金市場ニュース

東京に指標価格を!(中編)

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で掲載した、先週の記事「東京にも金の指標価格!」の中編をお届けいたします。

******************

■ロンドン・フィキシング

ロンドン・フィキシングとは、毎日ロンドンの午前10時30分と午後3時に二回行われる値決めのことです。フィキシングをあらわす日本語で一番近いイ メージはいわゆる「せり」です。土日ロンドンの祝日を除く毎日二回、その時点でのゴールドの価格をせりをして決めます。これはまさに世界を巻き込んだ「せり」です。その時間、世界のゴールドトレーダーは取引を中止し、すべての取引をフィキシングに集中させます。売りたい人は売り注文をフィキシングに入れ、 買いたい人は買い注文を入れます。そうすることによってその時点での売り買いの注文がフィキシングに集中して、そのバランスがもっとも小さくなるところ、 つまり売り買いがほぼバランスするところで、価格が決まり(フィックス)ます。もちろんこれはあくまでこの時間の相場であり、フィキシングが終わったとたんにまたそこからざら場のマーケットが始まるわけで、決まった瞬間から過去のマーケットということになります。ここでこれだけロンドン・フィキシングが世界中で認知されている重要な理由をあげましょう。

・開かれた値決め方式であり、誰でもアクセスでき、公平な価格形成がなされていること。

・実際にフィキシングプライスで取引することが可能なこと。

この二点がいわばミソと言ってもいいでしょう。特に実際にその価格で取引ができること、これが大事。実際に取引ができることによって、ロンドン・フィキシング・プライスは世界でもっとも指標性のあるドル建てゴールド価格として、いろんなビジネスの指標価格として使われています。たとえば精錬会社が、鉱山から金鉱石を買うときの値決めはこのフィキシングの月中平均を使うことが多く、鉱山会社は毎日のフィキシングで買いヘッジを、そして精錬会社は売りヘッジ を行うことが多いのです。つまり毎日決まった数量をこのフィキシングで値決めしていくことによってお互い相場変動のリスクをヘッジできるのです。実際にその指標価格で取引ができるということで、こういったヘッジ取引ができます。スプレッドのない売り買い同じ価格(せりで決まる一本値)で取引ができるので す。取引にかかるコストはフィキシングチャージと呼ばれる手数料だけです。売買のスプレッドを気にする必要もありません。これができなければ指標価格としての役割は果たせません。そういう意味で現在の世界中でゴールドの指標価格と呼べるのはおそらくこのロンドン・フィキシング価格のみと言えるでしょう。そ のため、世界の鉱山会社や精錬会社といった供給サイドも宝飾業者や工業需要家といった需要サイドも基本的にはみんなロンドン・フィキシングを使っていま す。世界でもっともオープンでもっとも公平な価格ということができるでしょう。 それでは日本の人々もそうすればいいのではないか、という考え方もできます。実際、日本の精錬会社はロンドンフィキシングと翌日のTTMベースで価格を決めて使うといったところも多いです。鉱石の買いがフィキシングベースであるので。しかし、取引が日本国内の業者同士になったときはやはりこれは少々無理があります。まず時間帯がずれてしまっていること。ドル建てであるため、円転する必要があり、為替の指標価格としてはやはり翌日のTTMを待たなければな らないということがあるからです。

■日本の指標価格は?

振り返って東京です。先週上げた日経で公表されている、小売価格や山元建値価格の最大の問題はその価格で取引できないということです。もちろん理論的に は取引はできるでしょう。しかし貴金属商の店頭に行って現物を80円の売り買いスプレッドを払って行うのはまったく現実的ではありません。山元建値(発表時のマーケット価格より20-30円高い)で買うことはできるでしょうが、(誰でも売りたいですよね。)、その価格で売ることは不可能です。マーケットより20円以上高い価格で買ってくれるという奇特なお客さんがいればいいですが。ということは両者ともロンドン・フィキシングのような指標価格にはなりえないということになります。 現時点でこういう指標価格として使える可能性のあるのは、取引所取引である東工取のゴールドのオープニングの板寄せでしょう。これはまさにせりであり、 東京時間午前9時時点での円建て金価格のせりになります。誰でも取引ができ、公開された値決めの方式であるという点で、指標価格の条件を満たしています。 ただ大きな問題は、この価格が先物価格であるということです。ロンドンフィキシングは二営業日決済条件のいわゆるスポット価格です。果たして先物価格を使うことに対して、実際にヘッジを必要とする当業者がどう感じるか(できないことではありませんが)。またどの限月を使うのか、限月交代をどうするのか、などいろいろ複雑な問題が発生してくるのです。

(来週へ続く)

************************

金購入をお考えですか。London Fix価格で取引を行う、ロンドン貴金属市場協会の正会員であるBullionVault(ブリオンボールト)をお試しください。

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

グーグルで優先する情報源として追加

 

 

貴金属市場のファンダメンタルズ