金市場ニュース

2012年のゴールドマーケットの回顧と2013年の展望

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今年の金市場を振り返ると共に、来年の金市場の動きを予想し、解説しています。

2012年も実質今週でおしまい。今週は今年一年を振り返ってみようと思います。まだ終わりきっていませんが、ここまでのゴールドのレンジは以下の通り。

2012年
Open:1606.50 (01/04)
High:1796.00 (10/04)
Low :1527.00 (05/16)
Last:1657.00 (12/25)

「2012年ゴールド・マーケットでの出来事」

・2011/08/09 最低2013年半ばまでの低金利据え置き発言。ここからゴールドは15%上昇し、翌月9月には歴史的高値(1925ドル)を記録。
・2011/09/25 FOMCでツイストオペ発表後、失望感から急落。
・2012/01/25 8月に続き、低金利維持の表明。今度は2014年終盤まで。ゴールドは1700ドルを底値として一ヶ月で6%の上昇。
・2012/02/29 Bernanke議長、議会証言でQE3に言及せず。失望売りで100ドル近く下げる。
・2012/03/12 FOMCで下げ1700ドル割れ。
・2012/03/26 Bernanke発言で1697ドルまで戻し。
・2012/04/03 FOMC議事録公開で1613ドルまで下落。
・2012/04/06 雇用統計悪化で上昇1650ドル。
・2012/05/17 FOMC議事録公開で1540から1590ドルまで上昇。
・2012/06/01 雇用統計悪化で1540ドルから1630ドルへ上昇。
・2012/06/04 Bernanke発言失望で1620ドルから1590ドルまで下落。
・2012/06/12 さらなる金融緩和期待で1590ドルから1630ドルまで上昇。
・2012/06/21 FOMC Bernanke発言失望で1610ドルから1565ドルまで下落。 ・2012/09/03 Bernanke議長 Jackson Holeでの金融緩和支持発言で1650ドルから1690ドル台へ急騰。
・2012/09/07 米雇用統計悪化で1690ドル台から1730ドル台へ急騰。
・2012/09/13 QE3発動で1770ドルまで上昇、10月初めには1796ドルまで上伸。
・2012/10/05 雇用統計改善、Gold下落始まり、月末へかけて1700ドルまで。
・2012/11/02 雇用統計更なる改善でGold 1700ドル割れ、大統領選挙待ち。
・2012/11/06 オバマ大統領再選で急騰1730ドル。
・2012/11/25 ギリシャ債務削減合意でユーロが急騰、ゴールドも連れ高で1750ドル。
・2012/11/28 大口の先物売りで一時1707ドルまで急落。
・2012/12/04 一ヶ月ぶりの1700ドル割れ。
・2012/12/20 ファンドのポジション整理の売りで1636ドルまで下落。

今年は昨年の大きなレンジと比べると比較的に落ち着いた年であったと言えます。2011年は1300-1900ドルというほぼ600ドルレンジで金市場 の歴史に残る大相場でありました。2012年は私自身も含めて多くの人々が2000ドル超えを予想していましたが、マーケットはそこまで上がらず、結局一 年を通じて1800ドルが天井、1500ドルが底値で300ドルレンジと前年と比べてほぼ半分のレンジにとどまりました。それでも12年連続の上昇マー ケットとなりました。

今年一年のゴールド相場の最大のテーマは上記の出来事でもわかるようにFRBの金融緩和でした。Bernanke議長の発言のニュアンスそして彼がもっ とも重要視している米国の雇用情勢によりマーケットが動くということがこの一年のもっとも多いパターンでした。年前半は雇用統計の悪化、Bernanke 議長の金融緩和を2015年まで行うという期限延長もあり、しっかりとした推移でした。そして寝半ばからは欧州危機がリスクオフの売りを呼び、ゴールドも ほかのアセット同様に売られ、5月から8月は1550-1650ドルの低位推移となりました。この時期はComexの投資家ロングポジションも400トン から500トン前後と通常よりも200-300トンも少ない状況が続きました。ほとんどのファンドがゴールドから手を引いた状態、マーケットへ参加してい ない状況となりました。これは歴史的にみてもほぼ確実に次の動きがきたときに相場が大きく動く前触れとなります。

