金市場ニュース

錬金術のもたらしたもの

貴金属ディーリングにおいて世界でも第一人者のスタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、錬金術の歴史に触れ、これが現代科学にもたらしたものを説明しています。

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今週は、金の基礎知識編の第7回「錬金術のもたらしたもの」です。

第1回:「金の価値って何だろう?」

第2回:「金の比較的価値」

第3回:「金の実用的価値」

第4回:「ゴールドETFについて」

第5回:「中央銀行の金保有」

第6回:「金はどこで採れるのか」

錬金術とは化学的手段を用いて卑金属から金を精錬しようとする試みのことです。しかしもちろん長い人類の歴史上それに成功した錬金術師はいません。我々現代人の常識からはほかの物質から元素はつくり出せないというのは常識でしょうが、古代からの金の価値ゆえに、多くの錬金術師が、金の生成に挑みました。金を作ることはできませんでしたが、その研究は化学の進歩に大きな役割を果たしました。

錬金術は古代エジプトにはもはや考えられていたようです。当時はおそらく砂金の採取が主なゴールドの供給源であったに違いありません。そしてそれを溶解・加工などを行ううえでの冶金技術の進歩が錬金術へとつながっていったのでしょう。古代ギリシャやイスラム世界でも錬金術の研究は力を入れて行われ、それが近代の西洋につながっていくことになりました。

錬金術の研究は「賢者の石」という概念を生み、不老不死ともつながっていくことになります。これは小説「ハリーポッター」や、漫画の「鋼の錬金術師」に も登場しますね。特に「鋼の錬金術師」はまさに錬金術の考え方を具体的に示すいい作品だと思います。不老不死の考えた方(霊魂の錬金術)が生まれたことによって宗教や神秘主義、魔法使いといった方面にもその影響を及ぼすこととなりました。

しかしここでは純粋に学術的な側面を考えましょう。当然どんな技をもってしても金をつくり出すことは不可能です。しかし金を作りだそうという努力は、いろんな実験を通して、各種の発明、発見がなされ結果的に科学としての「化学」を生む原動力となりました。

万有引力の発見で有名なアイザック・ニュートンも錬金術に深くかかわり、「最後の錬金術師」と呼ばれたり、20世紀になってその遺髪から水銀が抽出され たというエピソードもあります。実際彼は錬金術に関する著作を数多く残しており、彼の死因は錬金術のために陥った水銀や鉛などの化学物質中毒によるものだという説もあります。彼がイギリス造幣局の監事である時期に、金と銀の交換比率を16対1に定めたというのも偶然ではないでしょう。

錬金術の成果として上げられるのは、中東で紀元前2世紀ごろと思われる「蒸留」の技術の発見、中国では「火薬」の発明(7-10世紀頃)、そしてまたイスラム圏での「硝酸、硫酸、塩酸、王水」の発明(8-9世紀頃)、欧州における白磁の製法の開発(18世紀)などなど。錬金術なくして現代の化学は存在しなかったと言っても過言ではないでしょう。錬金術で実際に金を作り出すことはできませんでしたが、錬金術を通して発見された様々な化学的成果は、人類の進歩という観点からは金そのもの以上の価値があったと言えるのではないでしょうか。

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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