金価格、再び上昇か?
貴金属ディーリングにおいて世界でも第一人者のスタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、先週発表されたFRBによるQE3後の金価格について解説しています。
今週はQE3もあったので少し昨今の相場の話を。先々週、某経済誌に頼まれて、金相場の今後の予測を書きました(もろもろの理由があって今回はその雑誌に は載せなくなったのですが)。それが以下の文章です。前半部分はQE3前に書いたもので、後半部分はQE3後に書いたものです。
金は昨年9月に1920ドルの史上最高値をつけて以来ゴールドはぱっとしない展開が続いていました。特に今年5月以降8月に至るまでは1550-1630ドルのボックス圏での小動きに終始しました。さらなる金融緩和、つまりQE3への期待感が膨らんだり、しぼんだりするたびにこのレンジの下限や上限をトライしたのですが、どうしてもこのレンジを越えることができませんでした。1550ドル近辺からは下では中国や東南アジアの実需の現物買い意欲が強く、非常に強くサポートされました。そして上昇することがあっても1630ドルでは逆に利食い売りに頭を抑えられて、なかなかこのレベルを越えることができませんでした。
今年の金相場はまさに「金融緩和相場」だと言うことができます。それ故にFRBの金融政策の行方に一喜一憂して金相場が動くという展開が続いているのです。その材料としての「雇用統計」が改善されると金融緩和は遠のき、金は売られやすくなります。逆に悪化するとさらなる緩和に対する期待が膨らみ、金が買われるということになるのです。
金融緩和と金価格の関係は、緩和によって市場に放出された資金の量にほぼ一致します。下の表は2004年の1月を100とした指数、世界の流動性(おお ざっぱにいった世界中のお金の量)と金価格をグラフにしたものです。これを見ると一目瞭然ですが、お金の量が増えれば増えるほど金価格が上昇しているのがよくわかります。つまり金融緩和は市中のお金の量を増やし、お金の価値を薄くして、相対的に商品の代表としての金の価値を押し上げることになります。まさ にインフレと同じ。それ故に市場参加者はバーナンキ議長の発言にとても敏感になり、FOMCでの決定を巡って様々な憶測や思惑で金価格が動いているのです。
ながらく続いたレンジも8月も後半に入ってからようやく抜け出ました。この直接なきっかけとなったのが、ECBのドラギ総裁による、欧州の国債買い取り、つまり新たな金融緩和に前向きな発言でした。これまでの上限であった1630ドルを抜けたことで、テクニカル的にも200日移動平均線をゴールデンクロスし、さらに強気の買いが入ってくることになりました。そしてジャクソンホールでのバーナンキ議長の証言は、より金融緩和的色彩の濃いものとなり、一気 に1690ドルへと上昇。そして9月に入ると1700ドルも突破しました。
今年後半はさらなる金融緩和がもはや不可避という観点からゴールドは再び上昇の勢いが増してくることを予想します。FRBが2014年後半までの低金利 維持を表明している以上、ゴールドは基本的に大きく下げることはないでしょう。ゴールドが本格的に下げる場面があるとすれば欧州危機がなんらかの方策で解決し、失業率が急改善、景気が回復、株の上昇という薔薇色の経済が実現した時でしょうが、まだしばらくはそういう状況にはならないであろうと考えます。
とすれば、ゴールドの価格は基本的には上昇傾向を保つでしょう。年末までに1850ドルから1900ドルくらいまでの上昇はあるのではないでしょうか。 1700ドル近辺まで上昇しても、アジアからのスクラップの売り戻しは出ていません。かえってこの価格でも買いが目立つ状況にあります。これは市場がまだ 上を見ているということだと思われます。世界各国の政府がどんどん輪転機を回して通貨供給を増やし続けている以上、発行体のリスクのない資産である金がもっと輝きを増すのは当然と言えるでしょう。9月のFOMCあたりがポイントになる可能性があるかもしれません。QE3発動で達成感から売られる可能性もありますが、実際に金融緩和が行われるということであれば、下がったら絶好の買い場となるのではないでしょうか。
以上がQE3前。
この原稿を書いたのが9月7日でした。そのほぼ一週間後の9月15日、FOMCにてQE3の即日実施が決定され、ゴールドは1730ドルから1770ドルを超える上昇となりました。QE3は毎月400億ドルの住宅ローン担保証券を購入。期限や総枠はなし。ゼロ金利政策は2015年半ばまで継続という踏み込んだものでした。また経済が弱くなれば緩和策を拡大し、景気刺激で雇用改善を図るとしています。上にも書いたとおり、もはやこれはゴールドの中長期的 (少なくとも2015年半ばまでは)上昇をほぼ保証したようなものといえるでしょう。もちろん、相場ですので一直線で上げるわけではないでしょうが、上下動を繰り返しながら、基本右肩上がりの動きが続くでしょう。
以上
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