今年もやはり5月からの低迷期を経て8月のJackson HallのBernanke議長のQE3をにおわすスピーチをきっかけとして9月のQE3もあり大きく動き(上昇)はじめ、再び1800ドルをトライしま したが、結局そこを突破できず。2月に続きまたもや1800ドルを越えることができず、その後は米国の経済指標の改善基調が続き、金融緩和の早期解除の声 も出てくるにつれて、ゴールドの頭は重くなり、大統領選挙もはさみ弱含みの展開が続きました。大きく売る材料はなかったのですが、年末へ向けポジション整 理と見られる売りが続き、12月には1700ドルを割り込み、ストップロスの売りも発動されて一時1630ドル台まで弱含みました。そして1650ドル台 後半でクリスマス入りでした。

「2013年の展望」

最近は金融緩和早期解除という見方も出てきているが、来年はまだそれはないと思います。失業率のこのところの改善は、実質的な労働者の増加ではなく、労 働参加率が大きく下がっており、失業率計算の分母(対象となる人々)の数が減っているからです。現在アメリカの労働参加率は約64%。つまり10人のうち 4人は就職をあきらめており、もはや失業率計算の分母にさえ入っていないのです。ですから労働参加率が下がれば下がるほど働いていない、そして将来的に働 く意思のない人間が増えているということで、単純な失業率では実態はつかめないのです。それがわかっているがゆえに失業率の改善にもFRBは6.5%まで はまだまだ安心できないとしています。米国の実態経済がどれほど改善するのかがやはり来年の鍵となるでしょう。

チャート:米労働参加率とゴールド価格
予想レンジ:1550-2000ドル 平均価格1850ドル

1500-1600ドルでのアジア・中東の実需の買い、ETFの買い、中央銀行の買い,そしてマイナスの実質金利がマーケットを支えるでしょう。一方 1800ドルを越えていくためには現在の状況では材料不足。さらなる景気の悪化、金融緩和、そしてそこから来るインフレ懸念もしくは中東や北朝鮮といった 地政学的な不安要素の台頭が必要になるでしょう。こういった条件が重なったとき、ゴールドは2000ドルトライもありえるでしょう。ただFRBの金融緩和 が功を奏し、米国経済が確実に持ち直してくるとすれば2000ドルをこえたレベルの維持は難しいと考えます。300ドルのレンジを考えるとすれば 1600-1900ドルでしょうか。

「おまけ:2011年の先物商品パフォーマンス」

下のチャートは2011年年初から12月25日までのyear to dateのperformanceです。木材、大豆かす、小麦、大豆といった農産物が軒並み高い上昇率です。その中で4位に日経225が入っており、 20.9%の上昇です。貴金属はプラチナが9.4%、シルバーが7.3%、ゴールドが5.9%、パラジウムが4.7%の順番でいずれも年初と比べると上昇 しています。

「最後に」

皆さん今年もお付き合いありがとうございました。来年は皆様にとってよい年になりますように。僕のセミナーなどもし聴きにこられる機会がありましたら、 気軽にお声かけください。来年もまたいろいろマーケットに関して書きたいと思いますのでよろしくお願いします。新年は1月9日から更新したいと思っていま す。

TwitterではBruceIkeGoldで逐次貴金属に関するtweetをしています。また毎朝のBruce Report では生きた相場の情報と僕のランニングやグルメの情報まで幅広く書いています。冷静に考えればよくもまああれだけ毎朝書くことがあるもんだと自分でも関心 してしまいます。もはやBruce Reportを書き始めて10年以上過ぎています。ランニング同様、継続は力なり。レポートを読んで一人でも多くの人がゴールド、シルバー、プラチナ、パ ラジウムに興味を持っていただければこれ以上の幸せはありません。

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それでは皆様よい年を!

12月23日故障以来一年ぶりのフルマラソン復帰第一戦加古川マラソンを完走しました。

12月25日記
Bruce 池水

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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