金価格ディリーレポート(2022年3月21日)金先物のネットロングが減少し金ETFが増加する中で金は上昇 2022年3月21日 月曜日 18:17 金相場はロンドン時間昼過ぎにウクライナの首都キエフへのロシア攻撃のニュース株価が下げたことで上昇していました。 これは、投機筋がコメックスのネットロングポジションを減少させ、金ETFは継続して残高を増加させる中のことでした。 ウクライナ戦争が停戦や終結が見えないまま1ヶ月を迎えようとしている中、ドル建ての金価格は、月曜日の朝に1920ドルを下回った後、トロイオンスあたり1935ドルへ上昇していました。 そして、ポンド建てとユーロ建て金価格もそれぞれトロイオンスあたり1465ポンドと1750ユーロへと上昇していました。 前週末に発表された最新のデータでは、コメックス金先物・オプションの資金運用業者のポジションは、3月15日までの週にグループとして金に対するロングポジションを13%減らし、ショートポジションを2%増やしていました。 その結果、ネットのロングポジションは16%縮小し、ロシアのウクライナ侵攻が始まる直前の2月中旬以来の低い水準となっていました。 派生商品のプラットフォームのSaxo Bankのコモディティストラテジーチームは、「ここ数週間、金先物を大量に購入していたレバレッジを好むファンドからのロング減少が 一巡した可能性がある」とし、「一方で、長期的な投資家はウクライナにおける戦争が始まって以来、金ETFを継続して購入している」と述べていました。 金を裏付ける 上場投資信託は先週も残高を増加させ、世界最大なSPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)と第2規模のiShareゴールド(NYSEArca: IAU)は、それぞれ6週と3週連続で規模を拡大させていました。 3週間前にウクライナ戦争が始まって以降、先の金ETFへの投資家の資金流入により、さらに67トンの残高が増加し、総保有量の合計は1594トンに拡大し、2021年3月以来最大規模となりました。 ロシアの侵攻から26日目の月曜日ウクライナは、「人道的回廊」提供の一環として、南部の都市マリウポルにモスクワ時間午前5時までに降伏するよう求めるロシアの要求を拒否していました。 現段階までに、ウクライナの総人口の4分の1を超える1,000万人々がウクライナを離れ避難しています。 一方、EUが今週、ロシアの石油禁輸を検討していると報じられると、原油価格は3日連続で急騰し、ブレント原油は水曜日から14%上昇していました。 バイデン米大統領は、北大西洋条約機構(NATO)、G7、EUの首脳会議に出席し、モスクワに対する さらなる措置に合意することを目指し、この地域に滞在する予定とのことです。 そのような中、オーストラリアは昨日、ロシアへのアルミナ輸出の即時禁止を発表し、アルミニウム価格は月曜日に5.1%も跳ね上がっていました。 ロシアは世界のアルミニウム供給の約6%を占め、オーストラリアは工業的に有用な金属を生産するための主要原料であるアルミナをロシアへほぼ20%に供給しています。 世界の鉱山生産量の40%をロシアが占めるパラジウムの価格は、本日1.5%上昇しトロイオンスあたり2529ドルとなりましたが、最近のピークである3月上旬の3444ドルを26%下回る水準にとどまっていました。 年間需要の60%近くが工業用である銀地金価格は、0.2%上昇し25.03ドルとなっていました。 そして、この間自動車排ガス浄化触媒を中心とする工業用途が年間需要の3分の2を占めているプラチナは、0.2%上昇してトロイオンスあたり1029ドルとなっていました。 スイスの精錬・金融グループであるMKSパンプは、最近改訂した 2022年の貴金属見通しで、「ETFと現物投資需要において安全資産買いが再燃 しており、FRBが実質金利を大幅に引き上げない限り、金価格は上昇し続けるだろう」 と述べていました。 米国物価連動国債の10年物TIPS債が示唆する実質金利は、先週水曜日の連邦公開市場委員会で主要なFF金利が25bp引き上げられた直後にマイナス0.60%まで上昇しましたが、月曜日にはマイナス0.70%で安定して推移していました。 これは、債券トレーダーが生活費の上昇がより早まることを予想していることを示唆しています。 そして、長期金利は月曜日に再び上昇し、2年物国債は2019年5月以来初めて年率2%を超え、10年物国債は2.23%をつけていました。 そのため、10年債と2年債の利回りのスプレッドは2020年2月以来の狭い水準にとどまることとなりました。 2年債対10年債の イールドカーブの逆転は、1~2年後に景気後退が起こる可能性が高いことを示す確実なシグナルとみなされています。