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【2022年中間調査結果】個人投資家の金と銀投資の理由と2022年末価格予想

 
ブリオンボールトのエイドリアン・アッシュは、「奇妙な投資戦略である」と述べています。
 
それは、ある資産を購入し、保有する。しかし、その資産が値下がりするリスクを受け入れるというものです。
 
私たちは未来を予想することはできても、それを知ることもできません。
 
だからこそ、投資リスクを分散させることは、常に賢明なことなのです。たとえ、貴金属価格が下落するかもしれないと思う時に、金や銀を所有することを意味するとしても。
 
この戦略は、ブリオンボールトのウィークリーレポートを購読している個人投資家を対象とした最新のアンケート調査でも顕著に表れています。
 
金銀地金に投資している主な理由を尋ねたところ、「貴金属が強気相場であるため」と答えた回答者は、27人に1人以下となっていました。
 
それに対し、3人に1人の回答者(正確には33.9%)が、「分散投資」を第一の動機として挙げています。
 
これは、昨年夏の30.1%、2020年半ばの27.0%から上昇していました。
 
そして、「通貨安とインフレ」が再び上位を占めることとなりました。
 
ブリオンボールトの2022年中間調査における貴金属投資の理由
ブリオンボールトの顧客は大半が北米と西ヨーロッパに居住し、この地域ではインフレが40年ぶりの高水準で推移しており、現金の購買力の低下が多くの人々を貴金属の購入と保有に向かわせ続けているのです。
 
実際今年の夏の中間調査では、「インフレ」が貴金属投資の主な理由と答えた人々が全体の39.2%を占め、貴金属投資目的の一位となっていました。
 
生活費の高騰を主な理由としているのは、今年の夏に限られたことではありません。今回の「インフレ」への投票率は、2021年夏の39.6%とほぼ同水準で、2020年夏の数値を1.3ポイント上回ったに過ぎなかったのです。
 
当時のインフレ率は、米国でも英国でも1%台がやっとで、ユーロ圏では実質マイナスを付けていました。
 
つまり、個人投資家の貴金属需要は、インフレへの不安と分散投資の必要性によってもたらされていると言って良いでしょう。そして強気相場は貴金属投資の理由としてはリストの最下位に来ていました。そして、これはブリオンボールトの最新のアンケート調査における個人投資家による価格予測からも明らかとなっています。
 
ブリオンボールトの2022年中間調査における金価格予想
 
現在の金地金所有者の予想だけを見ると、ほぼ10人に1人(9.8%)が2022年の年末までに価格が下落すると考えています。そして、16.6%が現在と変わらないと考えています。
 
残りの約5分の1(22.8%)は、金の価格が20%以上上昇すると考えています。
 
そして、2人に1人(約50.7%)は、現在から今年年末までの間に、ドル建て金価格が10%ほど上昇すると考えています。
 
全体として、そして2022年半ばに行われた調査の予想を加重平均した結果、ブリオンボールトの顧客は、金地金がトロイオンスあたり1961ドルで今年を終えると考えていることが分かりました。
 
これは、ドル建て金地金価格で昨年末から7.7%(8月半ばからは5.8%)上昇することを意味します。また、2020年の年末価格を70ドルを上回り、年末の過去最高値を更新することになります。
 
この予想はあまりにも強気すぎるでしょうか?
 
8月半ばまでの年平均金相場は、2021年の平均から3.0%上昇しており、2年連続の年間平均価格の記録を更新しています。そして、LBMAの調査で金相場を予想する専門アナリストが昨年末に出した予想の平均であった1800ドルを既に上回り、これまでの年間平均価格の最高値記録を更新する勢いとなっているのです。
 
それでは、銀投資家のアンケート調査の結果も見てみましょう。
 
銀価格予想においては、金とほぼ同じ傾向が見られています。
 
より 工業用途需要が高い貴金属である銀は、ブリオンボールトの最新のアンケート調査では、10人に1人近くが年末までに銀価格が下落すると予測しており、その割合は8.9%となっています。
 
また、15.2%の人々は変化がないと考えていますが、それでも銀地金を保有し続けています。
 
そして、銀価格は、4分の1強(25.8%)が20%以上の上昇を予測し、金価格よりもわずかに強気な傾向を示しています。
 
また、銀のドル建て価格については、半数(50.0%)の人が、先月の調査時点から10%上昇するとの見通しを示していました。
 
また、銀を保有していない回答者の予想も合わせると、2022年年末銀価格はトロイオンスあたり22.01ドルになると予想されています。
 
この予想では、8月半ばの水準からから5.6%上昇することになります。しかし、金と違って、昨年末から1ドルの下落に相当します。
 
金と異なり、銀は今年も年間平均価格で2021年を下回ると予想されています。
 
ブリオンボールトの2022年中間調査における年末銀価格予想
 
これは、銀が工業用途が6割を占めていることを考えると、納得のいくものです。
 
それは、ほぼすべての人々が、既に景気後退に入っていないとしたら、近い将来の景気後退を予想しており、インフレが再び話題となっていることからです。
 
アンケートに答えた3分の1(34.1%)の人々が、生活費の高騰で投資を削減しなければならなくなっていると答えています。
 
また、12.6%の人は、生活費のために既存の貯蓄や投資を使わなければならないとも回答しています。
 
しかし、回答者の半数以上(53.3%)は、通常通り貯蓄や投資を続けることができるか、購入する資産の量ではなく、投資資産の組み合わせを変えただけであることを意味します。
 
地金を購入し保管している投資家は、平均的な国民全体よりも資産を多く持っている傾向があります。そして、貴金属は、我々の調査の回答者が興味を持っている投資商品ですが、彼らの3分の2(65.7%)は、自己投資資産の80%以上を他の資産で保有しており、彼らは「Gold bug(金の虫)」と呼ばれる金投資家よりもはるかに一般的な投資家を代表しているのです。
 
こうした点を考慮すると、今回の調査では、インフレが人々の生活水準に打撃を与えているだけではないことが分かります。なぜなら、インフレは新規の投資を抑制し、人々の中には貯蓄を止めざるを得なかったり、すでにある貯蓄を使わざるを得なくされているからです。
 
だからといって、インフレヘッジと見られている金や銀購入が今後急増するとは限りません。しかし、株式、不動産、暗号、そしてコモディティ(ロシアが欧州の中核的な供給を握っていることは別としても)等の他の資産クラスにとっては決して明るい状況ではないことは間違いないと言えるでしょう。
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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