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【金投資家インデックス】金投資はインフレ懸念と価格下落で40%増

2021年上半期は、新規の金地金投資が2020年に次いで2番目の高さへ増加していました。
 
過去5年間で最も急激に下落した金価格は、個人投資家にとっては絶好の購入機会であったようです。
 
金地金の需要は、5月にはすでに4月の2倍となっていましたが、6月にはさらに40.1%増加し、月間で約500キロの金地金がブリオンボールトにおいて購入保管されることとなりました。
 
専門市場で取引されているグッドデリバリーと呼ばれる大型の地金バーの金の価格は、先月、米ドル建てで7.2%下落し、2016年11月にドナルド・トランプ氏が大統領に選出されて以来、最も急激な月間の下げ幅となりましたが、ユーロ建てでは4.9%減、英国ポンド建てでは5.0%減と、下落幅はそれほど大きくはありませんでした。
 
6月の価格下落は、月平均ではそれほど顕著ではなく、米ドル建てで1.0%の下落にとどまり、トロイオンスあたり1834ドルとなりました。
 
これは6月の月平均価格としては過去最高のものでした。
 
さらに、先月は新規口座開設者数が伸び悩んだものの、2021年上半期の新規顧客数は、2020年の記録に次ぐものとなりました。
 
金投資家インデックスと金価格の推移(2021年6月までの3年間) 出典元 ブリオンボールト
 
2021年6月の価格下落時に、金地金の売却をした顧客数は2019年12月以来最も少なく、5月の数から40.1%減少していました。
 
一方、金購入者数は7.1%増加し、10ヶ月ぶりの安値に下落した3月の価格低迷時以降で最も多くなっていました。
 
これらの結果、ブリオンボールトの90%が欧米に居住する95,000人の顧客が実際に取引したデータを基に算出されている、金投資へのセンチメントを表す金投資家インデックスは、4ヶ月ぶりに57.6の高値を記録していました。
 
この値が50.0であれば、買い手と売り手のバランスが完璧に取れていることを意味します。金投資家インデックスは、2020年3月にコロナ危機が発生時に、9年ぶりの高値となる65.9を記録していました。
 
移動制限の段階的解除が進み、経済が再開したことで長期的なインフレ懸念に拍車がかかり、大量のワクチン接種の普及によって世界的なコロナ危機の終わりの始まりが告げられる中、金の投資需要は後退するどころか非常に堅固な動きを続けています。
 
また、株式市場が下落したときに金が上昇するという長年の実績は、リスクを分散させたい投資家にとって、この希少な現物資産をポートフォリオの保険として利用する魅力を高めています。
 
もちろん、今春のインフレ率の急上昇が短期的に金価格に打撃を与えているのは理解に苦しむかもしれませんが、それは米国の連邦準備理事会を中心とした世界の中央銀行が金融緩和の縮小と金利の引き上げを始めようとしているという観測を広め、金利を産まない資産である金に悪影響を与えるという見方もまた広がったことからでした。
 
経済成長がいまだ不安定で、インフレ率がすでに預金金利をはるかに上回っている中で、金の価格下落は、将来にわたって大規模な非伝統的金融政策が続くことに対する長期的なヘッジとして、投資家にとっては購入機会を提供することとなりました。
 
ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒで保管されているブリオンボールトの金地金の需要は、顧客の売却額を差し引いて重量ベースで446キログラムに達しました。
 
これは過去5年間の平均値を124.5%上回っており、金地金がトロイオンスあたり2000ドルを超える史上最高値を記録した2020年8月以来の月間最高増加量でもあります。
 
これにより、ブリオンボールトの顧客が所有する金地金の総量は47.4トンとなり、月間記録を16回度更新することとなりました。この金地金の価値は27億ドル(2970億円)に相当し、49カ国以外の中央銀行が保有する金準備の量を上回っています。
 
そして、この個人が所有の地金の量は、世界の株式市場で上場されている131銘柄の金を裏付けとする上場投資信託のうち、119銘柄よりも多い量となります。
 
銀投資家インデックスと月間平均銀価格の推移(2021年6月までの3年間)出典元 ブリオンボールト
 
銀地金は、2021年6月に、金地金ほどではありませんが、米ドル建てでは5月末から6.7%下落し、月平均では1.8%の下落となっていました。
 
そのような中でも、銀の月間平均価格26.98ドルは、6月としては2012年以来の高水準であり、前年同月比で約52.3%の上昇となっていました。
 
銀の重量需要は4ヶ月ぶりに増加し、17.7トンとなり、ブリオンボールトの顧客が所有する銀の量は、月間増加量としては11度目の記録を更新し、約1,219トンで10億ドル(1,110億円)に達しました。
 
銀の売却者数は、5月に比べて41.7%減少し、2020年3月以来の少なさとなりました。この際は、コロナ危機が発生し、多くの金融市場で価格が急落していた時で、銀は2009年の1月以来の安値であるトロイオンス12ドルを割り込んでいました。
 
それに対し、銀の購入者は2021年6月に5月から5.3%増加し、3ヶ月ぶりの高値を記録していました。
 
この結果、銀投資家インデックスは3月以来の高水準である56.2となり、コロナ危機以前の5年間の平均値を約3.5ポイント上回っていました。
 
6月の新規口座開設数は全体的に減少し、新規口座開設者数は、5月と比較して35.9%減少し、2020年6月と比較して51.1%減少し、世界的にCovid-19の感染が広がる前の2019年12月以来の最小の月間増加数となりました。
 
しかし、2021年上半期は、ブリオンボールトの16年の歴史の中で2番目に高い上半期となり、昨年の上半期の記録に次ぎ、過去10年間の上半期の平均値を85.3%上回っていました。
 
ていました。
 
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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