ニュースレター(7月24日)1080.80ドル 金利引き上げ観測から5年来の低値へ
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA金価格のPM価格は、トロイオンスあたり1080.80ドルと、2009年10月以来の低い水準で、前週同価格から4.6%下げています。
週明け月曜日は、先週金曜日に中国中央銀行の金準備が予想されていた量の半分に近い1,658トンであることが明らかとなった後、アジア時間開始後に上海黄金交易所の5トンの売りが、ストップロスなどを引き起こし、大きく金を下げました。
これは、多くのアナリストによると、ギリシャ情勢が沈静化し、米FRBによる年内金利引き上げ観測が、先週のイエレンFRB議長の議会証言で広がる中、金のサポートが消えつつあり、先物・オプション市場のショートポジションも増加しつつあるなど、市場のセンチメントは弱気であるためとのことです。
翌火曜日は、前日の反発もなく、狭いレンジでの取引となりました。
水曜日は、月曜日の急落以降の下げ傾向を受け継ぎ、ドル建てとポンド建てでそれぞれトロイオンスあたり1088ドル、696ポンドと、2010年以来の低い水準を推移することとなりました。
またこの下げは、本日発表の米6月中古住宅販売件数が、549万件と予想の540万件と前回修正値の532万件を上回り、2ヶ月連続で増加となり、2007年2月以来の高水準であったことも要因と考えられています。
木曜日は、同日発表の米失業保険申請件数が25.5万件と、2週連続で減少となり、1973年11月24日までの週以来の約41年8ヶ月ぶりの低い水準となったことからも、金は押し下げられることとなりました。
本日金曜日発表の米国新築住宅販売件数は、48.2万件と予想の54.8万件と前回修正値の51.7万件をも下回り、昨年11月以来の低水準となり、2ヶ月連続でマイナスとなりました。これを受けて、金相場は多少上げ、ドル安が進む中、NY市場引け間際に、トロイオンスあたり20ドル戻すことになりました。
来週FOMCを控えていることからも、金利引き上げ観測が広がる中、金相場は頭の重たい状況でしたが、今週下げすぎていた反発が起きたようです。
その他の市場のニュース
- SPDRゴールドシェアが、今週木曜日までに、2013年7月以来のスピードで残高を23トン減少させ684トンと、2008年9月以来の低水準となったこと。
- ロイター・コア・コモディティCRB指数が、23日に原油の下げもあり206.97ポイントと、今年の安値を下回り、2009年3月11日以来の低水準となったこと。
- 日経新聞がピアソンからファイナンシャルタイムズを1600億円で買収したこと。
ブリオンボールトニュース
今週月曜日の金相場の急落に関して、BBCラジオ2のプライムタイムの番組で、ブリオンボールトのリサーチ主任がインタビューを受けました。ここでは、月曜日の急落の背景がFRBによる金利引き上げ観測の広がりであり、先週金曜日に発表された中国中銀の金準備総量が1,658トンと、予想されていた半分ほどであったこともきっかけでもあったと述べています。
このインタビューは、下記のリンクで01:37:20まで早送りをしてお聞きください。
https://www.bbc.co.uk/programmes/b061qdkj
また、CNBCが、今週金相場が急落したことを受けて、「2017年が金の購入時」という記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任を含む、著名アナリストの金相場先行きに関する分析をまとめました。
この記事では、ブリオンボールトにおける新規顧客口座開設数が、月曜日に今年一番の高い水準になったこと、取引量もまた2014年10月以来の高水準となり、グーグル検索において「金購入」が急増しているという、リサーチ主任のコメントも取り上げられています。
ロンドン便り
今週も日本に滞在しますが、日経による英ファイナンシャル・タイムズ買収は、大きく主要メディアで伝えられているので、その様子をお伝えしましょう。
ご存知のように、ファイナンシャル・タイムズ(FT)は、英国の経済專門の主要新聞で、1888年創刊。日本の主要日刊紙とは異なり、英国ではニュースの媒体はオンラインが主となりつつあり、FTの電子版の有料読者が約50万人と全体の7割を占めています。それでも、朝のラッシュアワーには、FT独特のサーモンピンクの新聞を持って、シティ(金融街)へ向かうビジネスマンの方々を今でも見かけます。
FTが日経による買収を発表した夜に公表した内幕によると、日経は交渉で劣勢だったものの、買収が発表された同日になって突然、それまで優勢と見られていた独メディア大手アクセル・シュプリンガーを上回る額をすべて現金で支払うという想定外の好条件を提示し、「最後の10分」で形勢を逆転させ、土壇場で競り勝ったとのこと。
日経が示した条件を聞いたシュプリンガーは買収を断念し声明を発表したことから、FT親会社の英出版大手ピアソンが、正式に日経への売却を発表したのは、日経からの条件提示から7分後の午後3時13分だったとのことです。
シュプリンガーは昨年からFTへの一部出資について協議を開始し、数週間前から買収交渉に切り替えていましたが、日経がこの買収劇に参戦したのは5週間ほど前だったとのことです。
このニュースを受けて、英国のメディアは、ガーディアン紙のように、「デジタル時代においても質を確保することで利益を上げるメディア事業を構築することができるかもしれない」と前向きなコメントを出しながらも、BBCの看板記者であり、かつてFTにも勤務していたロバート・ペストンのように、「FTがもはや英国のものでなくなり非常に悲しい」とのコメントをツイッター上で発表するなど、英国を代表する経済紙が、もはや英国のものでなくなったことを悲しむコメントも見られているようです。
アングロ・サクソンのジャーナリズムの伝統は「何に対しても敬意を示さない」、権力に対向するものであることが有名ですが、FTが日経傘下にはいることで、どのような変革を今後起こしていくのか、興味深い限りです。