ニュースレター(1月23日)1294.75ドル ECB量的緩和期待と予想を上回る規模の発表内容が金相場を押し上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1294.75ドルと前週同価格から1.3%上げています。
先週のスイス中銀がスイスフランの上限を撤廃したことから昨年9月以来の水準へ上昇していた金相場は、週明け月曜日、米国市場がキング牧師の誕生日の祝日で休みである中、狭いレンジでの取引となりました。
翌火曜日は、ロンドン時間早朝に中国の第4四半期GDPが予想を上回ったことが発表された後、トロイオンスあたり1290ドルまで上昇し、ロンドン時間午後には1296ドルと過去5ヶ月の最高水準にまで上昇しました。
先週のスイスショック、今週木曜日のECB金融政策発表で開始されると予想される量的緩和、そして週末のギリシャ総選挙結果への懸念などが、投資資金の「質への逃避」を起こし、金市場の追い風となりました。
水曜金相場は、トロイオンスあたり1304ドルに達し、過去5ヶ月の最高水準を更新しましたが、その後1293ドルまで押し戻されてることとなりました。これは、翌日の欧州中央銀行の金融政策発表で予想されている量的緩和を前に、欧米の株式市場が上昇していたことや今週の金相場上昇の反発が要因であった模様です。
木曜日は、市場注目の欧州中央銀行の金融政策発表が行われ、政策金利は0.05%と据え置かれ、予想されていた量的緩和が発表され、その規模が毎月600億ユーロで2016年9月までと、市場予想を上回ったことから、ユーロが対ドル1.15まで大きく下げる中、金相場はトロイオンスあたり1303ドルまで上昇することとなりました。
金ETFがその残高を増加させていることからも見られるように、金に対する市場全般の見方も変わってきているようです。それは、ECBによる量的緩和予測 が広がる中、既にドイツ国債は6年物までマイナス利回りとなっており、他のイタリア、フランス、スペインなどのユーロ圏内の国債も軒並み利回りを下げてい ることから、金利を生み出さない金ですら も、マイナス利回りの国債よりは魅力はあるということなども要因ではある模様です。
金曜日は、前日大きく下げたユーロが戻す中欧州株価も上昇し、金相場は利益確定も入り、押し下げられることとなりました。
その他市場のニュース
- SPDRゴールドシェアの残高が、月曜日に11.35トン増加し、今月に入り34.65トン増となったこと。この先週のスイスショック以降のSPDRゴールドシェアの3日間の増加幅は、重量にすると2010年5月以来の高水準であり、増加の割合にすると、2009年2月以来のものとなったこと。
- ドイツ中央銀行の金準備をドイツ国内へ7年間かけて輸送する計画の下、最初の2年間で23%が既にニューヨークとパリからドイツへ輸送されたとのこと。
- 今週予想されているECBによる量的緩和発表を前に、月曜日デンマークの中央銀行がマイナス金利へと政策金利を引き下げたことから、デンマークのクローネ建て金価格が、過去20ヶ月で最高水準の、11月より22%増となったこと。
ブリオンボールトニュース
先週のスイスショック、今週のECB金融政策発表等の金相場を動かすイベントが続く中、ブリオンボールトのコメントが下記のように多く取り上げられました。
- 日経電子版: ECB量的緩和、市場関係者「株高・円安進む」
ECB量的緩和発表後の市場関係者のコメントをまとめた記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが、野村證券や岡三証券のアナリストと共に取り上げられました。
- 日経速報ニュース: 「無国籍の金」、通貨奔流に備えるユーロ圏から買い 米ドルも頼れず
ブリオンボールトのドイツ、フランス、イタリアの顧客数がECBの金融政策発表を前に前月比41%急増し、スイスショック時には3年間の平均取引量の2倍となったことが取り上げられました。
- 英国主要日刊紙テレグラフ: スイス中銀の動きによるゴールドショックが、新たな金相場上昇を引き起こす可能性がある
ブリオンボールトのエィドリアン・アッシュの 「ブリオンボールトの金・銀取引量が2013年春以来の高水準となっている。そして、過去のイングランド銀行や米国連邦準備制度理事会の例を見るとする と、ECBの量的緩和の発表されると、金相場は短期的に上昇することであろう。」というコメントが取り上げられました。
- ファイナン シャルタイムズ: ECB量的緩和期待から金上昇
ブリオンボールトのリサーチ主任のコメント「過去に欧米の中央銀行が量的緩和を行う前に、金相場は上昇していた」というコメント が取り上げられました。
- ウォール・ストリート・ジャーナル: ドイツ、フランス、イタリアが金を購入
ECBによる量的緩和開始観測が広がる中、ブリオンボールトのユーロ圏3大経済、ドイツ、フランス、イタリアからの新規顧客数が前年同月比既に41%増と急増していることがレポートされました。
今週の主要経済指標の結果は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週からロンドンオフィスに戻ってまいりました。
今年一番のロンドン便りは、今年5月に行われる英国総選挙のテレビ討論についてのテレビ局と政府の駆け引きについてのニュースをお届けしましょう。
英国においては、総選挙前の党首のテレビ討論は前回の2010年に行われたのが初めてで未だ新しい試みです。2010年には、当時の首相であった労働党のゴードン・ブラウン党首、現首相のデビット・キャメロン保守党党首、現副首相のニック・クレッグ自由民主党党首の三人で討論は行われました。
この際、最も少ない議員を抱える自由民主党党首のニック・クレッグ氏が思いの外健闘し、保守党と労働党の一騎打ちであった選挙戦のムードが大きく変わったのでした。
そのため、TV討論は政権を持つ党よりも、野党にとって有利であり、特に小さな党ほど認知度を高められる利点があることも確かです。
そこで、昨年10月にテレビ局が提出した今回のTV討論のフォーマットに、討論に長けている英国独立党(UKIP)の党首である、ナイジェル・ファラージ氏が労働党と自由民主党と共に含まれたために、キャメロン首相は同様の規模の緑の党が参加しない限り、参加することを拒否すると答えていました。
そして、今日新たにテレビ局が緑の党とスコットランド国民党とプライドカムリ(ウェールズの党)の7党での討論を提案したのでした。そして、今回はどの党首が不参加であっても、テレビ局はTV討論は決行するとしているため、キャメロン首相は、ある意味追い詰められたといえるかもしれません。
TV討論に出るメリットよりもデメリットが大きいキャメロン首相と、この機会を最大限に利用して得票数を伸ばしたい野党との駆け引きは、TV局の思惑も絡み、面白いドラマを生み出しています。