金市場ニュース

今後1年間の金相場見通し

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が「ゴールドディーリングのすべて2」で今年の金相場の見通しを、金価格へ与える要因をそれぞれ説明した上で解説しています。

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今週発売の「エコノミスト増刊 投信大点検!!」の掲載記事です。これを書いてからほぼ三週間たっていますが、根本のところは変わっていないと思うのでそのまま掲載します。

「今後1年間の金相場見通し」

2011年9月、金は1920ドルの市場最高値をつけ、その後1500ドル台まで急落。今年は年初からじわじわと上昇してまた2月末には1800ドル直前まで達したが、1700ドル割れまで一日にして急落。相変わらず変動率の非常に大きいことを再認識する相場の展開となっている。しかし、その背景にある 状況はなんら変わらず、今年も内部要因に寄る急落場面を交えながらも金相場の上昇基調は続き、2000ドルに近づく場面もあろうと考える。

「ユーロ圏の危機」

ギリシャの破綻は第二次救済策の決定によりとりあえずは回避された。しかしその問題の根源はなんら解決されたわけでなく、問題の先延ばしに過ぎない。欧州での金地金やコインの売り上げはユーロからの「乗り換え需要」により過去にないほど記録的なものとなっている。欧州情勢のもたらす不安は一時的にすべての資産を売るという「現金化」の動きにつながる恐れがあるが、(昨年二回あった一日で100ドルを越えるような急落はまさにそのようなよい例である。)中長期的には、欧州危機のもたらす通貨安は、金高につながる強材料である。

「続く金融緩和」

現在の金相場と世界の金融緩和の動きはまさに表裏一体の関係にある。金融緩和はマネーの希薄化を意味し、低金利は、本来ならば企業の設備投資や家計の消費に資金を向かわせる目的のものであるが、「守り」に入っている企業や家計は極力資金を使わなくして無駄を省き、帳尻を合わせようとしている。市場に供給された大量の資金は、非常に乱暴に言えば、金に向かっているのである。過去10年の金価格の上げは、世界の資金流動性の量の増加にほぼ比例している。つまり世界にお金が増えれば増えるほど金の価格は上がっているのだ。この状況は米FRBバーナンキ議長が2014年終盤までの低金利維持を表明したことによっ てさらに強くなり、金相場にとってはまさに上昇への免罪符が与えられたと言ってもいいだろう。

「中央銀行の金買い」

金独自の要因として注目すべきは中央銀行の動向だ。1971年のニクソン大統領による金とドルの関係が断ち切られて以来、40年以上中央銀行というセクターは常に金の売り手であった。特にフランス、スイス、ドイツ、イギリスといった欧州の先進国からの売りが絶え間なく続き、近年では毎年500トンくらいの金がこれら中央銀行によって売却されていた。彼らが何十年も売り続けた理由は、まず金価格がずっと下落を続けていたこと、そして金利がほとんどつかないこと。また共産圏の崩壊により、地政学的な緊張が大きく和らいだことが上げられる。各国の外貨準備運用担当者も戦争を知らない世代になり、資金運用の観点からは、金はまさに魅力を失った商品にすぎず、ドルやマルクやスイスフランといった通貨に乗り換えられても仕方ない存在であったのだ。 しかし2009年を境としてこの状況は一変した。金を売っていた欧州各国は売るのをやめ、(もっていれば上がる!)逆に通貨の価値は下がり、米ドルをその外貨準備の大部分に当てていた新興国の中央銀行が、積極的に金買いをすすめることになり、2011年には中央銀行全体で440トンもの買い越しにまわった。売り手が買い手になったことで市場には倍の影響が出る。2012年も新興国の金買いは継続する可能性が高い。彼らはまだ買い始めたばかりだ。

「中国の金買い」

そんな中もう一つ注意すべきは中国の買いである。中国は国策として国民に金を買わせて、膨大な外貨準備高のドル編重の是正を図ろうとしているようにさえ思える。昨年、中国は世界一(約350トン)の金を生産しながら、その需要は770トンと大幅に生産を上回り、400トン以上もの金を輸入することとに なった。 この買い、まだまだ続きそうである。中国一国の存在が金市場への大きな強気要因である。

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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