金市場ニュース

ニュースレター(2026年7月24日)原油高・ドル高・金利高の逆風でも底堅かった金・銀市場

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格比較した一週間の変動率は以下の通りです。

一週間の貴金属価格の変動率 出典元 ブリオンボールト

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。

**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

  • :ドル建て価格は、2週ぶりの週間の上げで、前週の金曜日価格で昨年1010日以来の低値から上昇。
  • 2週ぶりの週間の上げ。前週の金曜日価格で昨年1128日以来の低値から上昇。
  • プラチナ2週ぶりの週間の上げ。前週の金曜日価格で昨年1121日以来の低値から上昇。
  • パラジウム2週ぶりの週間の上げ。前週の金曜日価格で626日以来の低値から上昇。

貴金属市場の動向(週間)

今週の貴金属市場は、米国とイランの紛争が激化する中、ブレント原油が5月末以来の高値まで上昇しました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利上げ観測が強まり、ドルインデックスは昨年3月以来、米10年国債利回りは昨年4月以来の高水準となりました。通常であれば貴金属価格の重しとなる環境でしたが、金・銀相場は週半ばまで堅調に推移していました。

 

昨日は、米国とイランのホルムズ海峡を巡る緊張に加え、イランが支援するイエメンのフーシ派による紅海での石油タンカー攻撃を受け、中東情勢がさらに緊迫したことで、利益確定売りなどから上昇幅を縮小していました。しかし本日は、米国とイランの和平交渉再開への期待が広がったことから、下げ幅を縮小して推移しています。

 

今週半ばまで見られた、イラン紛争勃発以降とは異なる値動きの背景には、紛争の長期化への懸念が主要国の財政赤字拡大への警戒感を強め、安全資産としての金への需要を支えていたことがあるようです。

 

主要国の長期金利は、コロナ危機下の2020年と比べ、下記のチャートが示すように大きく上昇しています(英国:黄色、米国:青色、カナダ:赤の点線、日本:黒の点線、ドイツ:青の点線)。当時は多くの国でゼロ近辺、ドイツではマイナス圏にあった10年国債利回りは、現在では英国が5%前後、米国が4.6%前後、日本も2%近くまで上昇しています。

 

巨額の財政赤字を抱える主要国では、金利上昇に伴って政府の利払い負担も増加しており、こうした状況が長期的な懸念材料として市場で意識され始めているようです。

 

2020年からの主要国の10年物国債の利回りの推移 出典元 セントルイス連銀

今週の貴金属相場の動き(日次)

 

月曜日

金・銀相場は、中東情勢を巡る不透明感を背景に大きく変動した原油価格に左右される展開となりました。

まず、週末の中東情勢悪化を受けて原油価格が上昇し、金価格は4,000ドルを割り込む場面が見られました。その後、イラン政府が「米国との停戦に応じる用意がある」と伝えられたことで原油価格が下落し、貴金属は反発。しかし、その後イエメンのイラン支援組織フーシ派が、米国の同盟国でありイエメン政府を支援するサウジアラビアに対し「海上航行封鎖」を宣言したことで再び原油価格が上昇し、貴金属は押し下げられるという、目まぐるしい動きとなりました。

一方、週末に発表されたCOMEX金先物・オプション市場では、投機筋のネットロングが1月末以来の高水準となり、銀を除く貴金属でもネットロングが増加するなど、市場の貴金属に対するセンチメントの改善も見られていました。

 

火曜日

金・銀相場は、中東情勢の悪化を背景に原油価格が上昇していたにもかかわらず、前日の上昇基調を引き継ぎ、先週火曜日以降の下げ幅を縮小していました。ロンドン昼頃には金はトロイオンスあたり4,083ドル前後、銀は59.24ドルと、ともに一週間ぶりの高値まで上昇する場面がありました。

米国とイランの紛争が2月末に勃発して以来、原油価格と金価格は3営業日のうち2営業日で逆方向に動く展開が続いていました。しかし直近では4営業日連続で同じ方向に推移し、これは5月末以来の長さとなっていました。

