金価格ディリーレポート(2025年10月6日)金ETFへの資金流入で金価格は1970年代以来の年間の上昇率で4000ドルから1%安の水準に急騰
1970年代以来の最速の上昇で、4000ドルへ近づく。
金価格は月曜日、トロイオンスあたり4000ドルの大台まであと1%に迫る過去最高値に急騰し、年初来上昇率は50%を突破しました。これは1970年代のオイルショック時を除けば史上最大の年間上昇率となり、米国、日本、フランスでの政治的混乱の中、金価格連動型ETFへの資金流入が続いたことが背景にあります。
米ドル建て現物価格は1.8%上昇し、1オンス3958ドルの史上最高値を記録。英国および欧州の投資家向けの卸売価格もそれぞれ最大2.0%、2.5%上昇し、トロイオンスあたり2942ポンド、3387ユーロに達しました。
日本円建て金価格は3.5%急騰し、スポット市場でグラムあたり1万9078円の過去最高値を更新。消費税込みの小売価格は初めてグラムあたり2万1000円を突破しました。
この急騰は金価格が5週連続で週末ごとに最高値を更新した流れを受けたもので、今年に入って41回目の史上最高値更新となります。
安全資産とされる金の年初来上昇率は現在50%を超えており、1979年のオイルショック以来最大の伸びです。
「金の上昇は公的部門の買い支えによって2026年にかけて続く可能性がある」と、ブリオンバンクでETF保管業務も行うHSBCは指摘しています。
「機関投資家による分散投資の需要も依然として強い」とも付け加えました。
金価格が4000ドルに迫る中、ロンドンの地金クリアランスも行うUBSは金価格と銀価格の予測をそれぞれ4200ドル、55ドル(いずれもトロイオンスあたり)に引き上げ、中央銀行やETFによる需要拡大を背景とするとの見通しを示しました。
米投資銀行ゴールドマン・サックスはすでに、米国の民間保有の米国債のわずか1%が金にシフトするだけで金価格はトロイオンスあたり5000ドル近くに急騰すると予測。その上で、ETFへの資金流入が続けばその動きが一段と加速すると警告しました。
さらに、米投資銀行のモルガン・スタンレーは、従来の株式60%・債券40%の資産配分に代えて、60%・20%・20%の配分を提案しており、金が債券と同じ比率で組み入れられています。
典型的な金への推奨比率は、資産運用会社最大手のブラックロックは、今年9月の段階で2%から4%としています。
世界全体の金ETF保有残高は9月26日時点で3806トンを上回り、過去最高の4615億ドル相当に達しました。ただし数量ベースでは、新型コロナ危機時の2020年11月に記録したピークよりなお3.1%下回っています(ワールドゴールドカウンシルデータ)。
一方、米国では10月1日からの政府閉鎖で重要経済指標の発表が遅れており、上院は6日(月)に11月21日までの暫定予算案を採決する見通しです。これにより雇用統計やCFTCの建玉報告なども遅延しています。
「もし大統領が交渉は全く進展していないと判断すれば、レイオフ(解雇)が始まるだろう」と、トランプ政権の経済顧問トップであるケビン・ハセット氏は日曜日に述べました。
日本では、与党自民党が財政・金融政策上ハト派的とされる高市早苗氏を新総裁に選出し、今月中に初の女性首相が誕生する見通しとなりました。
東京株式市場は同日5%超の上昇で史上最高値を更新。一方で円は対ドルで150円を突破し、30年国債利回りは財政懸念の高まりを背景に過去最高水準に達しました。
フランスでも、新首相に任命されたばかりのセバスチャン・ルコルニュ氏が1か月足らずで辞任。これを受けてパリのCAC40株価指数は2%急落し、フランス10年債と独国債の利回りスプレッドは0.88ポイントと、ユーロ危機以来の最高水準に拡大しました。
ETF流入を背景に金が急騰する中、年間需要の約60%を工業用途が占める銀価格も月曜日に一時1.6%上昇し、1オンス48.75ドルと史上最高値(1980年と2011年の50ドル)まであと1ドルに迫りました。銀の年初来上昇率は現在67.9%となっています。
一方、中東では、米国のトランプ大統領がガザの政治・軍事組織ハマスに対し「日曜日までに和平案を受け入れなければ地獄を見る」と最後通告を出した後、イスラエルとハマスが6日(月)にエジプトで仲介交渉を開始する見通しです。