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【金投資家インデックス】史上最高値に近い水準にもかかわらず金の利益確定売却は減少

フランスでの需要は6ヶ月連続でドイツを上回っていました。
 
6月に記録的な高値を付けた金価格は、欧米の投資家の新たな利益確定売却を助長することはなく、ブリオンボールトの利用者は、ほぼ1年ぶりに金地金の売却をゼロに近づけていました。
 
この間フランスの金需要は、英国とは対照的に再び月間でプラスとなり、6ヶ月連続でドイツを上回っていました。欧州において第3経済大国であるフランスでは、マクロン大統領によって議会解散・国民議会選書が発表され、現時点ではマリー・ルペン氏の国民連合(RN)が主導している政治的混乱の中で、新規顧客数も四半期ベースで過去3年間で最高を記録していました。
 
投資家の懸念を測定するバロメーターとしての金需要は現在フランスで最も強いものがあるようです。欧米の他の地域における金投資は依然として軟調ではあるものの、金地金価格の継続的な強さからも、投資家の政治と金融システムの将来への疑念と不確実性の高まりを示唆していると言えるでしょう。
 

ブリオンボールトは、世界175カ国の10万人以上の個人投資家に利用されており、その9割は西欧もしくは北米に居住し、ブリオンボールトが提供している、ロンドン、チューリッヒ、ニューヨーク、トロント、シンガポールの専門保管場所で、金地金33億ドル(5,310億円)、銀地金11億ドル(1,770億円)、白金族金属9000万ドル(140億円)相当を保管しています。

6月に月間で金地金を売却量を上回る量購入したネット購入者数は、5月の数値から12.0%減少し、3月以来の低水準となっていました。しかし、月間を通じて購入を上回る量の金を売却したネット売却者数もまた14.4%減少し、昨年6月以来最も少なく、過去最高のネット売却者数を記録した3月の3分の1ほどとなっていました。

この結果、金投資家インデックスは53.9となり、5月の11ヶ月ぶりの高水準から0.5ポイントと若干下げたものの、金価格が急騰した3月の最低値の47.5からは6.4ポイント上昇し、2023年6月の56.2以来の四半期最終月の数値としては最高を記録していました。

金投資家インデックスは、2020年3月に世界を襲ったコロナ危機により、65.9と10年来のピークを記録しています。この数値は月間のネット購入者数とネット売却者数が完璧に一致した場合は50.0となります。

金投資家インデックスとドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

6月のドル建て金価格は、5月に記録した月間終値として最高値のトロイオンスあたり2346ドルから0.7%下落したものの、四半期平均価格では、2四半期連続で最高値を更新し、12.9%高の2338ドルとなり、四半期末価格としては最高値2331ドルを記録していました。

英国ポンド建てとユーロ建て金価格は、それぞれ1853ポンドと2171ユーロと3四半期連続で四半期平均の最高記録を更新し、またポンド建てとユーロ建てにおいては月末価格と四半期末価格としても1845ポンドと2178ユーロで最高値を更新していました。また、日本円建て金価格は、gあたり11,719円と7四半期連続で四半期平均の最高記録を更新し、前月末と四半期末においても12,054円と最高値を更新しています。

その結果、ブリオンボールトでは、投資家全体として再び売り越しとなり、10ヶ月連続で保有量を減少させていました。しかし、そのネット減少量は、昨年9月に利益確定の売却で月間の売り越しが始まって以来最も少なく、わずか31キログラムでした。この減少量は、過去9ヶ月の平均売却量の9.1%に相当し、3月の記録的な大量の減少時の3.1%に過ぎないもので、ブリオンボールトの顧客が保有する金地金の総量は45.1トンとなっていました。

6月の顧客の動きとして顕著であったのは、フランスの投資家が6ヶ月連続で月間のネット購入となり、新年からわずか26kgの増加であったものの、2024年の現時点まででは、主要市場で唯一、需要がプラスとなっていることです。これとは対照的に、英国居住の投資家は710kg、米国は406kg、ドイツは161kg、イタリアは28kgをネットで年初来売却していました。

また、2024年第2四半期において、フランスの新規顧客数は2013年末以来初めてドイツを上回り、第1四半期から80.5%急増し、2021年初頭以来の最高値である四半期合計を記録していました。

それでは、金価格の次のターゲットは何なのでしょうか。
 
2024年の前半期を四半期平均価格として史上最高を記録して終えた後、英国や米国がフランスに続いて総選挙と大統領選を迎える中で、金価格は基本的な上昇トレンドを継続するようです。政治的不確実性は、投資の保険としての金の魅力を高めています。長期的には、主要国の財政と金融システムへの懸念を背景として金価格を支えることでしょう。

フランスの極右派と強硬左派、英国の保守党と労働党、米国のトランプ前大統領とバイデン大統領のいずれの選挙においても、財政赤字の拡大に反対する投票を行うこともできないのです。

また、インフレが主要メディアの見出しを飾らなくなった今、選挙民は中央銀行の金利引き下げに賛否を投じることもできず、個人資産を自分で守らなければならないのです。
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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