金価格ディリーレポート(2024年12月9日)中国の景気刺激策とシリアの政局混迷で金は上昇し銀は急伸 2024年12月9日 月曜日 16:52 月曜日金相場は、シリアや韓国での地政学リスクが高まる中米ドルが下げたこともあり、中国が2011年以来の大胆な金融刺激策を発表し、中国の中央銀行が6ヶ月ぶりに金の購入を再開したことを受けて上昇し、銀相場は急騰していました。 中国共産党の指導者は本日2025年の金融政策を「適度に緩和的」へと2011年以来初めて転換して、積極的な財政政策と大幅な政策金利引き下げすることを発表し、習近平国家主席と24人の政治局員は、「不動産と株式市場の安定化」を約束していました。 オーストラリア・ニュージーランド銀行グループのシニアストラテジスト、Zhaopeng Xing氏は「今回の政治局会議の声明文の表現は前例がない」と述べていました。 先週の韓国、フランス、ルーマニアの政治的混乱を無視した金のスポット価格は、月曜日ロンドン時間昼過ぎにトロイオンスあたり2670ドルと2週間ぶりの高値まで1.4%も上昇し、中国の製品を筆頭に全ての輸入品に関税を課すと述べているドナルド・トランプ前大統領が率いる共和党が米国の選挙で決定的な勝利を収めた直後に見られた急落時から5.2%上昇していました。 一方、主に工業用金属である銀は3.3%急騰し、トロイオンスあたり32ドルを上回り、1ヶ月ぶりの高値をつけ、同期間では7.8%高となっていました。 原油価格も、生産国で構成されるOPEC+が、中国の景気減速の影響もあって増産計画を4月まで延期したことから前週まで2週間下げていたものの、月曜日には上昇し、ブレント原油は2.2%以上上昇していました。 そして、このニューヨーク先物価格ではこの貴金属の動きをさらに強めて、銀は2024年現在まで上げ幅において金を上回っている一方で、米国のベンチマークであるWTI原油価格は昨年大晦日から下げています。 デリバティブ・プラットフォームであるサクソバンクの商品ストラテジスト、オーレ・ハンセンは、「シリア情勢、中国の戦略的軸足の転換、今後2週間の利下げに市場が反応し、エネルギーと工業用金属が上昇した。」と述べていました。 中国人民銀行(PBOC)は、2023年に世界最大の金の買い手でしたが、中国政府による 公式データによると、11月の金準備を5トン増の2,269トンとし、4月以来の金購入をしていたことが明らかとなっていました。 「金のスポット市場の取引量は、通常、世界の鉱山生産量の70倍以上であることを考えると、実際のトン数は大きなものではない」と証券会社のStone XのRhona O'Connell氏は述べ、「重要なのは、市場への心理的影響です」と続けていました。 POBCは、過去に中国の金保有量の変化を秘密にしたこともあり、2009年と2015年に突然大幅な上方修正を発表していましたが、今年4月までの18か月間には316トンの金準備を増加させ、ドル建て評価額では41%増加させていました。 そして、世界最大の金消費国である中国の中央銀行は、今年11月までに年初来34トンの金を増加させています。 「中東の地政学リスクの高まりは、金のサポートとなる」とスイスの精錬金融グループのMK Pampsのストラテジー部門の責任者のNicky Shiels氏は、元アルカイダ司令官率いる反体制派民兵が、13年にわたる内戦の末、24年間支配してきたシリアのアサド大統領を日曜日に倒し、同大統領はロシアへの亡命を余儀なくされたことについてコメントしていました。 韓国では先週、戒厳令を敷こうとした尹錫烈(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾投票(野党はこの投票のやり直しを望んでいる)が行われ、僅差で成立していませんでしたが、韓国の株価指数であるKospiは2.3%下落していました。 イスラエルが週末にシリアの化学兵器の疑いのある場所を攻撃し、ゴラン高原の非武装緩衝地帯の「一時的な」軍事占領を発表した後、アサド大統領は 「外国の陰謀」によって倒されたとイランのメディアは主張していました。 今日の金価格の上昇は、「ヘッドラインリスクが依然として高いことを考えると、金のショートがいかに難しいかを改めて思い知らせた」とMKS Pamp社のShiels氏は述べていました。 中国の政策発表前の月曜日の中国株価市場は、上海総合指数が0.3%下落する等下げていましたが、上海黄金交易所の金指標価格は0.5%上昇し、1gあたり617円となっていましたが、引き続きロンドンより割安で取引されており、需要の弱さを示していました。 オンショアの人民元価格と国際的なベンチマークであるロンドン決済価格との差は、本日トロイオンスあたり8ドルに縮小し、先週の平均12ドルよりもディスカウントは縮小したものの、上海で取引される金の典型的な歴史的なプレミアムとは逆の状態が未だ続いていました。 ユーロ建て金相場は、今週欧州中央銀行の政策決定を控えて、ユーロが対米ドルで2年ぶりの安値から若干上昇する中で、ロンドン時間昼過ぎに1.4%上昇しトロイオンスあたり2527ユーロとなっていました。 英国の投資家にとっては、英ポンド建ての金価格は0.9%上昇し、トロイオンスあたり2090ポンドをつけていました。