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【金投資家インデックス】四半期平均価格が史上最高値をつける中で金投資需要も2年ぶりの高さへ

ブリオンボールトの顧客の金地金保有量も過去最高を記録していました。
 
世界でも有数な貴金属のオンライン投資サービスを提供し、現在世界の10万人以上の顧客の39億ドル(5,710億円)の金地金を保管しているブリオンボールトにおける金地金投資の需要は、貴金属が再び記録的な価格の中で、2年ぶりの高水準に達していました。
 
6月に金地金に投資することを選択した顧客からの需要は、2023年の新年の利益確定売りから一転し、2021年春以来の四半期ベースで最も多い需要となっていました。
 
一方、金価格は4月から6月までの平均でトロイオンスあたり1975ドル(グラムあたり8688円)となり、全ての主要通貨で新たな記録を更新していました。
 
昨年の金はトロイオンスあたり1800ドルの年間平均新記録をつけ、その後3月には四半期末の新高値1980ドル、4月には月間平均新高値2000ドル、そして5月初旬には日中のスポット市場新高値2080ドルまで上昇していました。
 
金利上昇は、2023年後半に金が記録的な価格上昇を続けることへの向かい風となるかもしれません。しかし、これまで金が1980年代初頭以来の急激な利上げの中で堅固な動きをしてきた要因はいまだ解決されていません。
 
地政学、高インフレ、金融不安等の金価格の下支えとなっている要因に、欧米の中央銀行が生活費高等への対処に手遅れとなり、景気後退を引き起こすリスクが加わりました。
 
金投資家インデックスと月間平均金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
月次ベースでは、6月の平均金価格はドル建てで5月から2.4%下落し、昨年9月以来の下げ幅となりました。
 
しかし、これは月間金価格をトロイオンスあたり1942ドルと(グラムあたり8818円)と3ヶ月ぶりの安値まで下げただけであり、4月の記録的な高値2000ドルを60ドルも下回っていません。
 
金に投資するかを検討している個人投資家の反応は、金が2年半ぶりの安値まで下落した10月以降で最も強く、金投資家インデックスは1.8ポイント上昇し、8ヶ月ぶりの高水準となる56.2となっていました。
 
この指数は、買い手と売り手のバランスを表し、金の保有を開始または追加する人の数が売り手の数と完全に一致する場合、50.0となります。金投資家インデックスは、2020年3月にコロナ危機が発生した際に65.9という10年ぶりの高値を記録し、今年1月には50.6という4年半ぶりの低水準まで下落していました。
 
4月から6月にかけて、投資家による金地金の購入量は500キロを超え、2021年第2四半期以降で最も多い量となり、ブリオンボールトの顧客による金地金の保有量は、48.2トンで評価額は29億ドル(4,280億円)以上と新記録をつけていました。
 
しかし、投資用の金地金の需要は、この春に地金価格と共に上昇したものの、3月の米国銀行への懸念で急騰した後、新規購入者の関心は大きく低下し、現在、購入は既存の金地金所有者に限定されています。
 
6月は通常、貴金属への新規の関心が閑散とする月ですが、先月は、世界金融危機終焉後、金と銀が深い弱気相場に陥っていた2014年4月以来、最も少ない新規購入者となっていました。
 
貯蓄の利息が上昇し続ける中、投資家は、新たな危機が再び金融システムの保険としての金の価値にスポットライトを当てるまで、金への投資を選択することをためらう事になりそうです。
 
もちろん、そのような危機が起こる前に金を購入することは、より大きな可能性をもたらしますが、新規顧客数は、先月5月からほぼ3割減少し、ブリオンボールト全体では32.8%減少し、米国(-59.7%)とフランス(-58.1%)が牽引する中で、英国は比較的堅調(-19.7%)な動きを見せていました。
 
新規顧客数は、ドイツ(-8.7%)が減少率も低く最も堅調でしたが、2023年前半には、過去10年間の驚異的な水準から、既に大きく減少していました。これは、記録的なユーロ建て金価格の高騰と金利の上昇が、既存の金所有者の利益確定の売却を促したことが要因となっていました。
 
銀投資家インデックスと月間平均銀価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
金とは異なり、6月の銀の平均価格は3.4%下落し、3ヶ月ぶりの安値となるトロイオンスあたり23.41ドル(グラムあたり106円)まで下落したため、ブリオンボールトでは買い手の数は減少したものの、売り手の数はより急減したため、銀投資家インデックスは5月の3ヶ月ぶりの高水準から0.1ポイント下落に留まり、52.6となりました。
 
また重量ベースでは、第2四半期においては、金とは対照的に、投資家は11.8トンをネットで売却し、2022年第1四半期以来の売り越しとなっていました。
 
これは、より工業的に有用な貴金属の6月の顧客保有量合計が1,251トンで評価額が9億300万ドル(1,300億円)相当と、5月の11カ月ぶりの低水準から10トン回復したことを意味します。
 
2023年、銀は急騰したため、アクティブトレーダーの間では金よりも多くの利益確定売りが出ています。その一方で、銀の長期的なパフォーマンスの低さ、貴金属への新規の関心の低さ、既存の投資家の金融保険としては金をより好むことから、銀の需要は頭打ちとなっているようです。
 
これは、太陽光発電に代表されるグリーン・エネルギー技術における銀の利用が拡大しているにもかかわらずです。
 
繰り返すことになりますが、通常危機や需要増で価格が急騰する前に投資を行うことは賢明であるものの、多くの人々は実際にそれが起こるまで気が付くことはないのです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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