ゴールドとプラチナの現物の動き
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、昨今のゴールドとプラチナに関するニュースを解説しています。
今週はゴールドとプラチナの現物の動き関係の話題を書きましょう。中国のゴールド輸入、英国からのゴールドの動き、そして南アのプラチナ輸出先に関する話です。
2月17日にThe China Gold Associationの発表した統計によると、2013年の中国のゴールドの需要は前年比41%増加し1176トンとなり、インドを追い抜き世界最大の ゴールド需要国となりした。中国は香港経由で1158トンと2012年の倍以上のゴールドを輸入しました。そして中国国内では428トンのゴールドを産出 し、これも前年から6%の増加となっています。またその上に、上海からの直接のゴールドの輸入もあります(その数字は発表されませんが)。これらの公表さ れた数字を積み上げると、中国のゴールド消費量は、2013年は1700トンを越え、実際に発表されているより500トンも多いということになります。
2013年のゴールドマーケットは両極化したと言えます。欧米の投資家の売り、アジアの実需家の買い。その現物の動きの特徴は、英国からスイスを経由し てアジアへという動きでした。そしてそれはちょうど一ヶ月のずれを持って起こりました。投資家がETF(ラージバー:400オンス=約12.5kg)を売 り、それをロンドンからスイスへ空輸、1kg バーなどの小売用のバーに鋳なおし、それがインドや中国に輸出されるというプロセスです。英国のゴールド輸出の77%はスイス向け。香港とUAEが16% を占めます。今年はこの英国からスイスへの輸出はETFの売りが減少するのにつけて大きく減少することが予想されます。
南アは1月に106000tozのプラチナをスイスに輸出しました。(12月は33500toz)しかし2月にはその量は大きく減少するはずです。1月上旬から始まったストライキの影響でメタルのデリバリーに支障をきたすはずです。
英国の1月の輸出入統計はまだでていませんが、同じように南アから英国へのプラチナ輸出を計算すると2010年からマリカナ事件までの間の平均は 27000tozであり、事件以降は45800tozに増加しており、これはスイスと同様に6週間分の鉱山生産が余分に輸出されていることになります。
ロンドンに輸出されたプラチナの一部はETF見合いであると思われますが、それ以上にプラチナが運ばれています。スイスだけでも過去2年間に 2.16moz(約67トン)のプラチナをロンドンに輸出しており、2010年からの累計にすると4moz(約124トン)のプラチナがスイスからロンド ンに移動しており、そのほとんどがロンドンを出て行っていません。2013年年初にはロンドンには3.27moz(約101トン)のプラチナ在庫が存在 し、年間に251,000toz(約7.8トン)輸入しているので、年末には3.52moz(約109.5トン)まで増えていたと考えられます。結果的に はこの在庫はETF見合いの分だけではなく、南アの鉱山会社がいざというときのために在庫をしておいたものであると考えられます。この結果、彼らはスイス とロンドンに合計して12週間分の在庫があると推測します。
ストライキはまだ5週目ですが、これが12週間以上続いて初めて価格が上がり始めると思います。ただ在庫がどれほど売りとして出てくるかということに、 ここからの相場の上昇は左右されると思います。プラチナの地上在庫の量が多いため、もし1500ドルを超えるような上昇があったとしてもそれは一時的な上 昇となり、投資家の買いが一息つくとどうしてもラリーに維持は難しいのではないかと思います。
以上