金市場ニュース

ニュースレター(2025年8月29日)米インフレは想定内で金は史上最高値を更新

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上の貴金属価格は、前週のLBMA価格と比較して以下の通りです。

週間の貴金属の変動率

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。
**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

金価格(ドル建て)は、LBMA金曜日価格で前週金曜日から上昇して、金曜日のLBMA価格としては史上最高値を記録。銀価格は2週連続で上昇。プラチナも上昇し、4週連続の上げ。パラジウムは4週連続の下げで、金曜日価格としては627日以来の低値を記録しました。

貴金属市場の動向(週間)

今週の貴金属相場はパラジウムを除き上昇し、金と銀においては大きな動きとなりました。まず週初から、本日発表の米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コアデフレーターを待つ中で、トランプ大統領のクックFRB理事の解任に絡み、FRBの独立性への懸念からも相場は徐々に上昇していました。本日発表されたインフレデータは予想通りの水準で、高止まりしているものの想定内と受け止められ、FRBの利下げペースに変化はないとの見方から、金価格は上昇しました。

 

その後に公表された経済指標は米景気のスローダウンを示唆。米株価は下落し、長期金利は前日比で上昇を維持したものの、ドルは反落しました。こうした流れを背景に、金価格はさらに大きく上昇し、レジスタンスのトロイオンスあたり3400ドルを超えたところで、さらなる上昇を見せて史上最高値の3500ドルに迫っていますが、日本円建てではロンドン時間夕方に史上最高値をつけています。

 

今週のチャートは、貴金属と主要金融資産の8月の月間変動率をご紹介します。ドル建ての金価格と銀価格が、ドル安と金利低下を背景に大きく上昇している様子が見て取れます。

 

8月の月間の貴金属と主要資産の変動率

*日本円建てはドル価格を同日のドル/円為替レートで算出。

 

なお、プラチナは5月と6月にそれぞれ10.2%、26.1%と大きく上昇していたことから調整局面に入っており、パラジウムも5月から7月にかけて26%を超える上昇を見せた後、需要面での懸念が重しとなっています。同金属の需要は工業用途が中心で、その約8割がガソリン車の排ガス触媒向けであるため、将来的な需要減少観測が背景にあります。

 

今週の貴金属相場の動き(日次)

火曜日

英国の祝日明け、金相場は一時トロイオンスあたり3386ドルへ上昇。背景には、トランプ大統領がクックFRB理事の「解任」を示唆したことで、FRBの独立性への懸念が強まり、ドルと長期金利が下げたことがありました。
トランプ氏は住宅ローン書類の改ざん疑惑を受けて解任手続きを進め、その後法廷闘争も辞さない姿勢を表明。これに対しクック理事側は「不当な動き」として訴訟を準備していると報じられました。
一方、経済指標では米耐久財受注が -2.8%(予想 -4.0%)と、下振れ幅が限定的だったことで株価は上昇しました。

 

水曜日

金相場はロンドン時間昼過ぎまでドル高に押されましたが、夕方にかけてドルが上げ幅をほぼ失い弱含んだことで、トロイオンスあたり3398ドルまで一時上昇しました。
前日、トランプ大統領がクック理事の解任を表明したことでFRBの独立性への懸念が高まり、引き続きドル安の背景となりました。ロンドン時間午前中には一時的にドルが自律的に反発しましたが、懸念は根強く、押し下げられる展開となりました。
ロイターによれば、仮にクック理事が解任されれば、トランプ大統領はFOMCメンバー7人を指名できる見通し(既に任命済みの2人と9月の議会承認待ちの1名を含む)とのことです。
同日はNY時間後にエヌビディアの決算発表を控え、米株式市場は全般的に慎重な動きとなりました。

 

木曜日
金相場はトロイオンスあたり3423ドルまで一時上昇し、723日以来の高値をつけました。
背景には、翌日発表予定のFRB注目インフレ指標である個人消費支出(PCE)コアデフレーターを前に、米経済の底堅さを示すデータ(米GDPや新規失業保険件数)が出た一方、「年内2回の利下げ観測は変わらない」との見方が優勢だったことがあります。その影響でドルや米長期金利がやや下落し、株価を下支えしつつ金価格を押し上げました。
なお、前夜発表されたエヌビディア決算は予想を上回ったものの、中国向け製品を除外したことで先行きに不透明感が残り、一時株価は約3%下落。ただし、他銘柄の下げは限定的で、金相場への影響は小幅にとどまりました。
さらに、今週のトランプ大統領によるクックFRB理事解任に関する今週前半のコメントも、FRBの独立性への懸念を背景に、継続的に金のサポート要因となりました。

 

金曜日(本日)
金相場は、市場注目の米個人消費支出(PCE)コアデフレーターが予想と同水準(2.9%)で、高止まりながらも想定内のインフレと受け止められ、FRBによる政策金利引き下げ観測に変化はないとの見方が広がり上昇を始め、レジスタンスのトロイオンスあたり3400ドルを超えることで更に上昇することとなりました。また、PCEデータ後発表されたシカゴ購買部協会景気指数とミシガン大学消費者態度指数は予想を下回り、米株価が全般下落したことで金を押し上げています。
ドルはロンドン午前中に若干上昇していたものの、データ発表後に下落に転じました。長期金利は前日比でわずかに上昇を維持しているものの、金のサポート要因となっています。CMEFEDWatchツールによると、9月の利下げ観測は前日の86.7%から89.2%へと一時上昇していました。

そこで、ロンドン時間午後4時半過ぎに、一時トロイオンスあたり3446ドルと、史上最高値まで5ドルへと迫っています。なお、円建てではグラムあたり16,277円と、723日の最高値を更新しています。