これまで原油価格の上昇は、インフレ圧力への懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利上げ観測を強め、ドルや長期金利を押し上げることで金価格の重しとなってきました。しかし今回は、市場が織り込む年末時点のFRB政策金利予想が713日以来の高水準となり、ドルと長期金利も上昇する中でも、金・銀相場は底堅い動きを見せていました。

また、AI関連企業の巨額債務や主要国の財政赤字拡大への懸念も改めて意識され、投資家がインフレや金利動向以上に、地政学リスクや財政・金融システムへの懸念から、安全資産としての金への需要を強め始めている可能性が示されていました。

 

水曜日

金・銀相場は前日に続き堅調に推移し、金は一時トロイオンスあたり4,166ドル、銀は60.91ドルと、ともに約2週間ぶりの高値を付けていました。

トランプ大統領が、イラン軍が「ホルムズ海峡で船舶を攻撃する」たびにテヘラン周辺を含む「橋または発電所を一つ爆撃し、破壊する」と発言したことなどから、米国とイランの紛争激化への懸念が高まり、ブレント原油は一時1バレル95ドルを超えました。また、市場ではFRBの年内2回の利上げ観測もさらに強まり、米10年国債利回りは昨年1月以来の高水準、30年国債利回りも2007年以来最も長く5%を上回る水準が続いていました。

通常であれば貴金属価格には逆風となる環境でしたが、前日に見られた安全資産需要が引き続き相場を支え、底堅い値動きが続いていました。

 

木曜日

金・銀相場は、ブレント原油先物価格が5営業日続伸し、一時1バレル99ドルを超える中、今週半ばまでの上昇幅を削り、金はトロイオンスあたり4,040ドル、銀は57.07ドルまで下落する場面がありました。

原油価格の上昇は、イエメンのフーシ派による紅海での石油タンカー攻撃を受け、中東情勢がさらに緊迫したことが背景です。これを受けてFRBによる早期利上げ観測がさらに強まり、ドルと長期金利も一段と上昇しました。

週半ばまで原油高、ドル高、長期金利上昇という逆風の中でも堅調に推移していた貴金属相場でしたが、この日は利益確定売りなどに押され、上昇幅を縮小していました。

 

金曜日

金・銀相場は、米国とイランの和平交渉再開への期待から原油価格が下落し、ドルと長期金利もやや低下したことを受けて緩やかに上昇し、金はトロイオンスあたり4,074ドル、銀は58.80ドルまで戻す場面が見られ、前日の下げ幅を縮小して推移しています。

ロイター通信は、中国の働きかけを受け、パキスタンが米国とイランの交渉再開に向けた道筋を模索していると報じています。

もっとも、米国とイランの戦闘は2週間を超えており、ニューヨーク・タイムズによると、イラク首相がテヘランに持参したトランプ大統領による停戦提案をイランが拒否したとも伝えられています。そのため、市場は依然として慎重な姿勢を崩しておらず、貴金属相場も上値の重い展開が続いているようです。

 

一週間のドル建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト一週間のドル建て銀価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

 

  • コメックス(COMEX)のデータによれば、予想を下回る米消費者物価指数(CPI)発表翌日の14日までに、貴金属価格が全般前営業日比上昇する中で、資金運用業者は、銀を除き全ての貴金属でネットロングを増加させていました。

  • 金のネットロングは前週比3.7%増の370.59トンと、127日の週以来の高水準へと増加していました。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。

  • 銀の先物・オプションのネットロングは14.5%減の1,614トンと、69日の週以来の低水準へ減少していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。

  • プラチナのネットロングは9.0%増の12.7トンと2週ぶりの高さで、前週の310日の週以来の低さから増加してました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。

  • パラジウムは、23日の週以来のネットロングから317日の週にネットショートへ転じた後、この週ネットショートは2.8%減の19.3トンと、前週の昨年826日の週以来の高水準から減少していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。

  • ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに10.27トン(1.03%)増の1,009.298トンと、624日以来の高い水準で、週間の増加傾向となっています。週間の増加量は227日の週以来最大。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。

  • ETF2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.35トン(0.08%)増の461.71トンと、710日以来の高さとなり、6週ぶりの週間増加傾向となっています。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。

  • ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに73.11トン(0.49%)増の15,066.94トンと、61日以来の高い水準で、週間では2週連続の増加傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週70台後半で始まり、本日69台半ばへ下げて推移しています。2025年の平均は87.852024年は84.752023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、227日の週からプレミアムへ転じており、今週の平均プレミアムは4.36ドルと、前週の7.83ドルから下げていたこと。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。

来週の主要イベント及び主要経済指標

 

今週の貴金属市場は、中東情勢に注目が集まる中、原油高やインフレ圧力への懸念を背景とした米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測を受けながらも、週半ばまでは堅調に推移していました。しかし、その後、イエメンのフーシ派による紅海での船舶攻撃を受けて中東情勢がさらに緊迫し、ブレント原油価格が1バレル=100ドルを突破したことから、木曜日には再び下げ基調となりました。

 

来週も市場の焦点は中東情勢となりますが、主要中央銀行による金融政策の発表も相次ぎます。水曜日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の終了後の政策金利公表、木曜日にはイングランド銀行(BOE)、金曜日には日本銀行の金融政策決定会合の結果公表が予定されており、金融市場にとって重要な一週間となりそうです。

 

その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026720日~24をご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週の英国では、米国とイランの紛争やウクライナ戦争の激化、さらには南欧で相次ぐ山火事など、国際情勢に関するニュースが大きく報じられています。その一方で、スターマー前首相の辞任を受けて就任したアンディ・バーナム新首相が発足させた新内閣や、矢継ぎ早に打ち出している新たな政策も連日大きく取り上げられています。

そこで今週は、バーナム新首相が就任後最初の1週間で発表した主な政策と、それに対する金融市場や野党の反応についてご紹介したいと思います。

バーナム首相がこれまで発表した主な政策は次のとおりです。

  • 家庭用電気料金にかかる5%の付加価値税(VAT)を10月から撤廃し、家計の光熱費負担を軽減。
  • イングランドのバス運賃上限を3ポンドから2ポンドへ引き下げ、公共交通機関を利用しやすくする。
  • パブ、社交クラブ、ライブ音楽会場の事業用資産税を20%引き下げ、地域経済の活性化を図る。
  • マンチェスターに「No.10 North(北部首相府)」を設置し、閣僚会議や国家経済会議を開催するなど、地方への権限移譲を推進。
  • 公営住宅・社会住宅の大規模建設を柱とした住宅政策を進め、住宅不足やホームレス問題の改善を目指す。

これらの政策は、生活費の高騰に苦しむ家計への支援と、ロンドンへの一極集中を見直す地方分権を大きな柱としています。

国民の反応は概ね好意的で、消費者信頼感は今年1月以来の高水準へ改善しました。英国メディアでは、早くも「Burnham Bounce(バーナム効果)」との言葉も使われ始めています。

一方、金融市場はより慎重な姿勢を示しています。家計支援策そのものへの反対というよりも、今後予定される住宅建設や地方投資などをどのような財源で賄うのかに注目が集まっています。英国では2022年のトラス政権による「ミニ予算」で国債とポンドが急落した経験があるため、新政権の財政運営には依然として厳しい視線が向けられています。

野党からは、特にマンチェスターに設置された「No.10 North」に対し、「象徴的な政治パフォーマンスに過ぎない」との批判が出ています。また、生活費対策は評価しつつも、財源や政策の実効性について説明が不足しているとの指摘も少なくありません。

就任後わずか1週間で、毎日のように新たな政策を打ち出しているバーナム政権。今後も国民の支持を維持できるかどうかは、生活費支援だけでなく、これらの政策を財政規律と両立させながら実行できるかにかかっていると言えそうです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

グーグルで優先する情報源として追加

 

 

貴金属市場のファンダメンタルズ