金市場ニュース

金はどこで採れるのか

貴金属ディーリングにおいて世界でも第一人者のスタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、金産出国についてとその推移を解説しています。

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今週は、金の基礎知識編の第6回「金はどこで採れるのか」です。

第1回:「金の価値って何だろう?」

第2回:「金の比較的価値」

第3回:「金の実用的価値」

第4回:「ゴールドETFについて」

第5回:「中央銀行の金保有」

現在世界中で生産されている新産金、つまり鉱山から出てくる金の総量は年間2800トンあまりです。ここ数年の世界一の金生産国は中国です。中国一国が 370トンと頭一つ出ている状態で、あとはオーストラリア(258トン)、アメリカ(232トン)、ロシア(211トン)、南ア(198トン)、ペルー (188トン)などが200トン以上もしくは近くの生産高を誇っています。地理的にもアジア、オセアニア、北米、南米、ユーラシア、アフリカ、と全世界に まんべんなく散らばっており、金の供給は大変安定していると言えます。

昔は南アで何かあればそれで金価格は大きく動いたものですが、現在は南アで何かあっても反応するのはプラチナ(生産の八割を南アが占める)であり、金はほとんど反応しないと言ってもよいでしょう。1979年の南アの金生産量は年間1400トン近くでした。世界で生産される金の半分以上は南アで取れ、圧倒的なガリバーと言ってよかった存在でした。しかし1980年代に入ってから南アの産金量が徐々に減少していき、現在もそれは続いています。2011年はとうとう200トンを割り込み、世界でも5位にまで落ち込んでいます。2000年以降は毎年8%前後のスピードで金生産が減っており、このペースが続くと 2020年を越える頃には南アでは金が取れなくなってしまうかもしれませんね。

南アは現在でも埋蔵量は6000トンと言われており、世界でもトップクラスにあります。金鉱の品位もきわめて高いのですが、アメリカやオーストラリアのような砂金層ではなく、礫岩質の堆積岩鉱床であるために、昔から個人ベースのいわゆるガリンペイロと呼ばれた人々が活躍できる条件ではなく、大企業による巨大資金投下が前提でした。そしてその金鉱床は3000メートルや4000メートルといった深いところにあります。ここまでの深さの坑道掘削や、わき出てくる水の排水、そして1000メートルあたり20度上昇する(3000メートルでは60度!)と言われる温度を調整するための空調の必要性もあり、非常に 厳しい労働環境になります。南アがアパルトヘイトという人種差別政策をとっていたのは、この金生産を黒人労働者で支えるためでもあったというくらいです。アパルトヘイト政策が終わってから南アの産金量が目に見えて減っているのは、そういった意味でも象徴的ですね。

南アの産金量減少の反面ここ数年伸びているのは中国です。経済力の伸びとともに急速に高まる国内の金需要に呼応して、国内の鉱山会社が一斉に増産傾向を 高めています。投資資金が流入し、特に大手鉱山会社はまとまった資金調達もしやすい状況にあり、積極的な金鉱山開発や生産能力増加へと積極的に舵を切って います。また中国政府もその方向への支援を行っており、中国の金生産の拡大傾向はまだ続くものと思われます。中国での金生産が目立つ地域は山東省、湖南省、福建省、内モンゴルでこの五つの地域で中国の金生産の47%を占めています。

オーストラリアはオープンピットと呼ばれる金鉱山スタイルが有名です。特に西オーストラリアのカルグーリにあるその名も「スーパーピット」と呼ばれる巨大なアリ地獄のような金鉱山は、その真偽のほどはわかりませんが、月からも見える人間の建造物の二つのうちの一つと言われています(もう一つは万里の長城)。大規模なオープンピットで巨大な重機を使うオーストラリアの鉱山は、効率の面からは世界でも一番かもしれません。

米国では1800年代半ばにカリフォルニアで金が発見されてゴールドラッシュが起きました。当時は世界中からやってきた個人が砂金を採取することから始まり、その後大規模資本を投入する本格的な金鉱山探索が始まるとネバダ州、コロラド州、アラスカ州などで次々と金鉱脈が発見され、アメリカの金生産は飛躍的に高まり現在に至っています。

ロシアは旧ソ連時代は鉄のカーテンの向こう側でその実態はよくわかりませんでしたが。現在では米国とほぼ互角の金生産量があることがわかります。

金の生産国は、世界的には万遍なく散らばっており、その生産量も1970年代のように南アだけが半分以上生産するといった偏った状態ではありません。南ア一国が80%もの生産シェアの握るプラチナとは対照的と言えるでしょう。金の供給は非常に安定しています。

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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