金市場ニュース

スタンダードバンク相場予想 2014年1月10日付け

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、2014年のスタンダードバンクの金相場予想をまとめています。

今年最初の相場予想が入ってきたので今週はその中からゴールドとシルバーを紹介しましょう。

 

「ゴールド」

■価格回復はゆっくりと静かに

2014年の平均価格は2013年のそれよりも低くなることを予想。(2013年1411ドルに対して2014年1213ドル)しかし、2014年下半期には底を打つことを予想。ゴールドの需要は、ポートフォリオタイプの投資ではなく、現物の実需によりコントロールされるであろう。アジアからの現物需要は1200ドルでは非常に強いものがあるが、この需要はとても価格に対して敏感であり、もし大きく上昇すれば現物需要はとたんにその勢いは弱まるだろう。

実需の買いが非常に活発であった6月や7月と価格的にはほぼ同じレベルであったのだが2013年11月12月はアジアの実需はとても静かになった。しかし続いているゴールドETFからの売りや米国長期国債の利率の上昇にもかかわらず、2014年第一四半期には旧正月を前にして中国の需要は回復し、1200ドルはサポートされると考える。米国長期債は2014年の終わりまでには現在の3%から4%に上昇すると予想し、これはゴールドにとってはマイナスの材料となる。

■2014年第二四半期が今年の最安値になる

中国の旧正月休暇が終わると実需の買いはなくなり、ゴールドの支えがなくなることを予想。第二四半期は今年のもっとも安い時期になるであろう。われわれの短期的な考えはそのため、ゴールド上昇局面では売り。

香港から中国へのゴールド輸入量とインドのゴールド輸入量とETFの売り数量の比較を中止しているが、2013年はほぼこの売買が拮抗していた。(Figure1)しかし2013年後半にはインド公的な輸入量は、ルピーが弱含んだこと、そしてインド政府の政策によりゴールドの輸入関税を上げたことから激減した。ゴールドが価格を回復する必要条件として、インドの需要が増加し、中国の需要を維持する必要がある。

長期的には今後5年間の間にゴールドは上昇すると考える。通貨的側面からはゴールドは過小評価されており、価格は上昇しておかしくない。しかし今後1年を考えると米国債の利回りが上昇する状況にあり、ゴールドの大幅な価格上昇は考えづらい。しかしより長期的にはETFの売りが止まり、鉱山会社の生産コストの圧力も加わり、アジアの宝飾加工需要に助けられて上昇するものと考える。

 
 

「シルバー」

■2014年は20ドル以下の取引を予想

ゴールドの見方と同じく2014年はシルバーも20ドルを割り込んだ相場を予想し、少し改善するとすれば下半期になるだろう。

シルバーに対するファンダメンタルな見方は変わらず、需給構造は弱いまま、在庫はまだ豊富に存在していると考える。実際、中国に存在する地上在庫は17か月分と計算され、2012年年初の16ヶ月分からも増加、2009年にはたったの4か月分であったことを考えると非常に大きな在庫が存在することになる。

2010年以降中国が輸入したシルバーの数量を見てみるとなぜ中国の在庫がこんなにも高レベルであるのかがよくわかる。2009年には中国はまだシルバーの輸出国であったのが、輸出時の税金還付の中止、そして国内需要の増加により、2010年には輸入国になった。この年には毎月平均298トンのシルバーを輸入し、国内の鉱山とスクラップからの生産288トンを足すと毎月586トンものシルバーの供給があったことになる。これに対して2010年の一月あたりのシルバー加工需要は330トンであり、毎月256トンもの供給過多になっていたと言える。この供給過多の部分は投資家の需要によって消費されるか、加工業者の在庫としてたくわえられていたと考えられる。2012年には中国の銀輸入は2010年の298トン/月から166トン/月へと大幅に減っているが、まだ中国の地上在庫は増える一方である。

この中国の状況を考えると、シルバー価格が大幅に持ち直すには二つのシナリオが必要。

1. 国内地上在庫を一掃するために加工用および投資用の国内での需要増大

2. 中国がもう一度シルバーの輸出国になる必要性

第1の点では、中国の製造業は改善されてきているものの、まだ大きな変化を作るためにはまったく不十分。第2の点では、もし中国がまたシルバーの輸出国となったとしても、これはただ単にシルバーの置き場が変わっただけで、消費されたわけではなく、価格動向に対して中立的である可能性が否定できない。

 

そのため中国の地上在庫を一掃する可能性はやはり国内需要の増大を期待するしかない。在庫の増加のペースは幾分遅くはなっているが、まだ増え続けており、それが現在シルバーの価格の頭を抑えている。そのため今年2014年もシルバーは苦しい展開になると予想する。その上、シルバーのゴールドに対するベータ値(感応度)は 1.4となっており、ゴールドが下がればシルバーはより苦しい立場となることが予想される。

シルバーの抱えるもう一つのリスクは増え続けているETFの残高。もし金利が大きく上がることがあれば、これは大きな売り圧力となる可能性がある。

 
以上

 

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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