 


その他の市場のニュ―ス

  • コメックス(COMEX)の貴金属先物・オプションにおける資金運用業者のポジションは、819日までの週に発表されたデータ上では、同週後半にパウエルFRB議長のジャクソンホール会議でのスピーチを待つ中で、銀を除き全ての貴金属でネットロングが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションにおける資金運用業者のネットロングポジションは、8.1%減で440.92トンと減少していたこと。価格は前週比0.3%安のトロイオンスあたり3334.45ドルと2週ぶりの低さへ下落し、建玉は2.9%減と2024224日の週以来の低さとなっていたこと。

  • 銀のネットロングポジションは1.9%増の4,477トンと3週ぶりの増加で、価格は前週比1.0%高の38.07ドルで、729日の週以来の高さ。建玉は0.6%増加。

  • プラチナのネットポジションは、520日からネットロングへ転じ、3.6%減の19.0トン。価格は前週比0.9%高で1347ドルと、2週ぶりの高さ。建玉も2週連続で増加。

  • パラジウムは202210月半ばからネットショートが継続。19.9%増で17.8トンと、63日の週以来の高さ。価格は前週比1.3%安の1127ドルで、78日の週以来の低さ。建玉は2週連続で増加し、2週ぶりの高さ。

  • 最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェアの残高は、今週木曜日までに11.2トン(1.2%)増の967.94トンと、202298日以来の高さで、週間の増加傾向。

  • 2の規模の金ETFiShares Gold Trustの残高は4.2トン(0.9%)減の455.90トンで、2022113日以来の高さで、週間の増加傾向。

  • ETFの最大銘柄、iShares Silver Trustの残高は43.8トン(0.3%)増の15,332.59トンと819日以来の高さで、3週連続の週間の増加傾向。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週87台後半ばで始まり、水曜日には88台半ばまで上昇後、本日87台半ばへ下げて8月前半以来の低さで終える傾向。2024年平均は84.752023年は83.275年平均は82.44。値が高いと銀が割安、低いと割安感が薄れていることを示します。

  • 金価格との差であるプラチナディスカウントは、今週2033ドルで始まり、本日2058ドルへと8月初旬以来の高さへ上げて終える傾向。2024年平均は1431ドル、2023年は975ドル、5年平均は968ドル。

  • プラチナとパラジウムの価格差は、26日以降パラジウムがプラチナを上回る「プレミアム」が継続。今週は247ドルのプレミアムで始まり、本日は252ドルと7月初旬以来の高値水準で終える傾向。2024年平均は28ドルのディスカウント。2023年は371ドル、2022年は戦争影響で1153ドルのディスカウント。5年平均は835ドルのディスカウント。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン価格の差は、週平均は前週の7.31ドルのプレミアムと8月初旬以来の高さから、3.96ドルへと下げていたこと。2024年平均は15.15ドルのプレミアム、2023年は29ドル、2022年は11ドル。需要増に加え、中国中銀の輸入許可制限も背景にあります。過去5年平均は6.9ドルのプレミアム。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週の貴金属市場は、先週トランプ大統領が示唆し、今週明言した米連邦準備制度理事会のクック理事の解任を巡る懸念で上昇しながらも、金曜日の米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コアデフレーターを待つ中レンジ内で動き、本日のデータ発表で大きく動くこととなりました。

 

来週は米雇用関係データが数多く発表され、水曜日の雇用動態調査(JOLTS)求人件数、木曜日のADP全国雇用者数、金曜日の非農業部門雇用者数と失業率と市場は注目することとなります。

 

詳細は、主要経済指標(202591日~5日)ご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週、英国では次のニュースが大きく伝えられていました。 

まず、ロシアによるキーウ攻撃の激化と、それに反応する欧州首脳の動向についてです。 また、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザの中心都市ガザ市への攻撃が強化され、支援物資の配給が中止される事態も発生しています。 さらに、先週お伝えしたエッピング(Epping)のホテル「ベル・ホテル(The Bell Hotel)」の難民収容施設としての利用が、無許可であるとして違法と判断された件では、政府の控訴により本日この判決が取り消され、引き続きこの目的で利用できることになりました。

そのような中、今年の夏が英国で観測史上最も暑い夏となることが伝えられていますので、ご紹介しましょう。

イギリス気象庁(Met Office)の暫定データによると、61日〜825日までの平均気温は16.13 °C に達し、従来の記録(2018年:15.76 °C)を大幅に上回っているとのことです。 

「残りの8月が平均より大幅に涼しくなる可能性は低く、このままなら2025年の夏は観測史上最も暑い夏になる」との見解です。この結果により、1976年の夏は「トップ5」から外れる見込みとなり、現在のトップ5の全てが2000年以降の夏になります。

今年の夏は、安定した高温が続き、熱波が4回襲ったものの極端な猛暑日は少なく、平均の積み重ねが記録を塗り替えたとのことです。

英国の平均気温は1980年代以降、10年あたり約0.25 °Cのペースで上昇しています。こうした暑い夏が頻発するのは温暖化の影響であり、今後もこうした傾向は続くと専門家は警告しています。

また、欧州各地でも異例の猛暑が発生し、西欧では46度を記録しており、これにより英国人の旅行先が涼しい北欧などにシフトする動きも見られました。

このような状況でも、英国で自宅にエアコンを備えている家庭は稀であり、日本と比べると過ごしやすい気候であることは確かです。しかし、気候変動の影響による前例のない気象現象として、国内で大きな関心を集めています。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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