
水曜日、市場注目のFOMC後の発表で政策金利は据え置かれましたが、声明文の「世界的な経済・金融情勢を注意深く見守る」などというコメントがハト派的と解釈された模様で、金価格は一時トロイオンス1128ドルまで上昇することとなりました。
木曜日は、緩やかに金相場が下げることとなりました。
その要因は、前日のFOMC声明がハト派的という解釈で上昇した金相場が利益確定売りで押し戻されたこと、更なる原油安にストップをかけるために、ロシアが減産提案を行なったことによる原油高が株高を引き起こしたことから等です。
この間、ロンドン時間午後に発表された米国耐久財受注は予想の-0.6%を大きく下回る-5.1%となり、多少金の買いを誘いましたが先の要因で押し戻されることとなりました。
また、同日銀現物価格が、LBMA銀価格が決まる12時前後に大きな売りがあったとのことで、 2009年7月30日以来の低値のトロイオンスあたり14.15ドルへと急落することとなりました。この間コメックス先物価格は0.80ドル上回る価格で取引がされるという不自然なものとなりました。
これは、LBMA銀価格のオークション参加者は、それぞれの社内のコンプライアンスで、オークション時に他の市場との裁定取引を同時に行うことが認められていないことが原因と市場関係者はコメントしています。
.本日金曜日の日銀金融政策決定会合では、マイナス金利の導入が5対4で决定され、マネタリーベース年間80兆円増加の方針は維持されました。これを受けて、為替市場は円安となったために、円建て金価格は上昇することとなりました。
ドル建て金相場は、日銀の更なる金融緩和で対ドル円高となり、世界の株価が上昇し、原油も昨日の流れを受けて上昇する中、米第4四半期GDPが予想を下回ったものの、既にFOMCの声明でも「米経済が昨年末に鈍化」と織り込まれていたことから、狭いレンジでの取引となりました。
その他の市場のニュース
- 金と銀のレシオ(価格の比率)の月間平均が、過去7年間で最も高い水準を記録し、この水準は過去20年間に74日のみ達したことがブリオンボールトリサーチによって明らかになったこと。
- バークレイズ銀行が中国人民銀行が2016年に200トンを購入することを予想していることが伝えられたこと。
- 先週金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシャアの残高は3.4%増と、昨年11月以来の高い水準で増えていたことが明らかとなったこと。
ブリオンボールトニュース
英国の著名経済サイトThis is Moneyの「今金は買い時なのか?ー 株式市場が揺れる中、投資家は安全資産の金を再検討している。」の記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここでエィドリアン・アッシュは、「金は、金融システムの保険のようなものであり、他の資産が順調であれば金相場は落ちる。しかし、株式市場や自国通貨に懸念があるのであれば、長期的には有効な資産だ。当然保険は安い時に購入するのがベストだろう。」と述べています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週のロンドン便りでは、単独無支援で南極横断を試みた英探検家ヘンリー・ワースリー氏についてご紹介しましょう。
残念ながら、ワースリー氏は、913マイル(1469キロ)を71日間かけて踏破しながらも、ゴール直前30マイル(48キロ)地点で体調不良から断念し、救援されたものの、今週日曜日に多臓器不全のために亡くなりました。
もし、この偉業が成功していれば、世界初の快挙となるはずでした。
ヘンリー・ワースリー氏は55歳、英国特殊空挺部隊の元隊員で、36年の軍隊生活を経て昨年10月に定年し、今回はこの探検を通じて傷病兵を支援するチャリティー団体への寄付を募り、10万ポンド(1800万円)の寄付が出発前に集められていました。その後、ワースリー氏の死亡が伝えられる中、賛同者が広がっており、25日の段階では13万5000ポンド(約2290万円)に達しています。
ワースリー氏は既に南極探検は、現存する異なる3つのルートで成功しています。これは世界でこれまでに彼一人であるとのこと。今回は、単独無支援を、既に凧を使って備品が乗る150キロのそりを引っ張って南極横断をしたBørge Ousland氏とは異なり、凧も利用せずに南極横断を試みていたのでした。
今回、この単独無支援南極探検になぜ挑むのかを聞かれた時に、「傷病兵を支援したいから」と答えていたことが伝えられています。この傷病兵を支援するチャリティー団体のパトロンでもある、ウィリアム王子はワースリー氏の死に際して下記のようなメッセージを残しています。
「ハリー王子と私は、ヘンリー・ワースリー氏が亡くなったことを聞き、悲しみに包まれています。彼は素晴らしい勇気と決断力を持ち合わせ、私達は彼と関わることができたことを限りなく誇りに思います。私達は友人を失いました。しかし、彼の遺志は受け継がれることでしょう。特に、この寄付金によってサポートされる傷病兵へは。私達は、今困難な時間を過ごしている彼の残されたご家族が、今後十分なサポートを得られるように力を尽くします。」
ヘンリー・ワースリー氏のご冥福を心からお祈りいたします。