ニュースレター(1月27日)1184.85ドル トランプ大統領の経済政策期待でリスクオン基調となり金は下落
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1184.8ドルと、前週同価格から1.3%下落しています。
月曜日金相場は、ドルが弱含む中、11月22日以来の高値のトロイオンスあたり1220ドルまでニューヨーク時間終了後に上昇することとなりました。
同日は、トランプ大統領がTPP離脱の大統領令に署名したこと、また、ビジネスリーダーとの朝食会で「極めて大規模な減税を実行し、規制を75%削減することが可能。しかし米国外移転企業からの輸入品には大幅な関税を課す」と語ったことが伝えられるなど、市場の懸念を高めていたことが要因となりました。
そして、同日夜の上院における質疑でムニューチン次期米財務長官が「短期的には強すぎるドルが経済にマイナスの影響を与えることも時折ある」と語ったことが伝えられ、ドルが弱含んでいたことから更に金相場を押し上げる事となりました。
火曜日アジア時間には緩やかに上げ幅を失い、欧米株価が上昇する中、1210ドルを割り下落することとなりました。
同日は多くの米国大手企業の決算報告が相次ぎ行われ、その多くの結果が良好であったことが株価を引き上げることとなりました。また、トランプ大統領が、同日カナダから米国に原油を輸送する「キーストーンXL・パイプライン」、および 米ノースダコタ州に敷設予定の石油パイプライン「ダコタ・アクセス」の建設を推進する大統領令に署名したことが伝えられ、また、米国内で建設されるパイプライン建設には米国製の鉄鋼製品を利用する必要があるとする大統領令にも署名したことから、経済を刺激し、インフレ上昇観測が高まったことからでした。
また、同日は英国BREXIT関係で、英最高裁が政府が欧州連合(EU)離脱手続きを開始するために議会承認が必要という判決を下していました。
水曜日金相場は、前日の上昇基調を受け継ぎ欧米株式が上昇する中、トロイオンスあたり1200ドルを割り、大きく下落することとなりました。
これは、同日日ダウ平均株価がオープン直後から史上初の2万ドルの大台に乗せるなど、米株式が堅調に展開したことからです。
同日は、トランプ大統領は、メキシコとの国境に壁を造ることなど不法移民対策を強化する複数の大統領令に署名したことから、前日のパイプラインと同様に、メキシコとの国境の壁の建設も経済刺激となると解釈されたとのことです。
木曜日金相場は、日経を含むアジア株が、昨日のS&Pの史上初の2万ドル台への上昇を受け継ぐ上げを見せるなど、市場のセンチメントがリスクオンとなる中、ドルインデックスも100を越え、トロイオンスあたり1186ドルと2週間ぶりの低さへと下げ幅を広げることとなりました。
なお、同日発表された米主要経済指標の新規失業保険申請件数は上昇し、新築住宅販売件数は減少するなど、多少経済の停滞が感じさせられる結果となっていました。
本日金曜日は、前日の下げ幅を広げていましたが、同日発表された米国第4四半期GDPが予想と前回を下回ったことからも、ドルが弱含み多少その下げ幅を取り戻しています。
その他の市場のニュース
- 先週末発表のコメックス先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に2週連続で増加していたこと。しかし過去10年間の平均の半分ほどの量。それに対しコメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、過去10年間の平均の2.2倍とかなり強気のポジションとなっていたこと。
- 金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは、先週金曜日に1.2トン残高を増加させた後、今週は火曜日に2.1トン、水曜日に3トン、木曜日に5トンと減少を続け、残高が800トンを切り、799.07トンとなったこと。これは、昨年5月16日以来。
- 金のスイスから中国への輸入額が、12月に158トンと急増していたこと。
ブリオンボールトニュース
今週も日米の主要メディアでブリオンボールトが取り上げられています。
- ブルームバーグ日本「盛り上がるプラチナ人気、金と価格逆転で投資魅力増す-英社や東商取」
この記事では、プラチナと金価格逆転が続く中、ブリオンボールトが、需要の取り込みを狙い、プラチナの国際調査機関であるワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)と昨年提携をし、プラチナサービスをまず欧米顧客をターゲットに3月にも開始することが取り上げられています。
そして、私の「プラチナと金価格が逆転していることを投資機会と見る日本の個人投資家のプラチナ地金の投資需要は根強い」、「市場のポテンシャルは高い」のコメントも紹介されています。
日本へのサービス提供は将来的に行う予定とも紹介されています。
- 英主要経済サイトThis is Money及び英主要日刊紙ディリーメイル「誰が金を買っているのか。そして、今後金は上昇するのか?」
This is Moneyの投資番組で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュがインタビューに答え、「投資家にとっての金の投資商品としての魅力は他の投資商品と異なる動きをすることから保険の役割であること」とコメントし、英国投資家が過去20年間に金を10%ポートフォリオ(株60%と債券40%)に含んでいた場合、含んでいないポートフォリオより収益率が良かったという結果が出ていることを紹介しています。
そして、2016年にBREXITやトランプ大統領と市場の予想を覆すイベントがあったことに言及し、2017年も政治的イベントが続くことからも金の保険の役割は重要となるだろうとコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、週の前半は英最高裁が政府が欧州連合(EU)離脱手続きを開始するために議会承認が必要という判決を下したことが、広く伝えられていましたが、本日は、テリーザ・メイ英国首相が、外国の首脳としては初めてトランプ氏の大統領就任後に会談をすることからも、メイ首相の米国訪問関連のニュースがトップで伝えられています。
しかし、本日は先週末に行われた、トランプ大統領に抗議をする「ウィメンズ・マーチ」に絡んだエピソードが、英国メディアで取り上げられていましたので、ご紹介しましょう。
これは、英国の朝の番組で人気の高い民放のITV「Good morning Briten」に出演予定であった英国俳優のユアン・マクレガー氏が、「ウィメンズ・マーチ」を非難した司会者のピアーズ・モーガン氏からのインタビューを拒み、もう1人の司会者のスザナ・リード氏のみとのインタビューを希望しましたが、受け入れられなかったために、出演を拒否して帰ってしまったというものでした。
この決断を、ユアン・マクレガー氏のツイッターで知ったモーガン氏が、番組でその決断を批判し、さらにコラムを持っている英国主要日刊紙ディリー・メイルでも、マクレガー氏を批判する記事を掲載していたのでした。
モーガン氏は、元は英国主要日刊紙のディリー・ミラーの編集長でしたが、2004年に英兵等によるイラク人拘束者への虐待写真を掲載したものの、それが偽物であることが判明し、解雇処分となっています。
しかし、その後彼の人懐っこい中にも鋭い質問を向けて、有名人からの思いがけない一言を引き出すインタビューの才能が認められ、CNNの看板トーク番組「ラリー・キング・ライブ」の後番組のホスト役に2010年に抜擢されるなど、米国でも活躍をしたのでした。そして、トランプ大統領はその頃からの友人であるとのこと。
今回は、互いに異なる意見を持つ同士が、著名人であるがためにその意見が公で伝えられ、トランプ大統領という話題の人物に関わることであることからも、より大きな話題となってしまったようです。
言論の自由は重要ですが、異なる考えを受け入れる寛容さが欠けた、揚げ足を取るような批判中傷を行う風潮が、トランプ氏の大統領選、大統領就任後も広がっているようで、残念ながらこのニュースは読んだ後に後味の悪さが残るものでした。