続・日本人と金保有
初心者にも分りやすい金のブログとして、経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている「はじめての金読本」において、日本人と金保有について歴史的背景も含めて解説したものを、先週に続きお届けします。なお、この記事は先サイトに、今年2月3日に掲載されたものです。

今回は先週の続きです。
古典落語などから伺い知れる江戸の庶民たちは、宵越しの銭を持たないことを粋としていたようです。貯蓄がなくとも互いに助け合って食べて行けた、そんな古典的な幸福感のなかにいたのかも知れません。もちろん本当のところは分からないんですけどね。
それが黒船ショックによる江戸末期の混乱を経て、明治になると、一日も早く欧米列強に追いつけとばかり、「富国強兵」というものが叫ばれるようになります。
じつに大雑把な話し方をしていますが、お赦しください。分かりにくいことをテーマにお話していますから、正確さを重んじてさらに分かりにくくなるよりも、ざっくりと構図が見えた方が良いだろうと思うからです。
さて、そうした流れのなかで前島密によって導入されたのが、郵便機能と貯蓄機能を併せ持った近代郵便という制度です。いまでこそ郵便貯金を知らない日本人はいないでしょうが、当時はまだ馴染みが薄く、また政府の信頼とて知れたもの、なかなか思うような拡大発展は望めなかったようです。明治に入ってからも日本の庶民たちには「貯蓄する」という習慣が根づいてなかった訳ですから、なおさらでしょう。
けれども、世の中、まさに「富国強兵」の時代です。国力と武力で一日も早く「いっちょまえ」にならないと、いつ欧米列強に食われるか分からなかった時代です。とにもかくにも成長の原資である「お金」が必要な上に、その資金を高速に回転させることが急務だったはず。
貯蓄は正しいという道徳観念が初等教育に取り入れられ、当然、郵便貯金のPRも積極的に行われたことでしょう。やがて、全国津々浦々から、あまねく広く、あまねく薄く庶民の稼ぎが郵便局に集まるようになって行きます。そうして集められた資金は、ふたたび社会に投下されます。いうまでもなく、「国債の購入」という経路を使って。
おそらく、そうした環境のなかで、郵便貯金は奨励され、資金の私的退蔵は白眼視されて行ったではないでしょうか。ことの善し悪しを論じている訳ではありません、この流れは、つまりは当時の国民が望んだことですから。
では、本日はここまで。来週、もう一回続けます。
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