金市場ニュース

【金投資家インデックス】金の購入が14か月連続の利益確定の売却を上回る

先月11月は2022年7月以来の金買い越しとなりました。
 
今年6月以来の月間の金価格下落により、欧米の投資家は11月に売却量を上回る金地金を購入し、ブリオンボールトにおける14ヶ月に渡る利益確定の売却を止めていたことが、最新の金投資家インデックスのデータで明らかとなっていました。
 
ブリオンボールトは、現在50億ドル(39億ポンド、47億ユーロ、7940億円)相当の金、銀、プラチナ、パラジウムを管理し、175カ国から集まった11万人以上のユーザーのために、安全に保険をかけて保管を行っています。そして、利用者の10人に9人は北米か西欧に住んでいます。
 
11月の新規顧客数は、金地金がこの秋につけたばかりの史上最高値から下げたことからも、過去12ヶ月平均を59.5%上回り、好調を維持していました。
 
そこで、過去約2年半で最も多くの人々がブリオンボールトで金地金を購入していました。これは、個人投資家の金投資傾向を数値化した独自の指標である金投資家インデックスを、2023年6月以来の最高値へと押し上げることとなりました。
 
金投資家インデックスと金の月末価格 出典元 ブリオンボールト
 
米国の選挙結果が明らかとなった今、2025年の投資リスクは、為替市場のボラティリティを始めとして、より明確になってきています。
 
そのため、金の直近の史上最高値からの後退は、買い手となる人々にポジションを構築し始めるチャンスを与えています。これは、長期保有者による継続的な利益確定の売却を相殺しています。
 
11月は、2022年7月以降で最も多くの人々が金の購入を選択した月であり、その当時、金の価格は今日のトロイオンスあたり2640ドルよりも900ドル近く安いものでした。(今日の2090ポンドから640ポンド、2525ユーロから820ユーロ、gあたりで12,750円から5235円安い価格。)10月から購入者数は8.2%上昇し、売却者数が14.8%減少し、過去3ヶ月で最も少なくなったのとは対照的でした。
 
その結果、金投資家インデックスは、2009年10月以来毎月ブリオンボールトで購入者数と売却者数のバランスを記録していますが、前月から1.5ポイント上昇し、17ヶ月ぶりの高水準となる55.1となっていました。
 
50.0を超える数値は、月間に購入量を上回る売却をしたネット売却者数よりもネット購入者数が多いことを示しています。金投資家インデックスは、2020年3月にコロナ危機が発生した際に65.9の10年来のピークを記録し、今年3月に記録的な利益確定売りが出たことから、47.5のシリーズ最低値を記録しています。
 
11月の米国選挙後の為替市場でのドルの急騰は、4ヶ月連続で月末の高値を更新した10月の金価格の記録的な高値から3.0%下落させていました。しかし、ユーロ建て金価格は0.2%の下げに留まり、英国ポンド建て金価格は1.6%の下げ、日本円建て金価格は4.7%の下げとなっていました。
 
ブリオンボールトの新規顧客数は、10月の55ヶ月ぶりの高水準から13.5%減少しましたが、英国、フランス、オランダの継続的な堅調さに牽引され、12ヶ月平均を59.5%上回っていました。
 
それに対し、米国の新規投資家は、10月の数字から20.0%減少し、12ヶ月平均を18.2%上回ったのみでした。
 
重量ベースでは、ブリオンボールトの顧客のネット購入量は17.5キログラムと若干な量であったものの、15ヶ月ぶりに月間において金のネット購入となっていました。その結果、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒで、安全に保険が掛けられて保管されている、顧客の金地金総保有量は、44.2トンで、評価額は37億ドル(29億ポンド、35億ユーロ、5870億円)相当となっていました。
 
これは、顧客の金地金保有量が今年に入り5.9%減少している一方で、ドル建ての評価額では21.0%増加していることを意味します(ポンド建てでは21.2%、ユーロ建てでは26.7%、日本円建てにおいては28.1%増。)
 
銀投資家インデックスと月末銀価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
銀投資家インデックスは、11月に地金価格が下落した際に急上昇し、月間のネット購入者数は3.3%増加し、2022年7月(銀が19.08ドルで取引された時)以来の多さとなった一方で、ネット売却者数は36.8%減少し、6月以来の急落で3ヶ月ぶりの低水準となっていました。
 
また、銀価格はドル建てで前月末価格比8.6%安(ポンド建てでは6.6%安、ユーロ建てでは5.9%安、日本円では10.9%安)と、昨年2月以来の急落となっていました。
 
その結果、ブリオンボールトの銀地金のネット購入量は8.0トンとなり、1月以降で最も多くの銀地金が流入していました。このため、過去2ヶ月間の流出分28.0%を取り戻し、顧客の保有評価額を11億ドル(8億9,700万ポンド、10億ユーロ、1746億円)相当の重量ベースで1154トン増としていました。
 
貴金属の今後はどのようなものでしょうか?2024年は驚くべき年であり、金のコンセンサスを覆すような急騰を何度も細かく繰り返していました。
 
このパフォーマンスを繰り返すことは、不可能ではないにせよ、難しいように聞こえるかもしれません。しかし、2000年以降、そして2024年以降、金と銀の価格がこれほど急騰するとは誰も予想していなかったのです。そして、新規投資家にとっては、逃した価格は重要ではありません。
 
今日の買い手にとって重要なのは、次の危機が訪れたときに現物地金がどのような動きを見せるかという実績なのです。2025年は、金融市場全体に新たなリスクとボラティリティをもたらすことは間違いなさそうです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